社会がまだ情報管理にシビアになる前から、「情報を預かる」ことをビジネスにした。斬新なコンセプトと時代のニーズがマッチし、三菱UFJフィナンシャル・グループなどの大手が顧客に。クライアントは950社を超えた。設立から一貫して増収で、減益は一度だけ。昨年度の経常利益率は30%と大手ソフトメーカー並みの水準で、昨年12月には株式公開。急成長を続ける。
「機密情報は価値が高く金になる。貴重な資産は専門企業に管理させるのが当たり前。そんな時代がくると思っていた」
これまでにないビジネスコンセプトを着想した佐谷氏は、戦略も独特。創業3年目から新卒採用をはじめ、昨年度は20人もの新卒者を採った。営業は直販を貫き、代理店には売らせない。機密情報を管理するためのソフトは、パッケージとして売らずに期間利用型のサービスとして提供し続ける。ここへきてソフトのサービス化はIT業界のトレンドとなり、若い企業の新卒採用も盛んになっている。佐谷氏の戦略は時代の先をいき、それが業績に結びつく。トップの先を見越す眼が成長を支えてきた。
とはいえ、軌道に乗り始めたのは3期目から。2期目までは苦労した。価格が安く、営業マンが1人だったから本業では食えない。下請け開発で食いつなぎ、銀行に融資を頼みに歩く日々が続いた。その苦い経験が、急成長中でも「顧客が少なすぎる」とする佐谷氏の厳しさと危機意識を醸成したのだろう。
学生時代は、大学と大学院に合わせて9年在籍。研究者の道に関心があるが、先は決めていない。ただ、業態を進化させ企業としての信頼を高めていき、「データベースの銀行になる」ことだけに照準をあてている。
プロフィール
佐谷 宣昭
(さたに のぶあき)1972年11月、愛媛県今治市生まれ。95年3月、九州大学工学部建築学科卒業。97年3月、九州大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。00年3月、九州大学大学院人間環境学研究科都市共生デザイン専攻博士後期課程修了。同大学にて博士(人間環境学)を取得。00年4月、サハラ(現パイプドビッツ)を設立し、代表取締役に就任。パイプドビッツは、個人情報などの機密データを預かるサービスがメイン。預かった個人情報をもとに、ウェブアンケートの実施やメールマガジンの発行代行なども手がける。大手顧客は、三菱UFJフィナンシャル・グループやNTTドコモ、ホテルオークラなど。06年12月に東京証券取引所マザーズに上場した。昨年度(07年2月期)の業績は、売上高が前年度比38%増の7億200万円、経常利益が同27%増の2億800万円。