PCメーカーの動向
WiMAX関連商材のなかでも注目されているのは、WiMAXモジュールを内蔵したノートPCである。PCメーカーは「今後5年は新たな付加価値として訴求できるPC」(レノボ・ジャパン)と期待するが、実際に発売したメーカーはまだ少ない。需要がみえないという懸念があるために、本格的な販売に踏み切れないようだ。
「エリア」「使い方」で悩む国内勢 富士通はWiMAX搭載PC「FMV-BIBLO LOOX R/D70N」をUQのサービス開始に合わせて7月に発売した。ただし、機種はコンシューマ向けで、販売も同社の直販サイトに限定している。藤井康夫・パーソナルマーケティング統括部コンシューマPCグループプロジェクト課長は「まずは市場の反応をみるため」と、事情を説明する。

富士通 藤井康夫 パーソナルマーケティング統括部コンシューマPCグループ プロジェクト課長
同社は、まずコンシューマ市場で認知度を高め、法人市場に展開する計画。ただ、現行機種の反応が「思ったほどではない」(藤井課長)ため、コンシューマ向けの店頭販売も法人向けも検討中の状況だ。
藤井課長は、普及の条件として「エリアの問題と使い方の提案が課題」と指摘する。法人向けではとくに使い方が重要とみており、「どんな提案ができるか模索しているところ」と話す。
NECも「ユーザー企業の関心は高いが、現時点での通信可能なエリアの狭さがネックになっている。出張先でネット環境を構築できないのは、ビジネス利用では致命的と感じ、通信可能なエリアの要求はコンシューマよりもシビアだ」(ビジネスPC事業部マーケティンググループ担当者)と、全国を網羅しているとは言い難いエリア状況が普及の足かせになっていると強調する。
台湾勢は拡大のタイミングうかがう 一方、台湾の大手パソコンメーカーは、WiMAXへの対応に積極的だ。日本エイサーは9月に法人向けのWiMAX対応ノートPCやネットブックを投入。アスース・ジャパンは海外での実績をテコに国内市場へのWiMAX対応機の投入を検討する。
日本エイサーは、9月11日から法人向けのWiMAX搭載機種を順次投入した。ノート4機種にネットブック1機種のラインアップで、ディストリビュータのダイワボウ情報システム(DIS)経由で企業向けに売り込む。DISがWiMAXのMVNOであることに加え、法人向けの販売力が強いため、同社の販売チャネルを活用する。コンシューマ向けのWiMAX搭載機種の投入については、「検討している段階」(日本エイサーの瀬戸和信・事業支援本部マーケティング部マネージャー)としている。

アスース・ジャパン 程維徳 プロダクトマネージメント部 システムプロダクトプロダクトマネージャー
アスース・ジャパンは、WiMAX搭載機の国内市場への投入時期は未定だが、「積極的に取り組んでいきたい」(程維徳・プロダクトマネージメント部システムプロダクトプロダクトマネージャー)と意欲を示す。アスースは今年に入り、ロシアでWiMAXの通信事業者にWiMAX搭載機を在庫してもらう方式で販売を始めている。
以前からあるWi-Fi(無線LAN)モジュールは、現在市販されている大半のノートパソコンに内蔵されており、アスースでは、「いずれは、Wi-Fiと同様に、WiMAXもノートに標準搭載されることになる」(同)と予測する。日本エイサーでも、Wi-FiとWiMAXが一体となった無線通信モジュールを採用している。アスースはFOMAなどの第三世代携帯電話(3G)向けモジュール搭載機種を販売しているが、その多くをWiMAX/Wi-Fiのモジュールに換装できるとしており、「需要が掴め次第、対応機種を国内投入する」(同)と、本格展開の時機をうかがっている。
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