弥生(岡本浩一郎社長)が開発するクラウドサービス「弥生オンライン」が、ようやく姿を現す。7月2日に会計事務所パートナーである弥生PAP会員限定のグローズドベータ、8月初旬にPAP会員限定のオープンベータ、9月初旬に正式提供を開始することが明らかになった。

 振り返れば、2008年4月の“弥生 as a SaaS”宣言から、4年以上が経過している。当時は3年で事業の柱にすることを掲げていたから、開発は大幅に遅れたことになる。時系列で追うと、「Windows Azure」の採用が2010年2月で、2010年のクローズドベータの提供を経て、2011年に商用サービスの開始を目指していた。

 ITによる小規模法人・個人事業主の業務効率化の促進を目的とする日本マイクロソフトとの協業を挟んで、2010年11月にマイクロソフトカンファレンス2010でクローズドベータの開始を発表した。そのときのコンセプトは、「中小企業・個人事業主・起業家向けミニERP」だった。2010年12月の取材時点では、まず第一弾として「初心者向けの統合型サービス」を打ち出し、自計化率の向上に挑戦することを明らかにしていた。日報代わりに入力して、半自動的に会計事務所で仕訳ができる仕組みなどである。

 しかし、2010年末のクローズドベータでの評価を受け、2011年初頭にコンセプトを見直すことになった。ミニERPのコンセプトが、新規顧客層の開拓につながりにくいと判断したのだ。会計事務所のニーズが「『弥生会計』が使えない人でも使えるモノ」にあると捉え、方向を転換。新技術への対応に加えて、即戦力となるエンジニアの確保に苦労したこともあって、計画は大幅にずれ込んだ。

 岡本社長は、「『中小企業・個人事業主・起業家向けミニERP』というコンセプト自体は、既存ユーザーだけでなく新規ユーザーにも有効だ。引き続き開発に取り組む」と話す。ただ、弥生が「会計事務所のニーズ」とする「『弥生会計』が使えない人でも使えるモノ」と、どのように位置づけが異なるのか、不明な点が少なくない。会計アプリの利用(自計化)と会計事務所への丸投げという二つの選択肢の中間に位置する“半自計化”というコンセプト自体は、ミニERPでも謳っていた。

 もっとも、「弥生オンライン」が、ユーザーである事業者や会計事務所にメリットのある仕組みであるという主張には、説得力がある。事業者は、会計の知識いらずでビジネス上の記録を入力するだけで済む。一方で、会計事務所はデータを一から入力する必要がなく、経営アドバイスなどのより付加価値の高い業務に専念できる。

 なお、「弥生シリーズ」は、今秋に登場するとみられる新OS「Windows 8」にも対応する予定。ARM版の「Windows RT」に関しては検討中だという。弥生製品フルセットのMetroスタイルアプリ化ではなく、まずはサブセットのMetroスタイルアプリ化や一緒に利用できるMetroスタイルアプリの開発を構想している。(信澤健太)

弥生の岡本浩一郎社長