〔組織力に強み 外資系ベンダーの一手〕
日本IBM
全方位のソリューションを提供  |
日本IBM 前平克人リーダー |
BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)を中心とした新興国に足場を築きたい製造業は、現地の市場情報を欲している。日本IBMが提供している新興国向けソリューションは、こうしたニーズに応えるもの。コンサルティングから、システムインテグレーション(SI)、アプリケーションサービス、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)など、多岐にわたるITサービスを提供する部門「IBMグローバル・ビジネス・サービス」(GBS)におけるソリューションの一つだ。グローバル展開しているコンサルティングサービスの拠点を活用して調査を実施し、ユーザーに膨大な情報を提供する体制を築いている。
日系ベンダーにはない総合力・組織力を駆使して、日本の製造業の海外進出をバックアップする。ヒト・モノ・カネといった経営資源の統合や最適化に向け、戦略策定のコンサルティングからSI、運用保守までをワンストップで提供するサービスを揃えているのが同社の強みだ。
日本の製造業の海外工場は、システムが貧弱であるうえ、本社のガバナンスが効力を発揮していないという事例がみられる。ありがちなのは、生産や在庫(仕掛かり在庫)の状況が各拠点で分断され、情報が錯綜するという事態に陥っているケースだ。開発と生産拠点間での情報共有がうまくできず、グローバルな部品表(BOM)連携が属人化していたり、マスターデータが各拠点でバラバラでPSI情報を把握できなかったりしている。日本IBMの前平リーダーは、「グローバル規模で一体化したうえでの『見える化』を実現したいというニーズが根強い」と話す。
そこで同社が打ち出したのが、本社のERP(統合基幹業務システム)と各工場の工程管理システム(MES)をつなぐ基幹システムを仮想的な大工場に見立て、QCD(品質・コスト・納期)を管理する「Enterprise MES」だ。
これは、製造現場や物流の情報をリアルタイムに統合し、会計情報と連携させることで、優位に立てる計画を策定・実施する統合的なソリューション「IBM Global Integrated View」(GI View)の一つ。SOAアーキテクチャを採用しているので、既存システムとの連携はスムーズだ。
日本の製造業、人材育成にも課題を抱えている。これまで優秀な熟練工の個人スキルに依存してきた体質を、仕組みとして組織に取り入れる必要に迫られているのだ。
対応策として、現在まで推進してきたビジネス分析やビジネス最適化を支援する「ビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼーション」(BAO)で共通したナレッジ基盤を用意。一定の業務までは経験やノウハウをマニュアル化したうえで、熟練工の個人指導を取り入れる。
これからのグローバルSCMは、中央集権型のトップダウンでは機能しない。シミュレーションを高速化し、各販社や部門間で計画をすり合わせる仕組みが不可欠というのが、日本IBMの考え方だ。
「引き合いはある」(日本IBM担当者)というグローバルSCMソリューションの提供の本格化はこれから。サプライチェーン全体の情報の統合・可視化について、その重要・必要性を認識している製造業は少なくない。すでに需要は顕在化しており、豊富なソリューションを揃える日本IBMにとって高い成長が見込める市場といえる。
日本HP
自社ノウハウを横展開
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日本HP 西田一範 マネージングコンサルタント |
日本HPは、PCやプリンタでグローバル市場を開拓してきた製造業であるという出自を生かしたSCMソリューションを提供しているのが特徴。サプライチェーン改革におけるシステムの導入経験、ノウハウをユーザーに横展開してきた。
同社は、個別受注生産の高値製品や大量生産の安価製品など、製品の属性ごとにサプライチェーンを可視化。在庫の削減目標をKPI(重要業績評価指標)として策定し、生産現場に落とし込む。
このほか、毎年の流行に即して製品ごとに物流・販売拠点を見直したり、「Design for Supply Chain」という考え方のもとパッケージの形状を決めてから製品デザインに取り組んで物流コストを削減したりしている。
社内には、ミッションクリティカルな戦略などの策定をサポートするコンサルティンググループの「HP SPaM」を設置。ここで得た知見をサプライチェーン改革に活用しているという。
〔日系企業に攻勢かける 日の丸SIerの挑戦〕
野村総合研究所(NRI)
協業通じて強みを発揮  |
野村総合研究所 辻直志主席コンサルタント |
野村ホールディングスとセブン&アイ・ホールディングスを二大ユーザーとして、伝統的に金融業と流通・小売業を強みとしてきた野村総合研究所(NRI)。製造業向けビジネスは、同社の業種別売上高で「その他産業」に振り分けられるほどの目立たない実績だが、金融業と流通・小売業で蓄積してきたノウハウを生かして事業展開を図ってきた経緯がある。
「金融の数理的分析力と流通をよく理解しているという知見をもとに、高速のサプライチェーンの領域で強みを発揮してきた」。辻主席コンサルタントはこうアピールする。賞味期限が短く、高速のサプライチェーンが必要とされるサッポロビールや雪印といった大手食品メーカーなどへの納入実績を積み重ねてきた。
同社は、多拠点を繋ぐいわばブリッジ役で、「分散したレガシーシステムを繋ぐ技術」と「高速のサプライチェーンの実現」の二つを強みに据える。
SCMの前提となるERP関連ビジネスについては、もともとスクラッチ文化が根づいている同社が苦手としてきた分野だ。「ERP関連ビジネスを急速に立ち上げているが、これをハンドリングするのにゼロから積み上げていくのは無理」(辻主席コンサルタント)。こうした認識から出発し、スウェーデンのSCM専業ベンダーであるシンクロン・インターナショナルと協業。2010年7月には国内における独占的セールス・パートナー契約を締結した。11年度までに国内で5~10社に納入するのが目標だ。
すでに10年1月からは、グローバルオペレーションの効率化や可視化に課題を抱える製造業向けに、調達・生産・販売・在庫などを一元管理できる「グローバル業務統合サービス」を提供している。
これをもとにNRIが進める“プラグインポートフォリオ”型のアプローチは、各拠点で異なるERPなどの既存システムを活用しながら、マスターデータをグローバルに統合管理するMDM(マスターデータ管理)基盤を構築。この基盤上で、グローバルEPM(開発プロジェクト管理)とグローバルSCI(サプライチェーン統合)サービスを提供するものだ。
国外に限れば、海外進出している日系企業向けに、ERPの導入・運用・保守サポートを1996年から提供してきた。現在は、「クラウド型ERPサービス」に移行している米QADの「MFG/PRO」(QAD2009)がそれで、中国のほか東南アジア諸国で90サイト以上の納入実績がある。実は、国内でも展開する考えがあったが、同社にとってはハードルが高かった。郡司上席コンサルタントは「要求水準が高い国内のユーザーに生産管理システムを導入するのは難しいと判断した」と振り返る。
多数の海外拠点をもつNRIだが、現地企業に対するアプローチはこれから。人員についても、いまだマネジャークラスは日本からの出向者が多数を占める。今後は、現地人員の採用を増やして、ローカル化を推進していく考えだ。
辻主席コンサルタントは、「目標値は設定していないが、(グローバルSCMソリューションで)2015年までにユーザー数を150社超にしたい」と意気込む。自動車や産業機械、電子機器など、これまで同社が取り込めていなかった企業にすそ野を広げていくことが成長のカギを握る。


兼松エレクトロニクス(KEL)
中国・成都に現地法人設立 グローバル化の波に乗り、海外拠点の設立を急いでいる日本の製造業は、企業系列を離れた取引を活発化させている。ただしEDIシステムは、各地域の生産拠点ごとに構築されてきた。
商社系SIerである兼松エレクトロニクス(KEL)の第二ソリューション営業本部エンジニアリングサポート部「Mono創り」ソリューションセールス&マーケティングプロジェクトの山口守氏は、「システムは本社と分断し、各現地法人に委ねられているのが実情だ」と話す。
近年は、自動車や電機・電子部品メーカーを中心に、EDIシステムのグローバルサポートに対するニーズが上向いている。KELは、グローバル事業の展開に向けて準備を進めており、国内のEDIを海外でもサポートできるインフラ整備やサービスの投入に着手する計画だ。
具体的には、中国にグローバルサポートデスクを設置し、日本・中国・英国で24時間365日対応のサポート体制を敷く予定。日本では今期中にサービスを開始する。
すでに2010年12月に中国・成都に現地法人を設立することを明らかにしている。人材については、2007年から中国人の現地採用を進めてきた。オフショア開発拠点の位置づけで、主に日系製造業の半導体設計の受託ビジネスなどを手がける。将来は、前述のサービスのほか、クラウドサービスなどを展開する考えだ。
このほか、国際会計基準(IFRS)の適用を見越して、「今期中に新しいソリューションを発表する見込み」(山口氏)だという。海外法人や子会社の生産・在庫・購買・販売情報をリアルタイムに収集して会計情報に反映する場合、月次報告ではより迅速な情報連携・流通が必要になるからだ。
KELは、すでに2006年に、EDIソフトウェアを開発・販売する独シーバーガーとシンガポールのベンダーであるECnetの2社との間で協業契約を締結しており、グローバルEDIの構築ビジネスに取り組んできた。
もともと製造業向けソリューションに強みをもつKELだが、厳しい数字が並んだ2010年3月期の決算で、製造業向けの売り上げ(08年度比)の落ち込みが最も激しかった。中期経営計画では、グローバル市場への参入を重点施策の一つに掲げる。製造業のグローバル化が進むなか、国内だけの展開にとどまっていては成長が望めないと判断したようだ。
現地での人材採用に積極的だが、中長期的にみた場合、これをどこまで推し進められるか。定着率の向上と徹底したローカル化が必要だろう。
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