●【富士通マーケティングの場合】
クラウドサービスで校務を支援
教育の質向上を見据えたシステムも 
橋本英明部長 富士通マーケティング(FJM、生貝健二社長)は、小中学校や高校・大学を対象にビジネスを手がけており、昨年度(2013年3月期)の売り上げ成長率が前年度比で若干の減少だったという。これは、「大学の予算が非常に厳しい状況だったため」と、橋本英明・公共金融営業本部公共・金融ビジネス推進部長は打ち明ける。ただ、今年度は補正予算など一部の私立大学が予算を確保しているほか、「ニーズに対して柔軟に応えることができるクラウドサービスを積極的に提供していく」との方針を示している。
FJMは、小中学校向けに、カシオ計算機のウェブ型パッケージシステム「校務支援システム」をクラウド化し、FJMのサポートサービスを組み合わせて提供している。校務支援システムは、グループウェアをはじめ、成績、出欠、時間割などを管理できる機能を搭載している。直近では、福岡県苅田町教育委員会などが導入した。橋本部長は、「予算が厳しいながらも、IT化によって業務効率化を図って、教職員が児童や生徒と向き合える環境を整えたいというニーズが高まっている。そのような要望に応えている」という。
大学向けには、教育の質向上をコンセプトに自己分析型のポートフォリオシステムを提供しており、大阪府立大学が昨年度に採用。大学では、学生の学修自己評価データや成績情報など蓄積したデータを可視化して分析し、学生と教職員の双方で学期末に目標設定や振り返りを行うことでコミュニケーションの強化につながっているという。「グローバル化が進んでいるなかにあって、学生を社会に送り出すために彼らの自己実現能力をさらに高めていこうとする大学が増えている。そのため、ポートフォリオシステムは、ほかの大学にも横展開できる」としている。
文教市場向けビジネスは、公共・金融営業本部のなかで売上比率が15%程度を占めており、FJMにとって売り上げの増減を左右する重要なビジネスでもある。橋本部長は、「今年度は、売り上げが前年度よりも確実に増える」と自信をみせる。
●【日立ソリューションズの場合】
電子黒板の販売が好調
トータルでの教室IT化も 日立ソリューションズ(佐久間嘉一郎社長)では、電子黒板「StarBoard」の販売が好調で、国内での販売台数が今年3月の時点で累計2万台以上に達した。今後は、教室全体を網羅したIT・ネットワーク化のトータル的な提供に力を注ぐ。
「StarBoard」は、パソコンの画面を映写したボード上での書き込みやパソコンの操作が可能なインタラクティブ電子情報ボードだ。日本のほか、欧米など70か国以上で販売されており、ワールドワイドでの販売台数は24万台以上に達している。また、2012年10月には「StarBoard」とタブレット端末を使った小中高等学校向け協働学習支援ソリューション「StarBoard Student Tablet Software」の提供も開始した。マルチOSで、さまざまなタブレット端末に対応しているほか、教師が「StarBoard」に課題や問題を提示し、児童や生徒が手元のタブレット端末を使って回答するという授業を実現。このような利便性が「StarBoard」の強みだ。
文教市場について、星勝美・プラットフォームソリューション事業本部プロダクトソリューション事業部StarBoardソリューション本部ビジネス部長は、「今後も伸びる市場ではあるものの、電子黒板についてはコモディティ化が進んでいる」と捉えている。とはいえ、教室のIT化には電子黒板は欠かせないアイテムでもある。そこで、「教師など現場の要望やニーズに対応するため、製品を組み合わせたハイブリッド・インテグレーションによって普通教室全体のIT・ネットワーク化をトータルに支援していく」との方針を示している。「StarBoard」や「StarBoard Student Tablet Software」に加えて、学校内や複数の学校間などでデジタル教材や指導案などを共有できる「教育コンテンツ活用システム」などの提供で小・中・高等学校のIT化を促進していく。
記者の眼
政府の動きや調査会社の市場分析を踏まえると、文教市場は拡大するのは間違いないといえよう。ただ、ハードウェアとソフトウェア、サービスなどを含めて、いつ市場が拡大するのかについては、現段階では読めないというのが各社の見解だ。「2013年は文教市場の拡大が緩やかで、改めて土台をつくる年になる」とも判断している。
実は今回、紹介したSIer以外にも、多くのSIerやベンダーに取材を申し込んだが、断られるケースが多かった。「現段階では動きがない」というのが回答。それだけ、文教市場の拡大を予測するのは難しく、どのようなビジネスを手がけていくかの方向性を導き出すことも難しいということだ。
しかし、各社とも案件を獲得するために、着実に準備を進めている。そういう観点に立てば、市場が爆発的に拡大しそうな時期に、案件獲得に向けて激しい競争が繰り広げられる可能性があることがよくわかる。