《ERPベンダーの思惑》
【日本オラクル】
生産性の向上に効果を発揮
予算管理や人材管理で活用を広げる
オラクルは、今年6月、「Oracle Cloud」を発表した。「Oracle Cloud Platform Services」「Oracle Cloud ApplicationServices」「Oracle Cloud Social Services」で構成するクラウドサービスである。
このうち「Social Services」は、企業内SNSである「Oracle Social Network」のほか、SNSと企業内データソースからデータを集約してビジネス・アプリケーションに役立てる「Oracle Social Data Services」と、SNSを活用したマーケティング・キャンペーンの管理などができる「Oracle Social Marketing and Engagement Services」、マーケティング担当者がソーシャルメディアを分析できる「Oracle Social Intelligence Services」から成る。
「Oracle Social Network」は、JavaEEに対応したミドルウェア製品群「Oracle Fusion Middleware」のプラットフォーム製品「Oracle WebCenter」の1コンポーネント。SOA(サービス指向アーキテクチャ)やJavaを採用した業務アプリケーションスイート「Oracle Fusion Applications」と統合されており、基幹業務とコラボレーションの組み合わせによる業務プロセスを敷くことができる。
想定されているのが、予算管理やタレントマネジメントのような人材管理におけるSNSの利用だ。従業員のプロファイルに、「アクティビティおよび関心」「勤務可能性」「キャリア計画」「コネクション」「開発および成長」というタブを設けており、マネージャーは部下のアクティビティストリーム上に残されたコメントを確認できるのはもちろん、コンピテンス・ギャップ(強みと弱み)も容易に参照できる。
日本オラクルの末兼達彦本部長は、「ホワイトカラーの生産性向上に効果を発揮する」と語る。メールの代替手段としての企業内SNSの導入を通じて、業務を効率化できるという。

「Oracle Fusion Applications」の操作画面
《パートナーの視点》
【アクセンチュア】
「対話の活性化」にソーシャルの効用
R&Dやタレントマネジメントに有効
アクセンチュアの沼畑幸二・テクノロジーコンサルティング部イノベーション&アライアンス統括エグゼクティブ・パートナーは、ビジネスにおけるソーシャルの効用を、「対話の活性化」と表現する。現在、最も顕著にみられるのがCtoCの領域で、これからは、新製品の開発やタレントマネジメントなどの業務領域でも事例が増えてくるとみる。
例えば、クラウドソーシングによる社内外の関係者を巻き込んだ“ソーシャルR&D”の事例が、すでに海外でみられるという。納期や在庫確認の際には、メールや電話で社内の関係者に問い合わせるのではなく、SNSを活用することで顧客に対して即座に回答できるようになる。
こんな可能性もある。小売店の現場担当者がスマートデバイスを駆使することで、月末に入力していた売り上げに関する情報を、そのつど現場で入力。撮影した写真や吹き込んだ音声の自動認識の仕組みがあれば、現場の負担をさらに軽減する。Twitterの天気などに関するつぶやきをかけ合わせることで、「ERPの数字に意味をもたせることができる」(沼畑エグゼクティブ・パートナー)。
タレントマネジメントについては、沼畑エグゼクティブ・パートナーが自社の例を挙げてこう説明する。「当社では、ソーシャルを利用して従業員を評価するトライアルを始めた。具体的には、自身がもつナレッジをどれくらいの従業員が活用したのか、何人がフォロワーとして存在するのかといった影響力の度合いを評価につなげている」。
多くの場合、これまでの人事データベースは、過去のアーカイブでしかなかった。LinkedInを見ると、ユーザーが自らアップデートした最新情報が公開されている。こうした考え方を採用しようと、沼畑エグゼクティブ・パートナーはいう。
記者の眼
日本インフォアの植木執行役員は、「ROI(投資回収率)的にどう説明するか」と、悩みを吐露した。漠然とコミュニケーションの活発化、操作性のよさでは“弱い”。まず、ソーシャル活用の検討段階で、「ビジネスゴールを明確にすることが必要だ」と、アクセンチュアの沼畑エグゼクティブ・パートナーは指摘する。プロトタイプをつくって、トライ&エラーを繰り返す作業も重要だという。「ソーシャルERP」が、どのようにビジネスに直接貢献できるのか、シナリオを洗練させていくことが求められる。