民間による月面探査プロジェクト「HAKUTO(ハクト)」に取り組むispaceに出向し、広報や宣伝、イベント企画など、社内外のコミュニケーションにかかわる業務を一身に受けもっている。
プロモーションにおいては、「いかに見(魅)せるか」という表面の部分を意識するイメージがあるが、米澤は「ものの本質を見抜き、人に伝えること」が何よりも重要だと考える。「ものをつくった人がどういう思いを込めてそれをつくったのか。それを消費者に伝えて本質的な魅力に気づいてもらい、選択してもらう」。そのために、開発者と直接会話するなど、密にやりとりすることを徹底して行うようにしている。
あるプロジェクトでは、開発者から聞いた話に非常に感動し、「この感動を伝えなければ」という思いに駆られ、かなり壮大で無茶な企画を提案した。クライアントの現場担当者の上司に、「本当に実現できるのか」と問われ、言葉に詰まりそうになった。しかし、現場担当者の「電通は、実現できないことを提案してこない」という言葉に、クライアントとの信頼関係の大切さに気づかされる。実現した企画は、あらゆる広告賞を受賞。「結局は信頼関係が、仕事の成功の根底にあると気づいた」と語る。HAKUTOにおいては「チーム全体の信頼関係」を常に意識して、プロジェクトをマネジメントし、月面探査に挑む。
米澤は大の猫好きだ。08年に採択されたIPAの未踏事業では、「猫×コンピュータ」の研究に取り組んだ。「ペット、とくに猫は永遠のテーマだ」と語るほど猫への想いは強く、「いつか、未踏でやってきたことを世に出せたら」との思いを秘める。(文中敬称略)
プロフィール
米澤 香子
米澤 香子(よねざわ きょうこ)
1985年、神奈川県横浜市生まれ。東京大学工学部航空宇宙工学科卒業。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。大学院在学中、情報処理推進機構(IPA)未踏事業の08年度未踏クリエータに選出される。10年、電通に入社。クリエーティブ・テクノロジストとしてウェブやアプリなどテクノロジー領域における企画開発などに従事。15年よりispaceへ出向、現在に至る。