PCA
クラウドで新規ユーザーを取り込む
業務ソフト市場でのシェア追求

折登泰樹
専務 業務ソフトのマイナンバー対応そのものは差異化要因になりづらく、業務ソフトの新規ユーザー獲得にはつながらないというのが、多くのメーカーの見解だ。しかし、ピー・シー・エー(PCA)は例外といえる。マイナンバー制度のスタートを、業務ソフト市場でのシェア拡大の絶好のチャンスだと見込んでいるのだ。
その武器となるのが、SaaSの「PCAクラウド」だ。折登泰樹・専務取締役は、「オンプレミスの自社システム上でマイナンバーを保管、利用することのリスクを多くのユーザーは嫌っている。PCAクラウドの人事管理と給与はそうしたユーザーの支持を得て、非常に好調。当社はクラウドサービスプロバイダとして、セキュリティ、可用性、機密保持の対応でグローバルな基準に適合していることの証明である『SOC2』を取得しているが、情報漏洩に対する安心感という意味で、市場の高い評価をいただいている」と手応えを語る。もともとPCAクラウドは、4割以上の案件が他社ソフトからの乗り換えだが、マイナンバー対応を見据えて「PCA給与X クラウド」、「PCA人事管理X クラウド」を導入するユーザーも、同様に他社からの乗り換えが高い割合を占めるという。

田邨公伸
課長代理 保守契約をしているユーザーとPCAクラウドのユーザーが、無償で利用できる人事管理、給与計算ソフトのマイナンバー対応プログラムでは、マイナンバーの収集・管理機能もカバーしている。加えて、スマートフォンやタブレット端末を使ってより簡単かつセキュアにマイナンバーを収集する有償サービスもラインアップしていて、PCAクラウドと組み合わせて、企業側のリスクと負担をより低減できるサービスも準備しているといえそうだ。
一方、ユーザーのマイナンバー対応業務をサポートするためのサービスとしては、マイナンバーの取扱規程作成を支援するサービスも提供している。田邨公伸・戦略企画部プロダクトマーケティングセンター課長代理は、「誰でも簡単に取扱規程や社内業務フローの作成ができるように必要な書式や手引き書を揃えた」と説明するが、さらに特徴的なのは、ユーザーが自分で取扱規程を作成する「セルフ」プランだけでなく、PCAと提携する社会保険労務士などがそうした業務をサポートしてくれる「ヘルプ」プランもラインアップしていることだ。田邨課長代理は、「100人を超える社労士のネットワークをすでに構築している。いくらお客様のマイナンバー対応業務をサポートする商材を用意しても、とくに中小企業では、人が手伝わなければならないケースはかなり出てくるはず。士業とパートナーを結びつけ、そうしたお客様にもきちんとマイナンバー対応をしていただけるようにするのがPCAの役割」と話す。
ただし現状では、まだまだユーザーのマイナンバー対応への意識は低く、需要は今後数ヶ月で急激に高まるとみている。「結局は、マイナンバーの通知や、業務ソフトのマイナンバー対応プログラムの配布といった動きが現実になって、初めてお客様側のマイナンバー対応も本格化すると考えている」(折登専務)という。そこでPCAは、9月3日に、他社に先駆けていち早く「PCA給与X」、「PCA人事管理X」のマイナンバー対応プログラムの提供を開始した。また、ハードウェアトークンを利用してマイナンバーデータの電子割符化を実現した「PCAマイナンバー電子割符オプション」もリリース。田邨課長代理が、「業務ソフトに組み込んだのは、おそらく初めての試み」と話すように、業務ソフトの機能範囲内での差異化も図った。
現実のマイナンバー対応製品をいち早く世に出すことでユーザーの意識を喚起するとともに、PCAクラウドやマイナンバー関連ソリューションの製品力を前面に押し出し、他社に先行して案件を獲得し、業務ソフト市場でのシェア拡大につなげていきたい考えだ。
応研
収集・保管はセキュリティに強み
ストックの積み上げに期待

原野勇作
係長 応研も、OBCのマイナンバー収集・保管サービスと類似のサービスである「大臣マイナンバー収集・保管サービス」を、10月から提供する。セコムグループで情報通信事業を担っているセコムトラストシステムズと応研が業務提携して実現した新サービスで、セコムトラストシステムズの国内データセンターを活用する。マイナンバーの収集はクラウド上で完結し、集めたマイナンバーや本人確認資料などは、暗号化したうえで、データセンターの専用区域で厳重に保管するという。電子証明書によるクライアント認証、ワンタイムパスワード認証、通信とデータの暗号化、すべてのアクセスログの記録といったセキュリティ機能も備える。
原野勇作・東京本社首都圏第一支店システム営業係長は、「収集・保管系のサービスは、他社のものも含めてだいぶ市場に認知されてきた。当社のサービスは、セコムブランドによる万全なセキュリティが大きな訴求ポイントになると考えている。DCでは、専任のスタッフが関連業務を担当し、通常のインフラより厳格なルールで運用する。データを預かるというよりは守るというイメージのサービスで、分かりやすくメッセージを伝えていきたい」と、アドバンテージを強調する。
営業面では、新規顧客開拓のドアノックツールとしての効果とともに、ストックビジネスの規模拡大への貢献を期待しているという。「当初は100ID以上のお客様をメインターゲットだと考えていたが、社員数が30人前後のお客様でも検討してもらっているケースがみられる。ターゲットは想定以上に広い」(原野係長)と、市場のポテンシャルは大きいとみる。パートナー向けの教育コンテンツも早期に充実させ、浸透を図る。また将来的には、ストレスチェックの義務化に対応したサービスツールなどのリリースも検討しており、ストックビジネスのメニューを拡充していきたい考えだ。
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