
堤一平は、中国に赴任して3年目を迎えた。海外での勤務を具体的に意識するようになったのは、大学院生の頃。指導教授の姿勢に感銘を受けたことがきっかけになった。
大学院では、異文化間コミュニケーション学を専攻した。修士課程を修了した後は、渡米して博士課程に進むつもりだった。だが、教授の考えは違った。「3年、大学の外に出て仕事をしてこい」と堤に勧めた。
堤がソフトバンクを就職先に選んだのは、「世界に向けて挑戦する社風」に惹かれたからだ。入社後は、携帯端末の店舗販売や国内営業を担当。3年が経とうとした頃、突然、教授の訃報が舞い込んできた。
米国での豊富な海外経験にもとづく国際的な考え方のほか、完璧な英語力や決して妥協しないプロフェッショナルな姿勢など、教授からはたくさんのことを学んだ。だからこそ「教授がいる大学院に戻りたい」と思っていた。
尊敬する教授を亡くし、一時は目標を見失いかけたが、「もっと知識と経験を身につけないと、教授に笑われてしまう」。現実を受け止め、しっかりと前を向くことを決めた。
中国では、ソフトバンクグループの力を結集し、アリババとのシナジーやロボット関係などで、ソフトバンクらしく新たな価値を生み出すことに挑戦中。アジアの急速な市場の変化を捉えつつ、「しっかりと現地に根ざす」ことを目指している。
3年で辞めるつもりだったが、がむしゃらに働き、気がつけば入社11年目になった。「グローバルに考え、ローカルにアクションする」をモットーに、教授が導いてくれたビジネスの道で、これからも全力で走り続ける。(敬称略)
プロフィール
堤 一平
(つつみ いっぺい)
1979年6月、福岡県柳川市生まれ。西南学院大学大学院 Intercultural Communication Study専修 修士課程修了後、2008年にソフトバンクに入社。店舗販売や国内営業、国際営業などを担当。16年4月に中国江蘇省蘇州市に赴任。17年4月から現職。