日本IBM
ミドルに自然と「OpenID」
企業の認識薄いが商機あり
OpenIDファウンデーション・ジャパンに加盟している日本IBMは、システム管理ソフトなどミドルウェアの領域で「OpenID」を利用した関連ビジネスを手がけている。同社ではシステムに分散するID・パスワード情報の統合管理が可能な「Tivoli Identity Manager」やマッシュアップ基盤「WebSphere sMash」を「OpenID」に対応させ、ユーザー企業へ導入を促す戦略を模索している。
現段階では、システム管理ソフトのリプレース時期に導入提案するケースが多く、「『Tivoli』や、『WebSphere』を導入すれば、自然と『OpenID』に対応している状況“OpenID Ready”を広める」(ソフトウェア事業の米持幸寿・コンサルティング・テクノロジーエバンジェリストソフトウェア・テクノロジー推進会議議長)という。
国内にはまだ「OpenID」を認識するユーザー企業が少ない事情を考慮してのことだ。しかし、「OpenID」がコンシューマの間に広まりつつあることから、ネットショップなどコンシューマ向けWebサービスを提供予定の企業に対してアプローチをかけることも同時進行させている。「新しくWebサービスを立ち上げる企業は、『OpenID』に高い関心を示している。まずは、コンシューマに『OpenID』のメリットを認識させていく」(Tivoli・第二テクニカル・セールスの竹日正弘・ICP-コンサルティング・ITスペシャリスト)という方針を示している。
次のステップとしては、企業間のシステム連携を図った際のID管理だ。「グループ会社や取引関係にある企業の間でウェブでの受発注や情報共有が活発化してくる。システムを『OpenID』化しておけば連携しやすい」(竹日ITスペシャリスト)と、企業利用の拡大をにらむ。ユーザー企業がSaaSなどで複数のプロバイダからアプリケーションサービスを受けるケースが数多く出てくる可能性を秘めているのだ。こうした状況下では、「しっかりとしたID管理が重要になり、『OpenID』に対するニーズは高まってくるだろう」(同)と分析している。
事例
野村総合研究所
JALマイレージと予約サイト連携
野村総合研究所は「Uni-ID」を昨年から提供しているが、その最初のユーザー事例が日本航空(JAL)だった。
「Uni-ID」は「OpenID」の仕様を採用しているもので、JALマイレージバンクのIDでJALのサイトや旅行会社、ミキ・ツーリストの宿泊予約サイト「μ(みゅう)海外ホテル」や「JAL HOTELS」をつないだシステムを構築したのだ。
JALの例ではID情報を受け渡す「Uni-ID Identity Service」をJALにASPで導入した。ホテル予約サイトには「OpenID」の処理を行うモジュール「Uni-ID Request Module」を入れた。
ホテル予約サイトはそれまで、情報入力に手間がかかることから成約率が低下していたという。航空券予約からホテル検索・予約までをスムーズな作業で実行できるためユーザーの入力負担が減り、入力の途中であきらめてしまう「途中脱落率」が下がるという効果が出ている。
NEC
NGN+ID標準でSI獲得狙う
通信事業者に「オルグ」
NECは、ID管理の標準(連携)技術を使ってNGN(次世代ネットワーク網)事業を活性化させようと目論んでいる。
同社が提供するネットワークサービス基盤ソフトウェア「NC7000」シリーズは、通信キャリアやASP/インターネットサービスプロバイダ(ISP)などが行うサービスや、一般企業がNGNを介してアプリケーションを利用する際に決済や認証、課金などを共通化する機能を併せ持つ。
このなかの個人認証基盤ソフト「NC7000-3A」は、「OpenID」と「SAML」によるSSOに対応している。通信事業者やISPなどのユーザーIDを保有するサービス基盤提供事業者と、そのID情報を利用してサービスを展開するサービス提供事業者と連携し、ID情報を安全に利用できる環境に仕立てることが可能となる。
NTTやKDDIをはじめ複数の通信事業者にID連携製品を導入すれば「サードパーティベンダーがID管理を意識せず、さまざまなサービス事業者のアプリケーションやサービスを共通の環境で利用できる世界が生まれる」と、奥屋滋・第二ネットワークソフトウェア事業部長は指摘して、その可能性に期待を寄せている。
現段階では通信事業者を攻めているところ。垂直統合型のビジネスモデルで他との連携性を認めない通信事業者側がNGNのインタフェースを公開しないため、オープン化に必要なID管理や連携を実現するソリューション、ノウハウを提供する「オルグ活動」を展開しているところだ。ゆくゆくはNGNを利用してNECの強みを生かしたSI(システム構築)サービス事業を伸ばそうとしている。
「『SAML』は導入障壁が高いが、医療分野のようなコンプライアンスが求められる分野に大きな需要が見込める。これに加えて、導入障壁が低く扱いやすい『OpenID』にも対応することで、自社が提供できるID連携サービスの幅が広がる」(同)として、昨年9月には「OpenID」でSSOを実現する「NC7000-3A-OI」を製品化した。