日立製作所
ミッドレンジモデルを大幅に刷新

日立製作所
伊東隆介
部長 大規模システムを中心にストレージ関連の案件を獲得し、国内市場でトップを走る日立製作所。ハイエンドモデルの導入が一段落したという環境を踏まえて、新しい戦略を打ち出した。それは、中小規模システム案件の獲得増と、SMB(中堅・中小企業)の新規顧客開拓だ。今年4月、ストレージ機器ブランド「Hitachi Virtual Storage Platform(VSP)」でミッドレンジを大幅に刷新。ハイエンド向けのOSだった「Hitachi Storage Virtualization Operating System(SVOS)」をミッドレンジに搭載したのだ。伊東隆介・プロダクトビジネス本部プロダクトビジネス推進部部長は、「ハイエンドと同じ機能、同じ使い勝手を実現した」とアピールする。
今回の刷新では、「VSP G800」をはじめとして、「VSP G600」「VSP G400」「VSP G200」「VSP G100」と、企業やシステムの規模に合わせて5機種を用意。SVOSによって、異機種のストレージを一つのストレージとして統合する仮想化機能や、接続された外部ストレージをVSPミッドレンジの内蔵ディスクと同様に操作・管理ができるなど、統一的なデータ管理と業務無停止でのデータ移行を可能としている。共通のOSによって上位機種へのアップグレードも容易だ。
現在、G200とG400が売れているという。伊東部長は「下位機種によるスモールスタートで、徐々にVSPの導入を増やしてもらうという提案ができる」としており、他社製品からの買い替え、買い増しの促進によって、新規顧客の開拓を図る。ユーザーやシステム規模の裾野を広げることでトップシェアを堅持していく方針だ。
富士通
今は基幹系、「SDS」でコンテンツ系の需要増へ
富士通は、ストレージ機器ブランド「FUJITSU Storage ETERNUS」で、現在「ETERNUS DX」シリーズが好調だ。高野誠・サービス&システムビジネス推進本部システムプラットフォームビジネス統括部ストレージビジネス推進部部長は、「ユーザー企業が、基幹系ストレージとして導入している。金融機関や公共機関などで大型案件が多く、民需では従業員が1000人以上、売上高が1000億円以上の企業をユーザーとして獲得している」と自信をみせる。これらのユーザー企業を確保しつつ、次に狙っているのが、多くのクラウドサービス事業者を新規顧客として獲得することだ。そのため、パブリッククラウドサービス基盤となる「コンテンツ系ストレージ」の強化に力を入れている。

富士通の高野誠部長(左)と荒木純隆シニアディレクター 現在、提供しているコンテンツ系ストレージは「ETERUS CD10000」。28PB(ペタバイト)までスケールアウトできて容易なマイグレーションなど、抜群の拡張性と運用性によって、大容量のコンテンツを効率よくセキュアに保管することが可能だ。分散ストレージのOSS(オープンソースソフトウェア)「Ceph」の採用、Amazon S3互換のAPI提供、OpenStackストレージ「Swift」「Cinder」として使用可能など、クラウドサービス基盤との親和性を出している。荒木純隆・プラットフォーム技術本部プロダクトソリューション技術統括部シニアディレクターは、「コンテンツ系の領域では、SDS(ソフトウェア・ディファインド・ストレージ)中心の製品が脚光を浴びている」と捉えたうえで、「他社の動きも踏まえて、2020年以降、SDSの技術がHDS(ハードウェア・ディファインド・ストレージ)に近づいて、当たり前の世界になる」として、今後、製品・サービスの提供を強化していく。
EMCジャパン
ユーザー企業に「攻めのIT」を提供

EMCジャパン
大塚俊彦
社長 ハードウェアでサーバーをもたずにストレージ専業メーカーとして業界に名を馳せるEMCジャパンは、ストレージの観点から「攻めのIT」をユーザー企業に対して提案することによって、製品・サービスの提供拡大を図っている。
同社は、ヴイエムウェアなどグループ企業を含めると、仮想化を中心にソフトウェアの提供で存在感を高めている。大塚俊彦社長は、「EMCグループ連合で水平連携のソリューションが提供できる。(データを効率よくためる仕組みの)データレイクが注目を集めているなか、データをためて分析し、結果をビジネスロジックに反映するところまでを行い、データレイクを使ったサイクルを回すスピードが大きな価値にある。アジャイルでぐるぐる回す、そのすべてを『EMC Federation』で実現する」としている。
ストレージ機器の観点で力を入れていくのは、「オールフラッシュアレイ」という。「超高速化が求められているなか、今後2~3年でミッションクリティカル領域で、オールフラッシュアレイの採用が進む。他社を凌駕した製品・サービスを提供していく」との方針を示す。フラッシュアレイの分野では、海外のベンチャー企業を中心に新興メーカーの参入が相次ぎ、古巣の大手ストレージ機器メーカーを脅かす可能性があるとの見方が出ている。
大塚社長は、「ストレージ機器分野の一つをとってみても、さまざまなポートフォリオで勝負できる」としている。新興メーカーに限らず他社との競争にも勝つという意味合いだが、ストレージ専業メーカーのEMCジャパンとしては、新興メーカーと真っ向から勝負していく考えのようだ。
NEC
サーバーやクラウドをもつ強みを生かす

NEC
上原淳
シニアマネージャー サーバー「Express5800」シリーズを中心に全国に多くの販社が点在するNECでは、ストレージ機器のブランド「iStorage」でも販社を経由したビジネスが伸びている。上原淳・ITプラットフォーム事業部第八IT基盤統括部兼パートナーズプラットフォーム事業部(ストレージ販売促進)シニアマネージャーは、「四半期ごとに2ケタ成長で伸びている」と自信をみせている。
売上高の伸びをけん引している主力製品は、iStorage Mシリーズ。ストレージ機器のニーズとして、なくしてはいけないというデータ保護が当たり前となり、今では販社がバックアップを切り口にストレージ機器を提供する傾向が強い。さらに最近は、マイナンバー(社会保障・税番号)制度関連でデータの情報流出を防ぎたいというニーズも高まっている。そこで、NECは既存の人事・給与システムを短期間でセキュリティ強化するSMB向け「マイナンバー安心セット」の販売を、今年7月に開始した。そのなかで、iStorage Mシリーズを中心として、暗号化ディスクやディスク内のデータを完全消去できる専用ソフトウェアを組み合わせた「データ暗号化セット」を提供している。上原シニアマネージャーは、「提供開始から2か月程度とまだ日が浅いが、マイナンバーをキーワードに、ユーザー企業の関心は高い」とアピールする。
また、オンプレミスだけでなくクラウドサービスに対する関心も高まっていることから、「クラウドサービスも提供している強みを生かして、当社の製品・サービスでハイブリッドクラウド環境を整備できることを、販売パートナーに提案している」という。このような取り組みによって、売上高の2ケタ成長を維持していく方針だ。
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