「夜勤あるよ。サーバーはいつも大きな音でうなってる。作業依頼してくるお客の9割は日本語の通じない外国人。それでも大丈夫?」──。鹿児島大学を卒業した女性がデータセンター(DC)サービス世界大手のエクイニクス・ジャパンの門を叩いたとき、面接を担当した上司は心配そうに谷口由佳の顔をのぞき込んだ。それもそのはず、DCのフィールドエンジニアの仕事は、サーバー機器類の保守メンテ。屈強な男たちの仕事場なのだ。
同級生の多くが地元の官公庁に就職するなか、谷口はワーキング・ホリデーのビザをとって単身オーストラリアへ渡った。「もっと英語ができるようになって、たくさんの国の人と話をしたい」という憧れにも似た願望があったからだ。外国語ができることでキャリア・パスが描きやすくなることもあるが、むしろそれは猛反対する両親を説得するための後付けの理由でしかなかった。趣味はもちろん“海外旅行”。
帰国後、英会話教室や特許事務所など、英語を生かせそうな職を転々とするなかで“外資系IT企業”の存在を知る。「この業界なら英語を日常的に使うのではないか」と考えた。ビンゴ!だった。
「どこどこの部品を交換してくれ」「ケーブルをつなぎ直してくれ」といった依頼が電話やメールで来るが、国境のないネット社会だけに、その顧客がどこから連絡しているのかははっきりわからない。訛り具合から「これは本家イギリス。間違いなくインドだろう。米国の英語は癖があるな。シンガポールもまた独特……」などと推測するのが谷口の密かな日常の楽しみだ。もし転勤が可能であるならば、「思い出深いオーストラリアの当社DCで勤務してみたい」と、笑顔で話す。(文中敬称略)
プロフィール
谷口 由佳
谷口 由佳(たにぐち ゆか)
1982年、鹿児島生まれ。2005年、鹿児島大学法文学部卒業。08年、上京。11年、エクイニクス・ジャパンに就職。フィールドエンジニアとして活躍している。