2014年、ユーザー企業のIT投資が活発化し、メーカーやSIerなどITベンダーの多くが収益増となった。IT市場に明るい兆しがみえているということだが、継続して光は差すのだろうか。有力なITベンダー各社のトップに、2014年を踏まえてIT市場や投資が活発な業種など2015年を占ってもらうとともに、市場の動きを見据えながら自社の業績がどうなっていくのか、海外ビジネスへの意欲、クラウドなど新トレンドに関するビジネスの進捗具合などについてアンケート調査を行った。2015年は、どのような年になるのか──。(構成/佐相彰彦)
回答いただいたITベンダー
アイティフォー、ITホールディングス、アイネット、内田洋行、SRAホールディングス、エス・アンド・アイ、NECソリューションイノベータ、NECネクサソリューションズ、NECネッツエスアイ、NECフィールディング、NSD、NTTコムウェア、NTTソフトウェア、NTTデータ、応研、OSK、オージス総研、大塚商会、オービックビジネスコンサルタント、兼松エレクトロニクス、関電システムソリューションズ、京セラコミュニケーションシステム、コア、CAC Holdings、JFEシステムズ、JBCCホールディングス、シネックスインフォテック、ソフトクリエイトホールディングス、ソフトバンク コマース&サービス、ダイワボウ情報システム、都築電気、TMIソリューションズ、TKC、DTS、TDCソフトウェアエンジニアリング、電通国際情報サービス、東芝ITサービス、東芝情報機器、東芝ソリューション、日興通信、日商エレクトロニクス、ニッセイコム、日本事務器、日本オフィス・システム、日本情報通信、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ、日本電子計算、ネットワールド、ネットワンパートナーズ、野村総合研究所、ピー・シー・エー、日立システムズ、富士ソフト、富士通エフ・アイ・ピー、富士通エフサス、富士通システムズ・イースト、富士通マーケティング、三井情報、三菱総研DCS、ミロク情報サービス、弥生、ユニアデックス、理経、菱洋エレクトロ(計64社、五十音順)IT市場の動向
伸びる/伸びない分野の二極化が進む
トータルでは1ケタ成長が妥当
成熟したといわれて久しいIT市場。オンプレミス型システムへのリプレース需要は、ますます減っていくとの見方が強い。そのため、サーバーなどのハードウェアを中心とするビジネスは厳しさを増しそうだが、一方でクラウドなどサービスが伸びるとする回答が多かった。
2015年は、サービスを中心とした伸びる分野とハードを中心とした伸びない分野の二極化がさらに進むだろう。また、ハードでもスマートフォンやタブレット端末などスマートデバイスを業務で活用するケースが多くなってくるという回答もあった。このような状況から、トータルでは例年と同様に、市場全体は1ケタ前半の成長が妥当というのが各社の見解だ。また、サービスの時代が到来しているとはいえ、SMB(中堅・中小企業)がクラウドを導入するのはまだ先と予測して、2015年は厳しい状況になるのではないかとみる分析もあった。
ITベンダー各社の業績
自社業績は市場の伸び以上を目指す
サーバーリプレース時の提案がカギ
ITベンダー各社に自社の業績見通しについて聞いたところ、明るい兆しがみえているが楽観視はできないとの考えから、市場の伸びと同様に1ケタ成長が妥当という回答が多かった。
一方、2015年は、マイクロソフトのサーバーOS「Windows Server 2003」のサポート終了に伴って、サーバーを中心にシステムリプレース需要が出てくる。そのような需要に対して、仮想化環境の整備やパブリッククラウドとの連携など、単にサーバーOSとハードのリプレースを提案するのではない展開でビジネス拡大を図ろうとする動きがある。また、マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)や2020年の東京五輪開催に向けたインフラ整備を切り口とするビジネスチャンスもみえている。このような状況から、市場の伸び以上の成長を目指すという回答が、3割弱を占めた。
ユーザー企業のIT投資
金融・保険業の需要が旺盛
システム統合案件が相次ぐ
IT投資が活発な産業は、2014年と2015年ともに金融・保険業だ。2014年は、大型システムの再構築やシステム統合などの案件が多かった。この流れは、メガバンクや証券取引所、ネット銀行などで続く。金融・保険業を得意とするITベンダーは、2015年も商機と捉えてビジネス拡大を図っていく。
また、製造業や公共・教育機関でも需要を開拓できそうだ。この2産業は、例えば製造業であれば工場内のさまざまな機器がネットワークにつながるIoT(モノのインターネット)を視野に入れたシステム導入の検討段階に入ろうとしているなど、新しいビジネスが生まれそうな機運が高まっている。公共分野では、マイナンバー制度をはじめ、実証実験レベルではあるが、社会インフラ整備の観点からスマートシティ構想の取り組みが進もうとしている。
医療・介護に関しては、IT投資が活発になるとの回答は1割程度にとどまる。しかし、地域を包括したケアシステムや高齢者在宅医療など、地方を切り口としたビジネスが活性化すれば、IT投資が活発になる可能性は高い。
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