ソフトバンクBB
「IT-EXchange」の受注が20%増
次のステップは「仕かけ」
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| 山本秀雄統括部長 |
ソフトバンクBBの販社向けウェブ受発注システム「IT-EXchange」は、全体売上に占める受注率が前年から20%アップしている。営業担当者が各販社に対して利用を促したことが功を奏した。山本秀雄・情報システム本部C&Sシステム統括部長は、「SOHOを中心に新たな利用企業が出てきている」と自信をみせる。
2000年に稼働を開始した「IT-EXchange」は、これまで大きな増強を行っていない。ただ、「営業担当者が販売パートナーから聞いた要望に、迅速に対応してきた」と山本統括部長は振り返る。大手メーカーサイトとの連係など、フットワークのいい改修を行ってきている。
山本統括部長自身、「老朽化している」と認めるものの、現段階では「IT-EXchange」の大規模改修は具体化していない。「システム管理側から大規模な刷新を企画してリプレースを進めることも考えなくてはいけないが、使う側の声を反映させることが最も重要。当面は現場のニーズに柔軟に対応する」という。
それでも山本統括部長は、「販社やメーカーのディストリビュータに対する期待に応えるためには、システム的な仕かけも必要だと思う。IT商材が変化しているなかで、ディストリビュータとして何が求められているかを見極めていかなければならない」として、ウェブ受発注システムを使った事業拡大の構想を描いた段階で、リプレースの検討に入るようだ。
今、ソフトバンクBBが力を入れているのは、ユーザー企業のワークスタイルを変革する製品・サービスの提案。iPadを中心とする端末と回線サービス、周辺機器などを組み合わせて提供するものだ。同社の営業担当者がiPadを携帯して、ワークスタイルがどのように変わるかを販社に説明している。今後は、製品単体で売るのではなく、「ソリューション」と銘打って、テーマごとに製品を組み合わせて販売することがさらに重要になってくる。山本統括部長は、システムの位置づけを「システムは営業担当者の案件獲得を補完するもの。すべてがシステムでできるという『まずシステムありき』の考え方ではなく、ビジネスの拡大につながる部分をきちんと変えていくことが重要だ」と語る。「ソリューション」をキーワードに考えると、テーマごとに検索して、そのテーマに適した製品を一括して購入できる仕組みなどを「IT-EXchange」に導入することもありそうだ。

Epilogue
新しい流通モデルの確立へ
今回はウェブEDIを中心に、ダイワボウ情報システム、シネックスインフォテック、大塚商会、ソフトバンクBBの4大ディストリビュータのシステム革新について取り上げた。
取材して感じたのは、各社のシステムが稼働を開始した2000年頃と比べて、ウェブEDIの位置づけが大きく変わっているということだ。稼働開始当初は、販社がウェブEDIを使うことで、ディストリビュータの営業担当者が事務処理などの業務を効率化できるようになることに重きを置いていた。しかし10年以上が経過した今、ウェブEDIによる業務効率化はもはやあたりまえで、代わりに営業担当者の本来業務である「営業」の価値を高めるマーケティングツールへと進化している。
進化の理由は、ユーザー企業のニーズが複雑になり、販社がディストリビュータに求める情報が多くなってきたことにある。ウェブEDIと基幹系システムの連携の動きも、販売データを中心にさまざまな販社の情報を集約して支援を強化しなければならないことの現れだ。
仮想化やクラウドサービスの台頭で商流が変わるとの見方がある。しかし一方ではハードやパッケージソフトなど、かたちあるもののニーズは依然として根強い。また仮想化にしろクラウドにしろ、きちんとした流通モデルをつくらなければ、思うように売れない。メーカーや販社の期待に応え、生き残りをかけた次の一手を導き出すために、ディストリビュータの存在意義は大きい。彼らのシステム革新で、新たな流通モデルが生まれようとしている。