山内学は、筑波大学大学院に在籍中にベンチャー企業のコトハコを起こした。ネット通販を主なターゲットとしたクラウド方式の検索サービスでユーザー企業を増やしている。これまで獲得してきたユーザー企業はおよそ200社。向こう3年で「ユーザー企業の数をさらに倍増させる」と、意欲を示す。
検索界には、巨人Googleが立ちふさがっている。正面から挑んでも勝ち目はない。そこで山内は、マーケットが堅調に伸びているネット通販にターゲットを絞った。ネット通販は、売り上げや取り扱う商品点数が増え続けており、検索エンジンで悩むユーザー企業が多い。商品管理で一般的に使われるリレーショナルデータベース(RDB)システムに対する負荷が大きく、往々にしてネット通販サイト全体の動作を遅くさせるからだ。
「ならば、商品検索だけ切り出して、サービスとして提供すれば売れるのではないか」と考えて、山内が発案したのが“検索クラウド”というコンセプトだ。ネット通販の商品データを提供してもらい、コトハコが運営するエンジンで検索した結果を通販サイトに戻す。アスクルの一般消費者向けサイト「アスマル」に採用されるなど、評価が高まっている。
Googleも、コトハコが検索クラウドを始めてから約2年後の2009年にネット通販向けのGoogleCommerce Searchをスタート。コトハコは「ネット通販分野での先行者利益を生かしつつ、購買データを活用したレコメンドやスマートデバイス対応などと組み合わせる」ことで、優位性をより強める。激しさを増す国際競争のなかで、筑波発ベンチャー企業の挑戦は続く。(文中敬称略)
プロフィール
山内 学
(やまうち がく)1975年、神奈川県生まれ。1998年3月、筑波大学社会工学類卒業。同年4月、ソフト開発会社に就職。その後、サーバーホスティング会社などを経て、00年、ASP事業を行うベンチャー企業を設立し、取締役に。02年、同社をバリューコマースに売却。04年、筑波大学大学院在学中にコトハコを設立。代表取締役CEOに就任。