2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震。この地震によって巨大な津波が発生し、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害を与えた。石巻漁港のある宮城県石巻市は、市中心部の高台を除く、ほぼ全域が津波に襲われた。「東日本大震災で最大の被害を受けた石巻の若者に夢を与える」。古山隆幸はそう決断し、イトナブ石巻を立ち上げた。イトナブとは、「IT」「イノベーション」「営む」「学ぶ」を組み合わせた造語だ。
イトナブ石巻では、石巻の次世代を担う若者を対象にソフトウェア開発やウェブデザインを学ぶ場と機会を提供し、「地域産業×IT」という観点から雇用促進、職業訓練ができる環境づくりに取り組んでいる。「震災10年後の21年までに、石巻で1000人のIT技術者を育成する」というのが目標だ。ITワークショップも実施しており、小学生から大学生まで自由に参加することができる。ソフトウェアやアプリの開発に取り組む人への技術支援や、県外の技術者を講師に招いて高校生が新しいスキルをマスターできる活動も行う。
石巻出身の古山は子どもの頃、「挑戦の仕方がわからなかった」という。身丈に合った地元の会社に就職して、挑戦しないまま人生を送ると思っていた。「高校生のとき『それでは駄目だ』と考えた」。そこで、大学進学のために上京。在学中にウェブ制作会社を起業した。ビジネスが軌道に乗ってからは、「石巻は、産業が少ない。自分が役に立てないか」と考えた。地元に残りたいと思う若者が仕事を選択できない状況を打破したい、と意識するようになった。こんな思いから、東日本大震災をきっかけにイトナブ石巻が生まれた。
今は、「石巻で世界に挑戦するIT技術者を育てる」をモットーに古山自身の挑戦する日々が続いている。(文中敬称略)
プロフィール
古山 隆幸
古山 隆幸(ふるやま たかゆき)
宮城県石巻市出身。地元の高校を卒業後、上京してウェブ制作会社を起業。会社を経営しながら、2011年3月11日の東日本大震災を契機にイトナブ石巻を立ち上げる。石巻の活性化に向けて活動中。