エストニアでは、運転免許証を持ち歩かなくてもITを駆使すれば保有者かどうかがすぐにわかる。「だから、免許証不携帯が行政処分の対象になることを、エストニア人に理解させるのは本当に難しい」。ITによる社会の生産性向上を成長戦略の根幹に据え、「世界最先端IT国家創造宣言」の実現を目指す日本にとって、世界有数のIT大国として知られるエストニアは無視できない国といえよう。事実、与党自民党のIT戦略特命委員長である平井たくや衆議院議員をはじめ、多くの国会議員がエストニアを訪れ、日本が目指すべき姿の一端をそこにみている。こうした動きの「仕掛け人」ともいえる存在が、山口功作だ。
「もちろん、日本企業の皆さんに、エストニアに投資してもらうことは私の大きなミッションではあるが、そのためには、まず概念の一致が必要。エストニアの先進的なIT活用モデルの啓発をする、デジタル社会のエバンジェリストといえるかもしれない」と、自らの役割を説明する。
デジタル社会のメリットを熱心に説く背景には、日本社会に対する危機感もある。「現代が、ITによる第三次産業革命のまっただ中にあるとは多くの人が指摘するところだが、あと5年くらいでこの産業革命は終わると思っている。それまで隆盛を極めていた国も、その波に乗れなければ、次の時代では落ちぶれてしまう。日本がそうであってはならない」。
高校卒業後、一瞬の思いつきでスペインに旅立ち、そのまま現地の大学に入学した。さらには、まったくの演技未経験でロサンゼルスのCBSスタジオセンターの門を叩き、日本人で初めてワークショップに参加する資格を得るなど、行動力はケタ外れ。持ち前のフットワークの軽さを武器に日本社会の変革に挑む。(文中敬称略)
プロフィール
山口 功作
山口 功作(やまぐち こうさく)
東京都出身。高校卒業後、スペイン、米国へ留学。日本人学校教員を経て帰国後、ソフトハウスに就職。黎明期のインターネット普及のための全国協同組合の設立に携わる。PCパーツ商社での米国勤務を経て、03年からエストニア投資庁、ならびにエストニア政府観光局を所管するエンタープライズ・エストニアの日本支局長を務める。