日本マイクロソフト
勢いづくクラウドパートナー獲得の取り組み
四類型3500社のエコシステムを6月までに
●“売る”から“使ってもらう”にパートナーの力でシフト 近年、国内のクラウド市場でプレゼンスを急激に高めているのが日本マイクロソフトだ。グローバルでもその傾向は同様で、例えば米オラクルのラリー・エリソン会長兼CTOは米マイクロソフトについて、「IaaS、PaaS、SaaSのすべてのレイヤで競合する唯一のベンダー」と対抗心をのぞかせている。
日本マイクロソフトは、昨年7月に平野拓也社長が就任。2016年6月末までにクラウド関連の新規パートナーを1000社獲得し、クラウドパートナーを計3500社に拡大するという目標を掲げる。さらに1年後の17年6月末までに、法人向けビジネスにおけるクラウドの売上高を50%以上に引き上げる計画も示した。
平野拓也社長は、「クラウドのビジネスは“売る”ためにどうするかという考え方から脱却し、“使っていただく”ことに軸足を置く」と話す。パートナー戦略の責任者を務める高橋明宏・執行役常務ゼネラルビジネス担当はその理由を、「“売り”だけにフォーカスしてもお客様の満足度は向上しない」からだと説明する。そして、こうしたマイクロソフトのビジネスの変革を実現するためには、「導入、保守、サポートなど、それぞれのフェーズで高い専門性をもつパートナーの力が不可欠」とも考えているのだ。平野社長は、「100%間接販売でビジネスをやることはこれからも変わりはなく、パートナーがクラウドビジネスに移行しやすいようなパートナープログラムと支援体制をしっかり用意する。法人向けビジネスで当社が現在のポジションを築くことができたのは、パートナーと一緒に顔がみえるサポートを展開して、お客様の信頼を勝ち取ってきたから。クラウドでも、それこそが他社との差異化になる」と力を込める。実際に、ユーザーがどれだけクラウドを利用したかに応じて発生する新たなインセンティブモデルも打ち出している。
●マネージド、ISVの新規パートナー獲得を重視 今年度中に整備予定のクラウドパートナー3500社について、日本マイクロソフトは四つの類型に分けて整備計画の詳細を明らかにしている。その四つの類型が、「マネージドサービス」「ISV/IPサービス」「クラウドインテグレーション」「クラウドリセラー」だ(図参照)。内訳は、マネージドサービスが10%、ISV/IPサービスが15%、クラウドインテグレーションが15%、クラウドリセラーが60%程度になる見込みだが、パートナーによっては複数のカテゴリを同時にカバーすることになるので、数字はあくまでも目安だという。
それぞれの概要をおさらいすると、マネージドサービスは、主にマネージド・ホスティング系のビジネスを手がけるサービスプロバイダが分類され、「四つのカテゴリのなかで今、一番成長している」(高橋執行役常務)という。ISV/IPサービスは、いまさら説明するまでもないが、パッケージソフトなど、パートナー自身の知的財産をマイクロソフトのクラウドに乗せて展開するパートナーのカテゴリだ。
日本マイクロソフトは、この2種類のカテゴリを、当面のクラウドビジネスの成長を牽引する領域と位置づけており、新規パートナーの開拓にとくに力を入れていく。先行する競合クラウドサービスプロバイダの実績あるパートナーも積極的にリクルートし、エコシステムに取り込んでいく。(下記記事も参照)。
一方で、クラウドインテグレーションは、まさにクラウドのSIを担うパートナーのカテゴリだ。ただし、マイクロソフトは、クラウドとオンプレミスは二者択一ではなく、ハイブリッドでの運用こそ現実解となるケースが多いと考えている。そのため、既存のSIパートナーにも「オンプレミス、クラウドを問わず、お客様の状況に合わせて技術をインテグレーションし、提案を最適化でする」(高橋執行役常務)ことを期待している。
また、最後のパートナー区分であるクラウドリセラーは、3500社の半分以上を占めるカテゴリで、既存の再販パートナーをクラウドビジネスに取り込んでいくためのカテゴリといっていい。ただし、クラウドは単純に製品やサービスを再販するだけではビジネスが成立しづらいので、リセラーには、他のパートナーと連携する、もしくは独自に他カテゴリのスキルを身につけるなどして、顧客基盤を拡大したり、顧客との接点を増やす努力が求められる。日本マイクロソフトとしても、クラウドビジネスへのシフトを積極的に進めようという意欲の高い既存パートナーについては、パートナー同士のマッチングなども含め、積極的に支援していく意向を明確にしている。
クラウドビジネスのためのパートナープログラムとしては、パートナーが自社のサービスとマイクロソフトのクラウドサービスを組み合わせて再販できる「CSP(クラウドソリューションプロバイダ)プログラム」を昨夏に刷新した。「Office 365」に加えて、「Azure」や「Microsoft Dynamics CRM Online」などにも対象製品を広げた。既存の有力販社・SIerはすでにCSPとして活動し始めているほか、大手ディストリビュータもCSPプログラムのもと、クラウドディストリビュータとして動いており、彼らの二次店による拡販ルートも整えた。CSPプログラムは、新規のマネージドサービスパートナーやISV/IPサービスパートナー獲得の追い風にもなり得る。
今年2月には、パートナーとの協業により、IoTの市場創出・拡大を目指し、「IoTビジネス共創ラボ」も立ち上げた。日本マイクロソフトのエコシステム構築は、垂直、水平、さまざまな方向に広がりをみせている。
Win-Winのエコシステム形成が着実に
日本マイクロソフトは、AWSをはじめ、先行するクラウドサービスのパートナーを切り崩し、マイクロソフト陣営に取り込んでいく方針も示している。2月には、ビジュアルコミュニケーションサービスベンダーのブイキューブとクラウドビジネスで協業することを発表した。これを機に、ブイキューブの主力サービスである「V-CUBE」のクラウド基盤は、これまでの「Amazon Web Services(AWS)」から「Microsoft Azure」に移行する。昨年10月には、MDMの国内大手であるアイキューブドシステムも、同様に日本マイクロソフトとの協業に合意し、サービスインフラをAWSからAzureに移行した。
マイクロソフトにとっては、クラウドで実績のある魅力的なコンテンツを自社の基盤上に揃えることができるし、パートナーに対しては、マイクロソフトの顧客基盤を生かして、さらなるビジネスチャンスの拡大が可能なことを訴求しているのだ。
ブイキューブとの協業については、マイクロソフト自身が、V-CUBEと競合する製品をラインアップしているにもかかわらず協業に踏み切った点も注目すべきだ。競合する部分があっても、お互いを補完することによる顧客基盤の拡大効果のほうが大きいと判断したということだろう。マイクロソフトは、「Microsoft Azure」「Office 365」「Microsoft Dynamics CRM Online」といったキラーコンテンツを筆頭に幅広いクラウドサービスを揃えており、パートナーの商材とさまざまなかたちで組み合わせることができる。これがパートナーエコシステム拡大の追い風になっているといえそうだ。

協業を発表した日本マイクロソフトの樋口泰行会長(右)とブイキューブの間下直晃社長
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