総務省は、6月13日、「行政事業レビュー（省版事業仕分け）」を開き、「フューチャースクール推進事業」を「廃止」と判定した。また一つ、IT導入を推進する政策が消滅する。

　「行政事業レビュー」は、各省が自らの事業を検証して、ムダな事業を縮小または廃止し、費用を削減する取り組み。省内担当者が、各事業の目的や推進方法、効果などを調べ、継続か縮小・廃止かを決める。「事業仕分け」の省版である。今回、「フューチャースクール推進事業」がこの対象になった。

　「フューチャースクール推進事業」は、タブレット端末や電子黒板など、先進のIT機器を特定の学校に導入して実証実験を行い、利用価値を検証するもの。2010年度～13年度の4か年計画で、10年度には小学校10校、11年度は中学校8校と特別支援学校2校を加え、今年度は対象学校を追加せずに実験を継続していた。予算額は、10年度が10億100万円、11年度が10億6500万円、そして今年度は11億円。最終年度には、各IT機器を効率的に利用するためのガイドラインを作成して公開するはずだった。

　総務省は、廃止という結論を出した理由について「文部科学省が主導的な役割を果たすべき。総務省が主導すると、ハードの整備が優先されてしまう」と説明した。

　この言葉、どこか責任逃れのような気がする。「フューチャースクール推進事業」は、もともと計画段階から文科省との連携を謳っていた。形式だけのものかもしれないが、両省の副大臣を主催者にした「ICTを活用した先導的な教育の実証研究に関する協議会」も開いていた。総務省が教育のことについては門外漢で、文科省がITインフラを熟知していないのは当然だろう。だからこそ、総務省と文科省が役割を分担し、共同で事業を推進することに意味があったはずだ。

　行政レビューシートには、こうも書かれている。「文科省が来年あたりからモデル的な事業をやり、その事業においては総務省で対象としている10校を必ず対象とするとのことなので、文部科学省と連絡をとり、文部科学省が実施する事業において、現場の影響が最小限になるような努力はするべきである」。

　「来年あたりから」「モデル的な事業」「するとのことなので」など、どこか人任せで不透明、責任逃れのような印象を受ける言葉の数々。お隣の韓国では教育分野のIT活用が進んでいる。日本はますます立ち遅れるのではないか。省庁同士の連携不足や、「省庁間の縦割り構造が弊害になっている」（総務省職員）という理由でIT導入の促進策が雲散霧消するような状況は、断じてあってはならない。（木村剛士）