FinTech、こんなサービス始まってます
目下、FinTech市場の立ち上げをリードしているfreeeとマネーフォワードを中心に、従来の法人向けITビジネスの枠を超えた“FinTech的施策”がすでに生まれてきている。
●オープンイノベーションで広がるAPI連携 オープンイノベーションは、ビジネスのデジタルトランスフォーメーションを志すユーザー、それを支える要素技術や先進的アプリケーション/サービスを開発・提供するベンチャー企業、そして両者をつなぎユーザーのデジタルトランスフォーメーション支援のプロデューサー的役割を果たす既存のITベンダーという三種類のプレイヤーから成り立つ。これはFinTechでも同じ構図だ。マネーフォワードFintech研究所の瀧俊雄所長は、FinTech領域で新しい価値をもつサービスを具現化する際に、「既存のITベンダー、とくにSIerが主導権を握るパターンが一番うまくいきやすい」と指摘する。
週刊BCN前号(1644号)の本コーナーでも紹介したとおり、国内SIerの最大手であるNTTデータは、オープンイノベーションによる新しいビジネスの創出に非常に積極的な既存ITベンダーの一社だ。同社は2014年にその司令塔を担う組織として「オープンイノベーション事業創発室」を立ち上げ、月1回のペースでユーザーやベンチャー企業を集めてフォーラムを開いているほか、半年に1回、ベンチャーを対象に「オープンイノベーションコンテスト」を開催している。これらがオープンイノベーションの商談の場として機能しているわけだ。
NTTデータがオープンイノベーションでビジネス開発に取り組むのはFinTechだけではないが、14年12月に開いた第1回のオープンイノベーションコンテストは、マネーフォワードが最優秀賞、freeeが優秀賞を獲得しており、近い将来のFinTechの盛り上がりを予感させる象徴的な顔ぶれだったといえそうだ。そしてNTTデータとマネーフォワード、freeeは、15年10月、具体的な協業を開始したことを発表した。NTTデータが金融機関向けに提供しているインターネットバンキングサービスと、クラウド会計サービスをはじめとするFinTechサービスを接続するAPI連携サービスを開発するというもので、クラウド会計や家計簿アプリの利用者は、インターネットバンキングのIDとパスワードをFinTechサービス側に事前登録しなくても金融機関取引データを自動で取得できるようになる(図参照)。

個人向けインターネットバンキングとの連携サービスは4月に提供を開始しているが、10月には法人向けインターネットバンキング向けの連携サービスもリリースする予定だ。また、同サービスは、マネーフォワードやfreeeの会計ソフトだけでなく、弥生やオービックビジネスコンサルタントとも順次連携を開始する。オープンイノベーションの成果を水平展開して、FinTech市場の拡大に貢献する取り組みといえそうだ。
会計ソフトからのオンライン振り込みも
freeeは、住信SBIネット銀行と共同で、振り込み手続きにおけるインターネットバンキングとクラウド会計の直接連携も検討し始めている。両社はすでに入出金明細取り込みでのAPI連携は実現しているが、さらに一歩踏み込み、インターネットバンキングへの振り込み手続きの自動化も目指す。
これについて同社は、「振込手続きについては従来の参照系の連携とは異なり資金移動を伴う連携となるので、リリースまでにはさまざまな角度からの検証が必要となるが、ユーザーの実際の金融体験をよりスムーズなものに変えていけるよう取り組んでいく」としている。
[次のページ]