東北地域
DC生かし需要の掘り起こしへ
サービス型モデルを視野に
地方では、自社所有するデータセンター(DC)などを活用して新事業を創造しようと模索するITベンダーが増えている。その一つが、SaaSなど「サービス型」モデルの取り組みだ。「地域密着型」を掲げ、これまでのIT提供形態と異なる方法で中堅・中小企業(SMB)などの市場を掘り起こそうとしている。
岩手県のトップSIerであるアイシーエスでは、月額課金の携帯電話向けに地元ならではのアプリケーションが拡大するとみている。最近では、津波の緊急情報提供に関するサービスを、NTTドコモ、県立大学と共同で推進している。一般ユーザーへの提供に加え、これを漁業向けサービスに仕立てようと検討している。具体的には、漁船が出漁中に津波に遭った際、安全に避難するためどちらの方角へ航行すれば適切かを、GPS(全地球測位システム)と連携させて判断できるようにする。邨野善義社長は、「今年8月に予備実験を行った。これを精査し、早い段階で商用化する」方針だ。
宮城県のサイエンティアでは、「大学で職員の採用に関するシステムを一時的に利用したいというニーズが出てきた」(荒井秀和社長)ため、期間限定のASPサービスの提供を開始した。また、山形県のデータシステム米沢では「米沢市に税関連のASPを提供しているが、このほかにも業務関連ソフトのASP化に関して興味を抱く自治体や企業が出てきている」(遠藤英明代表取締役)と、従来のクライアント・サーバー型システムから脱却する動きが活発化しているようだ。
福島県中央計算センターも、「現段階でニーズは低いが、『クラウド/SaaS』といったサービス型モデルの事業に着手しようと考えている」(齋藤幸夫社長)と話す。一時期は、大手SIerの支店が一気に閉鎖されるなど、ITベンダーの動きが鈍った東北地域では、サービス型の提供方法で打開策を見いだそうとしている。
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