好きな人と似た嗜好をもつ異性と通話し、デートへの誘いを練習することができるアプリケーションを開発して、「恋愛に不器用なすべての方を救いたい」。学生プロジェクト「SATORIBA」の代表を務める渡辺聡は自称、恋愛ベタ。「女性をデートに誘って断られたら、すぐに怯んでしまう」と苦笑する。
渡辺は、世の中には自分のように異性の気持ちを汲み取るのが苦手な人が多いはずと捉えて、2012年、エンジニアやデザイナーを巻き込んで、SATORIBAを立ち上げた。現在、好きな人に似ている相手をデートに誘うシミュレーションを行い、音声をもとに相手の感情を解析することで、言葉の裏にある本音がわかるアプリケーションの開発を進めている。
このアプリケーションの仕組みを思いついたのは、趣味でよく聴くラジオのCMがきっかけとなった。「ラジオのCMは音によって感性が伝わるので、音声を感情解析に生かそうと考えた」という。
SATORIBAを立ち上げる過程で、資金調達に失敗したこともあって、渡辺はこの4月、とりあえず東京のITベンチャー企業に就職した。「ビジネスの経験を積み、実力をつけたうえで、アプリケーションを正式にリリースし、本格的に展開していきたい」。感情解析には言語は問わないとみて、最初からグローバル展開も視野に入れているという。
売上目標は「10年後に1000億円」。自らハードルを高くする。達成まではまだ長い道のりだが、直近でも“成果”を上げている。「『帰って』と言って、本当は構ってほしい──。相手の言うことを鵜呑みにしてはいけないことがわかってきた」と笑顔をみせる。(文中敬称略)
プロフィール
渡辺 聡
渡辺 聡(わたなべ さとし)
1989年11月7日生まれ。茨城県出身。2013年4月、東北大学経済学部を卒業後、東京のITベンチャー企業に入社。11年3月から1年間、発達障がい者に特化した就労移行支援事業所の立ち上げに参画。「人の気持ちを汲み取りたくても汲み取れない人」を支援するために、SATORIBAを発案した。現在、仕事のかたわら、SATORIBAの開発・運営を行っている。