経済の不連続が起こる 従来の延長は通用せず 世界経済の危機を垣間見たこの1年、経済の不連続性や転換が相次いで起こった。先のアクセンチュアの推計にあるように、大型のSI案件は減少し、クラウド/SaaS、DaaSといったサービス型ビジネスが増える。クラウドを収容する一部のデータセンター(DC)を除いてハードウェア販売の頭打ち感が強まり、さらに従来型の大型SIプロジェクトやパッケージソフトの販売も失速。大型SIプロジェクトに伴う多重下請けのすそ野に位置する開発系SIerやハード、パッケージの売り切り型モデルから脱却できないSIerのビジネスはより苦しくなる見通しだ。
しかし、SIerやソフトベンダーのビジネスが終焉を迎えるというわけではない。むしろサービス化の流れをうまくとらえたSIerはビジネスのチャンスが広がる。2013年、クラウド型SIサービスが26%占めたとしても、残り4分の3は従来型のSIが占める。国内に多く存在する基幹業務システムのバッチ処理は、リアルタイム処理を得意とするクラウドが苦手とする領域だ。
クラウド化しやすいフロントオフィス系とユーザー企業が所有する基幹業務システムとのつなぎ込みや、クラウドのサービスレベルを顧客の要求に適合させるための各種補完サービス、クラウドを活用した開発環境などのトータルサービスを前面に出せば、SIerの受注機会はぐっと広がる。例えば、基幹系システムの開発環境向けに、価格の安いパブリッククラウドを使うとコストの差は歴然となる。
アクセンチュアの導入事例によれば、パブリッククラウドの代表格の一つAmazon EC2にERP(統合基幹業務システム)のOracle EBSを約85分間でセットアップできることを実証した。通常はハードリソースの設計や購入、構築などで約1か月かかるという。リソースの調達費や人件費を考えるとコスト差は大きい。同社では、パブリッククラウドとユーザーの要求レベルとの差を埋めるべく、セキュリティや可用性、信頼性、バックアップなどの独自の付加サービスを充実させることで収益力を高める。
こうしたエラスティックに対応可能なクラウド型SIは今後さらに拡大する見込み。不連続性や転換が起きたリーマン・ショックからの1年。大型SI案件は先延ばしになり、エラスティックなITサービスは前倒しで導入が進む。国内ITベンダーのビジネスモデルも市場環境の激変により、従来の延長線上では立ち行かなくなる可能性が高い。