その他の業界の動き1 中小・受託ソフト開発
不況下でも受託を伸ばす策あり メガバンクの基幹業務システムの統合案件が収束し、ただでさえ大型プロジェクトが減る2009年。これに経済危機が追い打ちをかけ、かねてから需要が大幅に減ると懸念されていた「2009年問題」が現実のものとして眼前に立ちはだかる。日本ソフトウエア産業協会(NSA)の河合輝欣会長は、「コアコンピタンスをしっかり伸ばす時だ」と、メンバーの中堅・中小のSIerに檄を飛ばす。裏を返せば、自らの強みを生かせない「派遣型」などのビジネスに甘んじるのは非常に危険というメッセージだ。特徴のない汎用的な受託ソフト開発に依存するSIerは厳しい局面に追いやられる可能性を示唆しているともいえる。
下請けの受託ソフト開発が壊滅状態かといえば、そんなことはない。ユニークなビジネスモデルで不況に立ち向かうSIerも存在する。1800人規模の個人事業主からなる首都圏コンピュータ技術者は、機動力を生かして需要を掴む。発注元(プライム)となる大手SIerからは、「ちょっとした仕事や急ぎの仕事でも快く引き受けてくれるパートナーは貴重な存在」(NRIの藤沼彰久会長兼社長)という声が聞こえてくる。こうしたユーザーの要望に応えていくことで勝ち残りを目指す。個人事業主は小回りがきき、強みとする領域もさまざまである。コアコンピタンスを明確化し、一枚岩で臨む他SIerとは違う切り口で不況に立ち向かえば、生き残れることになる。首都圏コンピュータ技術者の真杉幸市社長は、「今年度(2009年8月期)の事業規模は、前年並みか、それを若干上回る見込み」と、ユーザーの要望に対して的確に対応していく柔軟性を武器に、中小SIerが懸念する“マイナス成長”を覆せると、強気な姿勢を崩さない。
その他の業界の動き2 セキュリティ・ベンダー
安定商材、落とし穴なし セキュリティは景気に左右されにくい「商材」の代表格だ。コンプライアンスや内部統制は経済状況に関係なく規制が強化されている。また、経済環境の悪化で、インターネットがらみの犯罪も増えることが懸念されている。こうした脅威を防ぐサービスに対しても必要に迫られた底堅い需要がある。
内部統制の強化やリスクマネジメントなどは、法規制への対応や社会的責任から、ほぼ必須の投資。なかでも「情報管理」の重要度は高い。シマンテックの加賀山進社長は、「データは増えるほど管理が難しい」と指摘。データを守るうえで、バックアップが欠かせず、万一、事件や訴訟が起こった際には定められた期間のデータの提出を関係各所から求められる場合がある。
また、経済状況の悪化で、「ネットがらみの犯罪がより増える」(トレンドマイクロの大三川彰彦・取締役日本地域担当)と予測する声もある。脅威の増加に対抗するための技術革新も活発化しており、最近のものではマカフィーが「Artemis(アルテミス)」、トレンドマイクロは「Smart Protection Network」をそれぞれ開発している。
景況の悪化で、ユーザー企業からは、「支払いを少し先延ばしにしてくれないか」という切実な要請も散見される。「顧客と相談しながら支払いに柔軟性を持たせることもある」(大三川取締役)と、ケース・バイ・ケースで対応中だ。
社内外のリスクから身を守る必要に迫られているユーザー企業にとって、セキュリティ商材はなくてはならない存在。それが変わらない限り、セキュリティベンダーの優位性は、不況下でも当面、揺るぎそうにない。