中国・日系ITベンダー編
互聯網+が市場牽引
日系は戦略見直しを
中国のGDP成長率は7%を下回るが、IT市場は健在だ。中国工業和信息化部(工信部)によると、2015年1~10月の中国ソフトウェア・情報技術サービス市場の合計売上高は、前年同期比16.4%増の3兆4732億元。全体経済の成長減速に伴って成長率は落ちてきてはいるものの、依然として2ケタ成長を維持している。16年も10~15%程度の成長を続ける可能性が高い。
16年には「第13次5か年計画」がスタートし、中国政府が掲げる「互聯網+(インターネットプラス)」行動計画も本格的に始動する。これは、従来型産業とインターネットの融合によって、経済の構造転換や高度化を図るもの。中国政府は、経済成長にITの活用が不可欠だと認識しており、国家の重要戦略としているのだ。15年12月には、「国務院の『互聯網+』行動の積極推進に関する指導意見」が発表され、18年までの全体目標が明確化された。中国の企業は、政府の方針に足並みを揃えた戦略を講じるため、市場はインターネット化に大きく動き出す。すでに、中国のITベンダーは「互聯網+」を取り込んだ自社戦略を講じている。とくに伸びるのは、クラウドやIoT、ビッグデータなどの先端IT分野だ。実際、中国のIaaS市場でトップシェアのアリババグループは、クラウド事業の売上高が前年比倍増ペースで伸びている。ビッグデータソリューションの百分点集団など、新興企業も急増中だ。中国経済におけるIT企業の影響力は、さらに高まっていく。
ただし、中国に進出している日系IT企業のほとんどは、この中国ローカルマーケットにリーチできていない。それゆえに、16年は多くの不安要素を抱える年となる。円安元高や人件費高騰によって、対日オフショア開発の市場環境は厳しい。中国国内の日系企業数も頭打ちの状況であり、日系ビジネスも大きく伸びない。日系IT企業にとって16年は、中国事業の戦略見直しを図る年となりそうだ。