《ERPベンダーの思惑》
【SAPジャパン】
SNSとERPの統合を強みに
豊富な機能とビジネスシナリオを用意
SAPは、ソーシャルの手法を取り入れたコラボレーション・ツールと位置づけるクラウドサービス「SAP StreamWork」を提供している。SAPジャパンの瀬尾直仁・ソリューション営業統括本部ビジネスアナリティクス営業開発部マネージャーは、「SNSをERPに統合できていないITベンダーが多く、コミュニケーションツールとしての利用にとどまっている。その点、SAPは一歩先を行っている」とアピールする。
例えば、ERPにログインした承認権限をもつ担当の管理職は、購買の承認申請に際して「Approve(承認)」「Reject(却下)」という慣れ親しんだ選択肢のほかに、「Collaborate(協力)」を画面上でクリックすることができる。「Collaborate」をクリックした場合、協力を仰ぐ従業員をリストアップし、「StreamWork」上で購買案件を検討するプロセスを踏む。
オンライン/オフラインの利用が可能で、一連のプロセスはすべて保存される。従来のように、電話で確認したりミーティングを開いたりなどの、プロセスが残りにくい作業は発生しない。
このほか、BIツールである「SAP BusinessObjects(BO)」による分析結果を、そのまま「StreamWork」に反映したり、SAPのパートナー企業のアプリケーションや企業内システムを「StreamWork」に連携したりできる。プロセスモデリングのコラボレーション機能は、ビジネスプロセスモデリング表記法のBusiness Process Modeling Notation(BPMN)に対応し、あらゆるBPMN対応のアプリケーションでも利用できるようになっている。
部門を横断した連携や巨大プロジェクトの進行で重宝しそうなのが、企業内の人脈を可視化する機能だ。人事情報をもとに、企業内のヒエラルキー(階層構造)に沿って従業員同士の関係を明らかにする。誰に協力を仰げばよいのか、一目瞭然となるわけだ。
このほか、チームの作業項目のリストを作成して優先順位を決める「Ranking(ランキング)」や、競合他社の強さ(Strengths)、弱さ(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の観点から総合的に分析する「SWOT Analysis(SWOT分析)」、チームにとって重要な質問・疑問への意見を収集する「Quick Poll(簡易アンケート)」などを基本機能として実装している。

スマートフォンでも利用できるコラボツール「StreamWork」
《ERPベンダーの思惑》
【日本インフォア・グローバル・ソリューションズ】
機能を一画面に集約
自社開発の社内ブログ機能を提供予定
「ERPのグローバル案件が激増している。地域最適から全体最適を目指す動きが活発化している。大きなチャレンジとなっているのが、組織の壁を越えたコラボレーションの推進だ」。日本インフォア・グローバル・ソリューションズの村上智社長は、こう説明する。解決の手段として、グローバル企業の間で導入が進んでいるのが企業内SNSである。
植木貴三・ビジネスコンサルティング本部執行役員本部長は、ソーシャル戦略のキーワードとして、「企業内コミュニケーションの円滑化」と「すぐれた操作性の実現」を挙げる。「バックオフィスのデータを分析してSNSに利用しようとしてもうまくいかない。『Chatter』などのSNSを通じて、“草の根型”のコミュニティを形成することに意味がある。先行して取り組んできたのが操作性の向上で、使いにくいERPから脱却し、すぐれたUIを追求している」。
日本インフォアは、2011年10月、新戦略となる「Infor10」を打ち出した。多彩な業界・業種特化型アプリケーションの統合と、コンシューマ製品レベルの使いやすさの実現を謳っている。
TwitterやFacebook、Googleなどと似たUI基盤「Infor10 ION Workspace」を採用。BIやタスク、アラート、SNS、イベント管理、ワークフローといった機能を一つの画面に集約して表示する。中核を成すミドルウェア「Infor10 ION Suite」によって、インフォアのアプリと他のアプリを統合できる。
2011年12月には、セールスフォースの「Force.com」上で構築した「InForce Everywhere」と「InForce Marketing Cloud」「InForce Ordering Cloud」を発表。「ERPとCRMの統合コストと時間を削減する」(村上社長)という狙いがある。三つのサービスのうち「InForce Everywhere」は、「Chatter」のソーシャルプロフィールやステータスアップデート、リアルタイムフィードなどの機能を通じて、データを広く共有できるようになるというものだ。
今年に入り、モバイル戦略に動きがあった。「Infor10 ION」上に構築したクラウドベースの独自モバイルプラットフォームである「Infor10 Motion」に加え、モバイルアプリケーションとして「Infor RoadWarrior」と「InforION ActivityDeck」を発表したのである。
「Road Warrior」はモバイル用CRMで、一方の「ActivityDeck」はユーザーがバックオフィスのシステムに接続したままの状態を維持して、リアルタイムにアラートを受信できるTwitterのような機能だ。
発売時期は未定だが、日本インフォアでは「自社開発の社内ブログ機能を『Workspace』の1コンポーネントとして提供する」(植木執行役員)計画があるという。

ソーシャルメディアの使い勝手を追求した「Infor10」のUI
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