「飲食店を経営しようと思っていた」。学生時代にこの夢を共有したのは板前である友人。しかし、若林紀親は飲食店で修業を積む決断を下さなかった。畑違いのIT業界にあえて飛び込むことで、「外の世界から飲食業界を眺めることにした」。
そんな若林が入社を決意したのは、大企業向け国産ERP(統合基幹業務システム)ベンダーの雄、ワークスアプリケーションズだった。「牧野(正幸CEO)の面接を受けて、一緒に仕事をしたいと思った」。当時のワークスアプリケーションズは、設立から5年足らずのベンチャー企業。自由闊達な雰囲気にも惹かれた。
「アキバ系の男性が多かった。でも、偏見をもってみていた人たちが、結構デキる」。入社直後の印象を笑って振り返る。若林は、製品知識で同僚と勝負することは避けた。
「ロジカルで矛盾のないサービスを提供できるのが強み」。嘘をつかない、隠し事をしない、飾らないをモットーにする人柄も持ち味だ。「個性を出しきれず、ユーザーから担当を替えてくれと苦情をいわれた」という苦い経験を乗り越え、自身の存在価値を問うてきた。失敗を許容する同社の社風には「いちばん助けられた」。
経営陣からは、「映画監督になれ」といわれている。若林のチーム操縦術は、「目標を必ず立てる」「メンバーに成功体験を味わわせる」「メンバーの能力を認める」こと。後進を育てることを忘れない兄貴分だ。
現在は、「ECシリーズ」や「SCMシリーズ」などの営業統括の任に当たる。「飲食店の経営はもう考えていない。起業や転職自体が頭にない」。ITで社会貢献するという大きな理想を抱いている、と明かしたかと思えば、「10年もすれば飽きてくるかも」。以前は芸能界入り、現在は政界入りを目指していると冗談を飛ばす。なかなか喰えない人物ではある。(文中敬称略)
プロフィール
若林 紀親
(わかばやし のりちか)1976年、東京都生まれ。00年、ワークスアプリケーションズに入社。07年、コンサルティング事業部のゼネラルマネジャーに就任し、ERPの導入と保守運用に分かれるコンサルティング部門を両方とも経験。10年、プロダクトソリューション事業本部セールス&マーケティンググループに異動し、「ECシリーズ」「SCMシリーズ」などの営業統括を担当。