異色の存在、「IT税理士ネットワーク」
クラウドによる差異化で生き残る
「IT税理士ネットワーク」という組織がある。30を数える会計事務所が、ITを活用する中小企業の業務改善・効率化・業績アップを支援するために毎月1回程度の勉強会・交流会を開催している。メンバーの情報交換のほか、活用事例やテンプレートの共有が目的だ。
事務局を務めるのは、会計事務所が母体で、相続対策・事業承継コンサルティングなどを手がけるフォルテッツァ。「Google Apps for Business」の販売代理店でもある。ITベンダーのIT経営ワークスやChatWork、タンデムワープが、クラウドサービスの提案やITの利活用を支援する。
会員には、Google Appsの2アカウントを付与されるほか、取次代理店になって導入サポート収入の30%のキックバック、各種セミナー・勉強会への参加などの特典が設けられている。
石川浩司代表取締役は、「会計事務所は、中小企業から上がってきた数字をもとに帳票を作成して『こうしないと利益は出ない』と指摘するが、具体的なコスト削減ノウハウは示唆してこなかった」と語る。こうした課題を解決する提案ツールの一つとしてGoogle Appsを位置づけている。フォルテッツァは、もともとGoogle Appsのユーザーで、自社ノウハウを会員同士で共有し、中小企業に提供することにしたという。
「IT税理士ネットワーク」が強みとしているのは経営者との深いつながりだ。山岸会計の山岸崇裕公認会計士・税理士・認定事業再生士は、「中小企業の社長には『いろいろ提案してくれる』と期待されている。ITシステム屋ではないので、売るという感覚はなく、『これをやったほうがよい』とアドバイスしている。そうすると、先生が言うのだからやってみようかな、となる」と話す。佐藤税理士事務所の佐藤昭一税理士AFPは、「“モノ売り”というのではなく、必要に応じてITツールを提案している。導入してもらえれば、事務所の処理負担も減る」という。
IT経営ワークスの本間卓哉代表取締役は、「中小企業では、個人ベースですでにクラウドが利用されている。だが、組織ベースでのIT教育の視点が欠けている。全社利用にはトップダウンが必要だ」とみている。中小企業経営者に強い影響力をもつ税理士であれば、背中を押しやすい。
山岸会計は、Google Apps以外にもクラウドベースのチャットツールであるChatWorkやSkypeを推奨している。「高松などの遠隔地の顧問先とは、Skypeで話したり、ChatWorkで情報を共有したりしている」(山岸公認会計士)。佐藤税理士事務所では、顧問先とGoogleドキュメント上で資料を共有することで、5営業日を迎える頃には月次の損益を把握したいと望む経営者のニーズに応えている。
石川浩司代表取締役は、山岸会計や佐藤税理士事務所のようにクラウドサービスを積極的に活用するのは、会計事務所業界のごく一部に過ぎないと認める。クラウドの活用に否定的な見方をする税理士も少なくないが、競争が激しさを増すなかでクラウドのメリットを享受しない手はない。100会員の獲得を目指して、グーグルとの共同セミナーを開催したり、地方にまで活動の幅を広げていきたいと考えている。
山岸公認会計士は、「会員同士でベストプラクティスを共有することが、顧問先向けのサービスの差異化につながる」と期待している。
(左から)IT経営ワークスの本間卓哉代表取締役、山岸会計の山岸崇裕公認会計士、佐藤税理士事務所の佐藤昭一税理士AFP、フォルテッツァの石川浩司代表取締役「情報資産の銀行」のパイプドビッツ
会計にとどまらないサービスを目指す
パイプドビッツは、2011年、ビジネスオンラインの事業のうち、会計クラウドサービス「ネットde 会計」と「ネットde 青色申告」事業を譲り受けた。全国商工会連合会の標準サービスに採用されたことで、多くの中小企業をユーザーとして抱えてきた実績がある。直販分の330ユーザーをビジネスオンラインから引き継いでいる。
現在、直販に加えて、商工会議所や会計事務所などの推奨によって顧客を拡大している。東京商工会議所の記帳指導ツールとして採用されており、導入数を伸ばしている。

パイプドビッツ
大橋恵子
事業部長補佐 大橋恵子・ネットde会計事業部事業部長補佐は、「中小企業は、自計化したほうが経営上は有利。クラウドであれば、データを共有しながらオンライン上で自計化支援の指導がしやすいから支持されているのではないか」とみる。
パイプドビッツは、「情報資産の銀行」を事業コンセプトとして、情報資産プラットフォーム事業を展開している。
中核製品の「SPIRAL」は、ウェブマーケティングに必要なデータベースを中心に、メールコンポーネントやウェブコンポーネント、ウェブガジェット、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)などで構成する。「ネットde 会計」と「ネットde 青色申告」は、「SPIRAL」に接続するサービスとして提供するイメージだ。
深井雄一郎副社長COOは、「ビジネスオンラインの会計クラウドと当社の情報資産プラットフォームとの接続が容易になる。自計化を目指す中小企業の伝票入力から決算までサポートする」と説明する。

パイプドビッツ
熊本剛
事業部長 具体的な連携イメージについては、「今まさに議論しているところだ。会計情報とオンライン上の情報の関係を紐づけることで資金繰りに役立てられるようなサービスを考えている」(金融・保険ソリューション事業部ネットde会計事業部の熊本剛事業部長)という。
すでに提供しているインターネットバンキング連携サービスが、一つのサービスイメージだという。これは、ジャパンネット銀行のビジネスアカウントをもつユーザーが、「ネットde会計」のサイトで同行の取引明細を確認できるサービス。今後は自動的に仕訳まで行うことができるように、機能を拡張する計画を明らかにしている。
[次のページ]