「Local Giant」。外資系のIT企業は、日本のコンピュータメーカーをこう揶揄する。「確かに強いが、日本でしか強くない」ということだ。世界で存在感を示すことができないといわれる日本のコンピュータメーカーだが、主要メーカーは、海外事業に力を注ぎ、果敢に挑戦している。その基本戦略と、各メーカーが重点地域とするアジアでの新たな動きを紹介する。(取材・文/木村剛士)
海外市場の攻略は共通の戦略
総売上高に占める比率の目標を明確に 「グローバル」を合い言葉に 世界を代表するコンピュータメーカーといえば、米国のヒューレット・パッカード(HP)とデル、そして中国のレノボ。ITサービス会社といえば、米国のIBMとアクセンチュア。そう想像する人が少なくないだろう。確かに、全世界のコンピュータ産業で、売上高ランキング上位5位に日本企業は存在しない。
だが、日本のコンピュータメーカーも世界に進出しており、最近はとくに意欲的だ。日本のIT産業の市場規模は、ほぼ横ばいで推移する可能性が高い。競合他社から受注案件を奪うだけでは限界がみえており、海外に活路を求める動きに拍車をかけている。大手コンピュータメーカーに共通しているのは、海外事業の拡大を重点施策としていることだ。
例えば、NECだ。2010年2月に発表した、12年度(13年3月期)を最終年度とする3か年の中期経営計画「V2012」では、海外売上高比率を25%に引き上げる目標を示している。
実は、NECはこの5年間に海外の売り上げを大幅に落としている。5年前の06年度の海外売上高比率は26.1%だったが、昨年度は15.4%。金額でいえば、7343億円も減っている。下降線を辿り続ける状況を、「V2012」で食い止めて以前と同等の規模に戻そうとしているのだ。東日本大震災とタイの洪水で業績が低迷し、「V2012」で示した目標の達成はかなり難しいという印象を受けるが、「海外売上高比率の計画を取り下げたわけではない」と、NECの広報担当者は断言している。
日立製作所も挑戦的だ。IT関連の製品・サービスの開発・販売事業を手がける社内カンパニー「情報通信システム社」は、10年度(11年3月期)24%だった海外売上高比率を15年度に35%に引き上げることを計画している。また、富士通は、NECと日立の情報通信システム社よりも海外売上高比率が高く、グローバルカンパニーとして一歩先を行っているが、それでも強化する方針は同じ。昨年度35.1%だった海外売上高比率を、時期は明示しないものの、40%まで高めようとしている。
アジア市場に照準 NECは、世界を「EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)」「中華圏」「APAC(アジア・太平洋地域)」「北米」「中南米」の5地域に区分けして、各地域ごとの事業推進体制を敷いている。力を入れて伸ばそうとしているのは中南米。最も金額ボリュームが多い地域は、中華圏とAPACの合算値だ。海外でも実績が豊富なネットワーク構築・運用サービスと国内でも強化しているクラウド事業を伸ばす。ただ、サーバーやストレージといったハードウェアについて、海外では販売が伸び悩んでいるのがNECの弱点。パソコン事業におけるレノボとの資本・業務提携を、グローバルビジネスにどう生かすかが注目点だ。
富士通は、大きく「米国」「EMEA」「APAC」「中国」で世界をセグメントしており、「EMEA」で強いのが、富士通の特徴。全海外売上高のなかの53.2%をEMEAで稼ぐ(2010年度)。x86サーバー事業の中核会社をオランダに置いて、欧州を中心にサーバーの販売を伸ばしている。加えて、50年ほど前に英国に設置した100%出資子会社が手がけるITコンサルティングサービスとアウトソーシングサービスが政府機関に受け入れられ、安定顧客として抱えていることも大きい。強化地域は、中国市場だ。山本正已社長は「中国だけで今年度は1000億円を目指し、13年度にその2倍の2000億円にしたい」と強気。他の国よりもかなり高い成長率を見込んでいる。
一方、日立の情報通信システム社は、2011年11月に中期経営計画を発表し、15年度に海外売上高比率35%、売上高8000億円の到達を公言した。同時に発表した戦略は三つで、(1)ストレージを核とした「プラットフォームソリューション事業」(2)「コンサルティング事業」(3)運用管理サービスやクラウドなどの「統合ITサービス事業」だ。日立は、米国に日立データシステムズという子会社をもっており、北米でのストレージ販売が順調だ。それを強化しながら、伸びが見込めるクラウドサービスを製品、運用サービス、コンサルティングサービスと組み合わせて提供する。
ターゲットに置く地域は中国とインド、ブラジル。とくに中国では、現地企業とのアライアンスを積極的に進めることで、日本の中国法人だけでなく、現地の中国企業を開拓する考えだ。現地企業の買収や資本提携が目立つのは、この戦略に基づいてのことである。
中期的な視点で海外売上高比率にこだわる方針は各社に共通している。そして、アジアに焦点を合わせているのも同じだ。
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