ディストリビュータの動向
大手ディストリビュータも“新商材”としてのWiMAXに注目する。しかし、実際のビジネス展開ではMVNOにまで乗り出す会社がある一方、市場動向を静観する企業もあり、温度差が生じている。

6月に開催したUQの記者発表会には国内外の主要PCメーカーの幹部が出席した
PC販売拡大の切り札に ダイワボウ情報システムではWiMAX関連ビジネスで対応の通信カードやノートPCを販売するが、とくにWiMAX搭載ノートPCについて「今後数量が増えることが予想され、非常に期待している」(青井正則・首都圏・関東営業本部広域営業統括部副部長)と強調する。3.5Gの携帯電話よりも大容量通信が可能で、通信カードを使うよりも契約手続きや操作が簡単というのが、その理由だ。
同社は、ノートPC販売でSIerや販社などの顧客から通信環境の要望の高さを背景に「PC販売の拡大につながる」(同)ことを狙って、UQから回線を借り、WiMAXのMVNOとして通信事業にも参入。ハードと通信サービスを組み合わせた「トータルサービス」の提供でビジネス拡大を目論む。一方で、「WiMAXを付加価値として、単価アップを図ることができる」(猪狩司・販売推進本部販売推進部長兼マーケティング部長)という期待もある。
具体的には、自社のカスタマイズセンターで、WiMAXの契約手続きや設定、ハードやソフトをユーザーが望む仕様にキッティング(組み上げ)することで、独自色を打ち出す。WiMAX搭載PCでは文教分野の開拓を狙っており、セキュリティソフトなどを組み込み、学生用PCとしての販売を計画している。
丸紅インフォテックは静観の構え。「通信機能内蔵PCは過去にもあったが、それほど動かなかった。WiMAXも同じ」(神田秀樹・MD・販売推進本部UMPC推進室キャリア企画課長兼MD1部ハードウェア1課課長補佐)とみる。また、PCメーカーが本格的に製品展開していないため、現状ではほとんど実績がなく、通信カードも「思っていたほどではない」(同)ことも消極姿勢の理由に挙げる。
ただ、新商材として期待はしており、「需要が盛り上がればいつでも販売できる用意はしている」(同)と話す。同社ではWiMAX搭載PCではネットブックが中心になるとみており、独占的に取り扱うアスース・ジャパンと連携し、市場の拡大が見込め次第、アスースの対応ネットブックをすぐにでも投入する考えだ。
WiMAXビジネスの課題は? 一つは、ITベンダー各社が指摘するように、WiMAXの利用可能範囲の拡大である。最大のライバルになるであろうFOMAなどの3G(第三世代携帯電話)は、利用範囲は広いが、WiMAXに比べて速度は遅い。ただ、3Gもデータ通信速度の向上を図る見通しで、中長期的にみて3Gとどう棲み分けるかだ。
もう一つは、対応PCの価格。例えばパナソニックの機種が27万円、レノボは21万円、富士通は19万円。この半額以下で売る台湾ベンダーが際立つ。また、WiMAXモジュールは大口ロット価格でも55ドル前後といわれており、今のノートPCやネットブックの主流の価格帯を考えると割高だ。景気低迷で企業のコスト志向が高まるなかで、付加価値とはいっても、普及にはメーカーのもう一段の価格引下げ努力が求められる。
こうした課題を克服することで、WiMAXの利用に踏み切るユーザー数も大きく変わってくるだろう。ユーザーが増えれば量産効果でモジュールが安くなり、対応PCなどの機器も販売が増える好循環と市場の拡大が期待できる。