景気後退が色濃い2009年度、SIerにとって人材を育成し、足場を固めるべき年となる。技術者のスキル転換やソフト開発の成熟度を高める動きが活発化するはずだ。本特集では、こうした人材育成の基本サイクルである採用→育成→評価 →伝承の四つのフェーズに分けて有力SIerの取り組みをレポートする。“不況明け”のスタートダッシュで差をつけられるかどうかは、人材戦略の成否にかかっている。
人材を切り口に改革
競争力向上、原点回帰へ 売り上げを伸ばすのが難しい経済情勢のなかで、人材育成を通じた事業構造の改革に取り組むSIerが増えている。工場やプラントを持たない情報サービス産業にとって、人材は競争力の源泉であることは間違いない。“不況のあと”に向けた経営戦略=人材戦略の見直しを本格化させている。
基本4サイクルを忠実に 情報サービス産業は、1990年代前半の不動産バブルの崩壊、00年代前半のITバブル崩壊、ハードウェアの単価急落など、何度かの試練を経験してきた。景気変動だけでなく、汎用機からオープンシステムへ、集中から分散へとシステムのアーキテクチャも大きく変化してきた。
そして今、「戦後最悪」と危惧される世界同時不況が襲いかかる。タイミングを同じくして、アーキテクチャもクラウドコンピューティングやSaaSなどサービス型へ再び変遷。不況とアーキテクチャ変化という二重のハードルを乗り越えるには、技術者や営業マンのスキル転換やソフト開発の成熟度を高め、生産性を高める取り組みが必要不可欠となる。情報サービス産業における“モノづくり力”とは、すなわち人材育成の如何にかかっている。すでに有力SIerは、“不況のあと”を見据えた人材育成に力を入れている。
人材育成は、採用→育成→評価→伝承の四つの基本サイクルを継続させることが基本である(図1参照)。それぞれの段階で、各社それぞれ知恵を絞ったり、ユニークな取り組みを行っている。
次ページ以降、基本サイクルのスタート地点である「採用」から順次リポートしていく。
[次のページ]