日本と中国の売り上げがほぼ半分ずつを占めるSJI。日本のSIerとしては、異例の海外売上高比率の高さだ。中国での主な拠点を南京市と合肥市に置き、さらに大株主に中国最大手SIerのデジタル・チャイナ(神州数碼)グループが名を連ねる。日中間にまたがるシステム開発案件が増えるなかで、その橋渡し役を担っているのが劉虎である。来日して10年余り、SJIのSEとして仕事を始めて8年目。今はプロフェッショナルの肩書きでプロジェクトの現場を仕切る。
劉は、「日本の情報サービス産業は転換期にある」と感じている。例えば、オフショア開発だ。これまでの一般的なオフショア開発は、受注した情報システムの仕様を日本側で固めてから発注する。ところが最近では、海外オフショア先のSEが上流設計から参加し、スムーズで効率的な運用を行うケースが増えている。
SJIにおいても「日中間で設計と開発を分けるのではなく、水平的に請け負うことで価値を高める」と、日中経済の緊密な関係を象徴するかのように、一体的な開発体制を強化。劉は「自分がブリッジとなって、プロジェクトを円滑に進める」と使命感に燃える。逆もまた然りだ。中国で受注したシステムに、日本で培った成熟した業務ノウハウを供給するケースでは、中国の現地顧客に近いスタッフに橋渡し役を担ってもらう必要がある。
中国だけではない。低成長時代に突入した日本とは対照的に、ASEANやインドなどアジア新興国が急成長。情報システム開発においても、むしろアジア全体を一体的に捉えたほうが、ビジネスを有利に進められる。これが劉がSEの現場で感じる“転換期”の正体ではないだろうか。(本文敬称略)
プロフィール
劉 虎
(LIU HU)1975年、中国河南省鄭州市生まれ。97年、吉林省にある東北電力大学を卒業。経営学を学ぶ。卒業後は、いったん故郷の鄭州市にある火力発電所で経理の仕事に就く。99年に来日して進学。03年3月、上智大学大学院を卒業。会計学を専攻。同年4月、サン・ジャパン(現SJI)入社。