ジェイ・エス・エス IoTを意識したビジネスで拡大
流通と医療、金融機関向けに、システム構築やアウトソーシング/BPOなどを提供するジェイ・エス・エスは、既存のビジネスを継続しながらIoTを視野に入れた取り組みも進めている。

杉本昌啓
社長 最近では、センサを使った積雪の計量、無線を使った水道の検針などをソリューション化。「まだ案件数は微々たるもの」と杉本昌啓社長は説明するが、新しい製品・サービスの創造によるビジネス領域の幅を広げることにつながっているようだ。
既存のビジネス領域である流通でも、セルフレジを切り口としたシステム構築をした実績がある。金沢周辺の流通業を取り巻く環境は、大型の駐車場を完備した店舗に加えて駅前に小規模な店舗を構えて、周辺に勤務する会社員や観光客などの来店を促す傾向が高まっている。相次いで、出店が続いた結果、スタッフの採用が追いつかないほか、業務効率化やコスト削減なども踏まえてセルフレジの導入が進んでいる。ジェイ・エス・エスでは、そのような状況を捉えて、製品・サービスを提供している。
同社は、金沢と東京の2本社体制を敷いており、金沢では直接ユーザー企業を獲得し、東京など首都圏でパートナーの富士通などを経由してユーザー企業に対してシステムを構築している。「新幹線が開通したことで、東京が近くなった」ということで、東京での案件増に力を入れる。それを、金沢の既存顧客に対する提案強化につなげて、さらにビジネス拡大を図る。
システムサポート 新しいアライアンスに注力

小清水良次
社長 金沢を本拠地に全国展開しているシステムサポートでは、IT業界以外のユーザー企業とのアライアンスが進んでいる。小清水良次社長は、「ユーザー企業が優秀なシステム担当者を配置しているから」と捉えている。
同社は、ユーザー企業に対するシステム構築を手がけていることに加えて、大手ITメーカーなどのニアショア拠点としても機能している。「最近では、ユーザー企業が自前でシステムを開発するためにニアショアを依頼してくるケースが出てきた」という。金融機関が企業に融資するだけでなく、企業を成長へと導き出すためにIT化を促すという傾向が高まり、システムサポートにシステム構築の話をもちかけてくる。
このような状況が出ているのは、「声をかけやすいからではないか」と分析している。独立系SIerとして特定のメーカー色がなく、さまざまな製品・サービスを提供。ユーザー企業からは、安心してシステムが導入できるとの評価も高い。ユーザー企業と単なるシステムの構築側と導入側という関係だけではないパートナーシップを組んでいるのだ。
IoT関連でも、ユーザー企業とのパートナーシップが増えつつある。「金沢は製造業が多く、IoTに興味を示す企業が多い」とのことだ。迅速性を求めて、クラウドを導入することも多くなったという。さまざまな角度で堅調にビジネスが伸びていることから、売り上げは2ケタ成長が続いている。
「北陸テクノフェア」を開催 注目は「AI」「VR」
10月20~21日の2日間、福井県で「北陸技術交流テクノフェア 2016」が開催された。機械・精密、化学、鉄鋼・非鉄金属、繊維、情報通信の企業、大学、関連団体など170以上が出展。約1万4000人の来場者があった。

活況を呈していた「北陸テクノフェア」
製造業の工場に適したハードウェア、業務ソフトなど一般オフィス向けの製品・サービスを展示するブースがあったほか、とくに注目を集めていたのが、人間の暮らしをサポートして生活スタイルに変革をもたらす最新の製品・技術にスポットをあてた「特別展」。「AI」や「VR」をテーマに企業が自社の製品・サービスを披露した。

ベンチャー企業が分身ロボットを披露
「AI」では、ベンチャー企業が「分身ロボット」を披露。リモートプレゼンス技術を使って遠隔コミュニケーションの実現を訴えていた。「AR」では、建築CADの福井コンピュータアーキテクトがバーチャル空間体感システムの「ARCCHITREND VR」を展示。デモを体験する来場者で賑わっていた。北陸最大規模の総合技術展示会は、今年で27回を迎えた。ものづくりを支える基盤技術や最先端の技術動向を紹介したイベントは盛況だった。

バーチャル住宅展示場を披露していた
福井コンピュータアーキテクトのブースは賑わっていた
記者の眼
金沢のITベンダーを取材してわかったのは、特定業界に絞ったビジネスや特化した製品・サービスなど、各社とも他社には真似できない取り組みでビジネスを成長させようとしている傾向が高いということだ。ニッチなトップ企業が多いだけに、ITベンダーも他社との差異化を図ることに長けているということだろう。また、市内の盛り上がりとともに浮上しているIT関連のプロジェクトに参加することで“金沢発”の新しい動きも出ている。
石川県では、ものづくりを支援する「いしかわ産業化資源活用推進ファンド」を設けている。ファンド規模は300億円。このファンドが使える可能性があることも県内のITベンダーにとっては、ビジネスチャンスにつながるといえそうだ。