名門大学を卒業して、大企業に勤務し、エリートコースを歩んでいく──。その道を、名和輝明はあえて選ばなかった。遊ぶつもりで入学したものの、カリキュラムが厳しくて十分に遊べなかったという同志社大学を中退し、バンド活動に没頭する。「バンドで、人を集めてイベントを企画することが多く、そのとき、クセのある連中の意見をいかにうまく調整するかが腕の見せどころだった」と振り返る。
フリーター時代のバンド活動を通じて培った調整力は、文教分野や医療向けの情報システムを展開する京セラ丸善システムインテグレーション(KMSI)で新規事業の立ち上げに携わる経営企画本部経営企画課の課長を務める名和の大きな武器だ。「大学を中退して、いろいろな人と触れ合うきっかけがあったからこそ、今は、ビジネスを円滑に進めることができる」と自信をみせる。名和は、電子書籍を普及させるためのシステム展開などの新しい事業を企画するのをはじめとして、企画を実現するために、開発部隊をもつ親会社の京セラコミュニケーションシステム(KCCS)との橋渡し役を担っている。親会社とのやりとりをこなすには、なおさら調整力が必要だ。
「自分が経営者のつもりで仕事する」。名和は、喫煙室で仕事仲間と意見交換しながら、新しい経営企画を生み出している。経済や経営に興味をもったのは、フリーター時代に海外からサッカーのユニフォームやアナログのレコードを仕入れて、インターネットオークションで販売したのがきっかけだという。KMSIに入社する前、名和はフリーターを卒業して神戸大学に入り直し、経済学を学んできたという経歴をもっている。(文中敬称略)
プロフィール
名和 輝明
(なわ てるあき)1977年、奈良県生まれ。同志社大学工学部中退後、フリーターを経て、2005年に神戸大学経済学部を卒業。同年7月に、京セラ丸善システムインテグレーションに入社。システム開発や経営企画に携わる。09年4月から現職。