SaaS/PaaSのリーダーの先進エコシステムは──?
セールスフォース・ドットコム
顧客のビジネス変革までパートナーと一緒に踏みこむ
大企業、グローバル企業への攻勢強める
●業種テンプレートではない新プログラム ここまで、オンプレミスからクラウドへのビジネスモデルの転換を図る大手ベンダー2社のパートナー戦略をみてきたが、クラウドネイティブな大手ベンダーとして、SaaS/PaaS市場のトップを走ってきたセールスフォース・ドットコム(SFDC)の動向もみてみよう。
SFDCのパートナー戦略における直近の最大のトピックは、業種別ソリューション開発のためのパートナープログラム「Salesforce Fullforce」を日本でも立ち上げたことだろう。ただし、ここでいう業種別ソリューション開発とは、「SaaSのテンプレートを開発して付加価値を乗せてもらうようなモデルとは次元が違う」(SFDCの手島主税・執行役員アライアンス本部副本部長)。確かに、SFDCにも、各種テンプレートなどをもとにした業種・業界特化型ソリューションを提供する既存パートナーはすでに数多く存在する。手島執行役員は、「SaaS、PaaS市場のトップベンダーであるSFDCだからこそ実現できる最先端のパートナーエコシステムがSalesforce Fullforceだ」と強調する。
具体的には、どういうことなのか。端的にいうと、Salesforce Fullforceは、“デジタル化”によるユーザー企業のビジネス変革そのものをパートナーとともに支援するプログラムといえる。産業分野を問わず事業環境はめまぐるしく変わり続けているが、そうした状況下でもユーザー企業の継続的な成長を実現するために、先端のIT活用を前提に、経営・事業戦略の立案から実行、ITシステムの整備まで、一気通貫で支援できるエコシステムの構築を目指した。手島執行役員は、「クラウドやモバイル、ソーシャル、ビッグデータなどの新しいテクノロジーによって、異業種間の融合や、UBERのような新興企業による既存産業の破壊といった大きな変化が促進され、顧客接点のあり方も変わり続けている。マスではなく、ワン・トゥ・ワンの顧客接点をつくり、個別の顧客の細かなニーズに応えるビジネスモデルにどうシフトしていくかが、すべての産業で共通の課題になってきている。お客様にこの課題を乗り越えて成功をつかんでいただくには、最新のITソリューションをどう活用するかという議論と一体で、ユーザーの新しいビジネスモデルの検討そのものを支援できるパートナーを揃えなければならない」と説明する。
●経営・事業戦略とITの融合を目指した 日本では、アクセンチュア、デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)、プライスウォーターハウスクーパース(PWC)、パソナテキーラの4社がSalesforce Fullforceのプログラムに参加している。アクセンチュアが保険、DTCが製造、PWCが不動産、パソナテキーラが文教と、各業界向けのSalesforce Fullforce認定ソリューションも整備済みだ。この認定ソリューションは、各パートナーが、SFDCのクラウドサービスをプラットフォームとして、業種特化の知見をもとにつくったテンプレートやSFDCのPaaS、さらには「AppExchange」上のSFDCパートナーソリューションなどを駆使して、新たな顧客接点創出のためのソリューションをスピーディに構築するものだ。
ただし、前述したとおり、Salesforce Fullforceの本質は、単に特定業種向けの新しいアプリを簡単につくることではない。Salesforce Fullforceパートナーは、各業界の知見を生かし、業界固有で発生する新しい顧客接点や法規制の変化などを踏まえて、ユーザー企業の新しいビジネスモデルの設計という最上流から支援する体制を整えている。課題設定をして、新ビジネスの全社的な戦略を策定し、組織やビジネスプロセスを構築して、それに合ったITシステムを開発・実装して運用するまでを、一体的にサポートするわけだ。さらにパートナーは、新ビジネスの稼働後も市場の変化や顧客の要求を常にキャッチし、事業戦略やITシステムに継続的な変更と修正をいち早く加えていく。Salesforce Fullforce認定ソリューションは、こうした経営のプロセス短縮に貢献するパーツの一つで、まさに「経営戦略や事業戦略とITの融合を目指した」(手島執行役員)のだという。
SFDCは、Salesforce Fullforceを、大企業、グローバル企業向けビジネスの成長に向けた核となる施策と位置づける。グローバルでは約2年半前にプログラムを立ち上げ、すでに43の認定ソリューションがある。国内のコンサルファームや大手SIerなどもSalesforce Fullforceパートナーに迎え入れることを積極的に模索しており、SFDC社内の関連するリソースも増強している。
IBMはコグニティブとクラウドに注力
これまで登場したベンダーと競合するケースが多い米IBMも、新しい時代のパートナー網構築を急いでいる。今年2月には、米オーランドで開いたパートナー向けイベント「PartnerWorld Leadership Conference(PWLC)2016」で、17年に施行する新しいパートナープログラムを発表した。
近年注力してきたCAMSS(クラウド、アナリティクス、モバイル、セキュリティ、ソーシャル)や、「IBM Watson」によるコグニティブ・コンピューティングといった領域で、パートナーがビジネスを伸ばすために必要なスキルを「コンピテンシー」として定義し、そのレベルに応じたインセンティブを設定することを明らかにした。
“コグニティブ”こそがIBMの差異化要因であることをあらためて鮮明にした感があり、新規パートナーにも既存パートナーにも、そのメリットの大きさをアピールし、新しい市場で勝てるエコシステムをつくりあげようとしている。

PWLC2016で新パートナープログラムを発表