富士ソフトの技術者・杉本直輝は、戦略事業であるヒューマノイド型ロボットテクノロジー(RT)の研究開発に携わっている。RTに基づく知能化コンポーネントの開発を通じて、同社が強みとする組み込みソフト事業の一段の成長につなげるものだ。
杉本は入社後8年余り、東京・八王子オフィスで受託ソフトの開発に従事していた。受託ソフト開発のニーズが伸び悩むなか、「何か、突破口はないものか」と考える日々だった。2008年夏のある日、横浜・桜木町の本社での会議に出ろと当時の上司に言われた。「とくに準備もせずに参加した」会議こそが、RTの事業化に向けたものだった。杉本の思いを察した上司の配慮によることは想像に難くない。以降、RTに深く関わっていくことになる。
初めに担当したのは、二足歩行の制御だった。コンピュータのシミュレーションでは難なく歩くプログラムでも、実際に歩かせようとすると「足の素材強度やたわみ、重量バランスが影響して、困難を極めた」と振り返る。さらに、ビジネス化を考えたとき、二足歩行は意外にニーズが少ないことも明らかになる。それでもヒューマノイドにこだわるのは、「より人に近づくことで、組み込みソフトビジネスを抜本的に変えられる」とみているからだ。
例えば、カーナビやスマートフォン、情報家電で、ユーザーの顔や声を認識し、会話を通じて自律的に動作する。あるいは、二足歩行のロボットが高齢者介護や子育てを支援する。「夢だといわれそうだが、5歳児程度の高い知能をもつロボットをつくりたい。RTは長足の進歩を遂げており、その可能性を追求していく」と、瞳を輝かせながら話す。(本文敬称略)
プロフィール
杉本 直輝
(すぎもと なおき)1978年、東京都生まれ。2000年3月、上智大学理工学部物理学科を卒業。同年4月、富士ソフト入社。八王子オフィスで受託ソフト開発に従事。08年10月、ロボットテクノロジー(RT)の開発部門に異動。ヒューマノイド型ロボット「PALRO(パルロ)」の開発に参加、現在に至る。