「日本の産業基盤を支える中小企業の底上げに貢献したい」と常に考えている。中小企業の集積地である東京都大田区を約2か月かけて回った。10人未満の製造業が何に困っているのか。「経営者と腰を据えて課題を聞き出した。時には、意見の不一致から思わず口論になった」とか。こうしたやり取りで集めた“生の声”は数知れない。
これにより、開発したのが生産管理のASPサービス「マーキュリーケイ」。昨年7月から提供している。「焼鳥屋に3人程度の社員を連れていく金額で何とかならないか。とにかく安価で導入したい」という顧客の声を元に、月額1万9800円からに設定した。作業指示書が送られてくるとコンピュータなどに入力せず、すぐに取りかかるといった現場の習性にも対応している。作業の開始時と終了時にバーコードをかざすだけで進捗状況を更新する機能を搭載した。「現場を知らなければ開発できない。実際の作業を反映することがIT化」と訴える。
しかし、中小企業向けビジネスは体力を要する割に実績があがらないとの見方もある。「“うま味”ばかりを気にしていたら切りがない。いかにユーザー企業のパートナーになれるかが重要となる。利益を確保したいなら、開発コストを抑えて良いものを作ればいい」。この信念を貫き、現時点でASPサービスのユーザー企業が50社に増えた。「損益分岐点は200社。初年度は様子見だったが、今後はユーザー企業が急速に増える」。
「マーキュリーケイ」は、製造業のオープン化を促す「製造科学技術センター」のFAオープン推進協議会で推奨サービスにあげられている。「使う人」を念頭に置いた“モノ作り”の職人技だ。
プロフィール
須藤 文雄
(すどう ふみお)■1942年4月27日生まれ、新潟県出身。65年3月、工学院大学電気工学科卒業。■新潟鐵工所や湯浅商事(現ユアサ商事)などでエンジニアとして業務に従事する。■財団法人製造科学技術センターの会員としてFAオープン推進協議会を発足、副委員長に就任。■99年、ピーマックジャパン代表取締役社長に就任(ユアサ商事の取締役兼務)。01年、同社会長に就任。■02年、NTTアドバンステクノロジに入社。現在に至る。