ストックでOff
ネットワーク
低価格NW機器で囲い込み
ネットワーク系販社による「L2/L3スイッチ」関連の販売は、製品自体のコモディティ(日用品)化の進行で急激な伸びが期待できなくなっている。さらに、昨秋からの世界同時不況がこれに追い討ちをかけた。ユーザー企業は、できるだけネットワークインフラのコストを抑える傾向が強まっている。
このため、ネットワーク系販社では、低価格の製品を取り扱うことで導入数を増やす一方、運用支援や保守延長などサポート面を強化することでユーザー企業を囲い込む動きが活発化している。コスト削減要求の高いユーザー企業に対し、「低コスト製品を大量販売することで、ストックを稼ぐ」という一挙両得のやり方だ。
東京エレクトロンデバイスは、これまでエクストリームネットワークス製のスイッチを中心にネットワーク関連ビジネスを手がけていた。だが、「価格が高いためリプレースを先延ばしされるケースが多い」(上善良直・CNプロダクト本部プロダクト推進部長)と打ち明ける。リプレース時期に買い替えを躊躇するユーザー企業に対して販売アプローチをかけるため、新商材を揃えることに踏み切った。
同社は今年4月から、コンピュータ(C)やネットワーク(N)に関する製品調達の強化を目的に「CNプロダクト本部」を新設。海外ベンチャーの製品を中心に国内市場への投入を活発化させている。「スイッチに関しては、できるだけ安い製品を仕入れる」(上善部長)という。現在、複数メーカーの製品を選定中で、近く国内総代理店としての販売契約を結ぶ計画だ。
ネットマークスは、ネットワーク機器販売に加えて、ネットワークインフラの運用支援サービス「パワープラネット」を今年8月から開始した。藍隆幸・商品企画室長は「構築後のサポートを充実させることによってユーザー企業を獲得し、囲い込む」という。同サービスでは、専用のポータルサイトを提供し、対応履歴の一覧やインシデント統計レポートが作成できるほか、必要な際には技術要員が迅速に駆けつける。「ストック型ビジネスで利益を増やす」(藍室長)方針を打ち出している。
また、ネットワールドも同様に「スイッチのリプレースを促したところで、ユーザー企業の財布の紐は緩まない」(荻上照夫・マーケティング1部アクセス・ネットワークグループマネージャー)と判断。製品をリプレースせずに保守を継続するだけの提供方法をサービス化した。「ユーザー企業がリプレース投資費用を確保できるまでの取り組み」(荻上マネージャー)と、暫定的な措置であると話す。
ネットワーク系販社が厳しい経済環境下で「L2/L3スイッチ」販売の手を緩めないのは、ネットワークインフラの要と位置づけているからだ。「今はコストを抑えたいというユーザー企業が多数を占める。しかし、近い将来に訪れる『クラウド/SaaS』時代には、データセンターをはじめ一般オフィスでもネットワークインフラの増強が必須になる」と、ネットワールドの荻上マネージャー。今はじっと我慢して、次のステップに向けて新しい製品・サービスの準備を着々と進めているようだ。
棚卸しでOff
アウトソーシング&運用管理
アウトソーシングが“本流”へ
ITサービス関連で、アウトソーシングは、不況に突入して以降、需要が高まっている分野だ。ソフトウェア開発ツールベンダー、ユニファイジャパンの堀学社長は、その理由についてこう話す。「ユーザー企業は、不況で、汎用的な業務に費やすITと、自社の競争力につながる戦略的ITとに分け始めている」。多くのユーザー企業では、汎用的な共通業務に費やすITをアウトソーシングするなど、コスト削減の必然性が高まるなか、自社運用をしないことにするよう割り切り始めているというのだ。
今回の不況によって、企業は自社のITコストを真剣に見つめ直し、汎用業務のITを外出しすることで、コストを削減しようとする動きをみせている。この分野では、メールシステムの運用代行サービスや、IT資産管理、パソコンのセキュリティ対策のSaaS型サービスなどに対するニーズが高まっているようだ。
運用管理ツールも、不況下にあってユーザー企業が関心を寄せる分野だ。運用管理ツールを導入すれば、パソコンやプリンタ、サーバーなどの各IT機器がどの程度使われているか、遊休資産は何台あるか、また電力コストはどれくらいかを棚卸しして把握することができる。これまで資金にゆとりのあったユーザー企業は、「部分最適」で競争力を強化してきた。だが、財務状況が厳しくなる状況下で、現在眠っている資産を有効活用し、無駄なIT投資を防ぐため運用管理ツールを導入することによって全体最適を図ろうとしている。
日立製作所の「JP1担当者」は「とくに、中堅・中小企業(SMB)からニーズが高まっている」と、底打ち加減が遅れているSMBほど、その傾向が強いことから、SMB向け製品ラインアップを強化する考えだ。
業務アプリはタダで提供 「タダでパソコンを使ってもらい、儲けが出たらシステムを預かる」――。山梨県のSIerであるシステムインナカゴミの中込裕社長は、中小・零細企業の多い同県の事情を踏まえ、こうした“捨て身”の戦略を打ち出す。
中小・零細企業に低価格のネットブックを購入してもらい、業務用のアプリケーションは「Google Apps」や「Open Office」など無償ソフトウェアを導入支援する。ITを使うことで業務効率や業績アップをした段階で、クライアント・サーバー型(C/S)へと移行し、そのシステムを運用が楽な同社データセンターで預かる――という長期的な戦略だ。
中込社長は「ただでさえコスト削減要求が大きいなか、こうでもしないと、地域のIT化は進まない。将来のために運用専門技術者を養成している」と、かつてはNEC製を中心にしたサーバー販売で名を馳せた同社も、構造改革を余儀なくされている。
50%Off
セキュリティ
製品を一体化し安価に
「将来への投資」として「コスト削減要求」に関する需要とは無縁と思われていたセキュリティ分野でも、製品やソリューションに対し、導入コストを抑えられるように、ひと手間加えて提供するITベンダーが増えてきている。
日立情報システムズは、メールシステムで必要となるアンチウイルス、アンチスパム、スプール、メールアーカイブ、フィルタリングを仮想化技術で一つにまとめ「アプライアンスサーバー」として提供する「MAIOS(マイオス)」の販売を開始した。オールインワンのメールシステムは業界初という。
同製品を導入すれば、これまで個別に加算されていたハードウェアの保守費用が1台分の費用で済む。導入、運用コストなどは、個別の製品導入比べ50%以上のコスト削減が可能という。さらに、ハードウェアをひと括りにすれば省電力化につながり、CO2削減も実現できることを訴求する。
セキュリティ最大手のシマンテックは、機能を限定して中小企業向けに提供することを目的としたエンドポイントセキュリティ製品「Symantec Endpoint Protection Small Business Edition」を発売。同製品では、アンチウイルスやアンチスパイウェア/ルートキット対策、クライアントファイアウォールなどが利用できる。導入インストールや運用管理が容易で、IT管理者が不足する企業でも扱いやすい。
また、同社は大企業向けにも、従来のエンドポイントセキュリティはもちろんのこと、バックアップ・リカバリ製品とメッセージングセキュリティ製品をまとめたスイート製品「Symantec Protection Suite Enterprise Edition」を発表。バックアップやメールセキュリティなどの製品を個別導入するのに比べ、最大70%のコスト削減が可能という。不況の最中にありながら「将来への投資」をすぐにできる仕組みとして、ユーザー企業の多くが関心を寄せているようだ。