「芸大に進んで映画をつくりたい」。その夢に向かって勉強し、受験のために上京したものの、「本当に映画をつくりたいのだろうか」と受験前日に考え込んでしまった。当日、試験会場までは行ったものの、結局、受験しなかった。故郷の札幌市へ戻り、地元の大学に入学する。林鷹治の受験時代の思い出だ。「なんか面倒くさくなって……」という気持ちもあったとか。
この面倒くさくて芸大に進まなかったという決断がターニングポイントになる。地元の大学に在学中、ゲームを開発したいとプログラミングを勉強。習得していくうちに、何かをつくることに喜びを感じるようになった。大学を中退して今度は就職のために上京。ハードからソフトまで、さまざまなものを開発した。データ解析のスキルも身につけた。
開発に従事していた時にABテストツールと出会う。ウェブサイトのクリエイティブをAパターンとBパターンの2種類を用意してサイト改善につなげることに加え、パターンを増やすことも可能だ。「この技術を応用すれば、ウェブ上で複数の言語を用意することができるのではないか」。サイトを多言語化する「WOVN.io」が誕生した。「英語版や中国語版のウェブサイトをつくりたいというニーズは高い」という確信のもと、2014年にミニマル・テクノロジーズを設立、翌年には有料版の提供を開始した。安価で簡単に利用できるということで、徐々にユーザー企業が増えていった。「日本語サイトは全体のわずか5%。クオリティの高いサイトを広めていくには、多言語化が必要」とかみ締める。
スタッフは外国人が多く、出身国が全部で15か国。「地球単位で考えれば、当社は日本人の割合が多いかな(笑)」。さまざまな国の文化が集っているからこそ、言語のハードルを低くすることができる。(敬称略)
プロフィール
林 鷹治
(はやし たかはる)
1985年4月生まれ。北海道札幌市出身。札幌大学在学中に独学でプログラミングを習得。開発会社で車載機の開発に従事した後、モバイルオンラインゲームを提供するgumiでソーシャルゲームの開発、ショッピングモールのストアーズ・ドット・ジェーピーでユーザー獲得を担当するエンジニアのグロースハッカーに携わる。2014年3月、ミニマル・テクノロジーズを設立。代表取締役に就任。