富士ソフト
既存設備の有効活用で導入を低コストに

砂岡克也
事業部長 先述したように、教育環境でのIT導入を阻害する要因の一つがコストだ。この解決策となり得る「低コスト」を売りとするのが富士ソフト(坂下智保社長)。同社は、文教市場向けビジネスの主力商材として総合教育ソリューション「みらいスクールステーション」を提案している。
みらいスクールステーションはもともと、09年のスクール・ニューディール構想で爆発的に普及したデジタルテレビの利用促進を目的に開発されたもので、「(すでに学校に敷設されている校内ネットワークもあわせて)既存設備を活用することにより、低コストで教育のIT化を図ることができる」(砂岡克也・プロダクト・サービス事業本部みらいスクール事業部事業部長)というわけだ。
みらいスクールステーションは、「メディアボックス」と呼ばれる機器がハブとなってサーバーと校内LANをつなぎ、メディアボックスとケーブルで接続したテレビやプロジェクターで、サーバーが蓄積・配信するデジタル教材(PDF・動画・音楽・デジタル教科書など)を視聴できる。タブレット端末との連携によってテレビを電子黒板のように使うことができる。また、教員と生徒のタブレット端末間でコンテンツを共有・確認でき、それをテレビ画面上に表示することも可能。ほかにも、カメラの映像を全校にライブ配信する校内放送や連絡事項、災害情報をモニタに表示する掲示板としての機能など、「授業だけの利用にとどまらない、さまざまな機能を搭載している」ことも特徴で、「いろいろな利用法があるということで興味をもってもらうことが多い」と、授業以外でも活用できることが好評のようだ。
みらいスクールステーションは製品の特性上、学校単位での導入が中心。砂岡事業部長は、「『電子黒板が学校に1台入っている』というようなのとはわけが違う」と自信をもつ。全国の小中高校、大学、特別支援学校まで幅広く、公立・私立問わずビジネスを展開し、現時点で約250校の導入実績があるという。「来年度(17年3月期)は単年で200校の導入を目指したい」と目標を掲げている。
日本事務器
「アクティブ・ラーニング」に商機あり

立沢研二
リーダー ここまで小・中学校、高校までを中心にみてきたが、大学向けビジネスはどうなっているのか。基幹業務の支援システムや図書館システムなど、大学向けを中心に文教市場向けビジネスを30年以上手がけてきた日本事務器(田中啓一社長)に話を聞くと、「アクティブ・ラーニング」に対するニーズが高まってきているという。
アクティブ・ラーニングの分野において、日本事務器が今とくに注力しているのがクラウド型ポートフォリオ・ストレージサービスの「Pholly(フォリー)」だ。Phollyは、教員や学生が、講義やレポートなどの資料を、容量無制限のクラウドストレージ上で管理できるサービス。PCやタブレット端末、スマートフォンからどこでも利用可能。講義前に資料を配布することで学生の予習を促したり、課題を出したりすることができるほか、レポートの提出・評価機能なども搭載している。現在はトライアル段階で、正式なサービス提供は4月を予定。今やほぼすべての大学生がスマートフォンをもっていることから、「ポートフォリオはこれからもっと必要とされていくのでは」と期待しているようすだ。そのほかにもE-Learningやタブレット端末レンタルなど、学生の能動的な学習を支援する多数のサービスを取り揃える。事業推進本部ヘルスケア・文教ソリューション事業推進部文教ソリューショングループの立沢研二リーダーによれば、大学教育が「講義からアクティブ・ラーニングへと移り変わってきている」といい、今後、新たに自社製品を開発し提供していくことも検討しているそうだ。

渡辺哲成
マネージャ 文教向けビジネス全体としては、少子化の影響があるとはしながらも、着実に伸びてきている。また、同社はこれまで大学向けを中心としてきたが、2年ほど前より中・高向けにも大学向けと同様のサービスの展開を始めている。とくに高校は大学の前段階ということもあり、「高校・大学間のハードルがなくなってきているのは確か」(同グループの渡辺哲成マネージャ)だと感触をつかんでいる。徐々にユーザーも増えてきており、大学向けとあわせて引き続き文教ビジネスに取り組んでいく方針だ。
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