鵜飼裕司は、日本のセキュリティ分野のパイオニアだ。これまでに数百ものセキュリティぜい弱性を発見してきた。FFRIの社長を務めるほか、情報処理推進機構の研究員や、複数の政府関連事業にも携わってきた。
小学5年生でプログラミングを始め、パソコンでつくったゲームを雑誌に投稿しては、小遣いを稼ぐ少年時代を過ごした鵜飼。大学院生の頃、自分のワークステーションがハッキングされたことをきっかけとして、セキュリティエンジニアの道を志した。一度は米国のセキュリティベンダーに就職したが、そこで日本を俯瞰して気づいた。「日本は、海外のセキュリティベンダーにとっては草刈り場に過ぎない。日本から世界にセキュリティ技術を発信している企業はほとんどない」。そこで、起業を決意した。
海外ベンダーに打ち勝つことは容易ではないが、鵜飼は「チャンスはある」とみる。世の中には次々と新たな脅威が生まれ、今ある技術はすぐに陳腐化する。高い技術と革新スピードをもって臨めば、競合に対抗できるわけだ。「セキュリティ分野では、アイデアよりも技術力で優位性を発揮できる。日本の技術力は海外に劣ってはいない」。鵜飼は強気だ。技術力を武器にしたFFRIは、右肩上がりで成長。鵜飼自身、世界最大規模のセキュリティカンファレンス 「Black Hat」でアジア唯一の審査員を務めるなど、業界での存在感を高めてきた。それでも、「まだまだ道半ば」と満足していない。
夢は、「セキュリティエンジニアを若者の憧れの職業にすること」。日本のセキュリティ業界は人材不足だが、若者の注目度は高くはない。鵜飼は、「日本発セキュリティベンダーの成功例となって、『鵜飼にできるなら、自分にもできる』と挑戦する若者を増やしていきたい」と熱く語る。(文中敬称略)
プロフィール
鵜飼 裕司
鵜飼 裕司(うかい ゆうじ)
2000年、大学院で工学博士課程を修了後、コダックに就職し、デジタルイメージングデバイスの研究開発に従事。03年、米eEye Digital Securityに転職し、ぜい弱性分析などの研究開発に携わる。07年に帰国し、セキュリティ技術の研究やコンサルティングサービス、セキュリティソフトの開発・販売を手がけるFFRIを設立した。