Analysis 新規ビジネス着手の「キーワード」「連携」「特化型」などで差異化 「IoE」領域でのビジネス着手も
各ITベンダーによって着手する新規ビジネスはさまざまだが、ユーザー企業のニーズがますます多様化しているため、「個社」にフォーカスした取り組みも増えている。また、細かいニーズへの対応が発展して、業界をはじめとした「特化型」のソリューション創造に力を注いで他社との差異化を図っている。「IoT」にとどまらず「IoE」を視野に入れる動きも出始めた。ここでは、回答のなかから新規ビジネスを手がけるうえでのキーワードを紹介する。
●相互連携
「第2のプラットフォーム」という伝統的なITインフラと結びつくかたちで、「クラウド」「モビリティ」「物理・情報」でのセキュリティ統合が進み、そこにビジネスチャンスがある。ユーザー企業のさまざまな問題を解決するためには、一つのソリューションで対応できなくなっており、複数のソリューションを連携させることが、問題を解決することにつながる。
●デジタライゼーション
IoTの進化によって、商品やサービス、企画・開発・製造工程や販売、流通やマーケティング、さらには消費者の体験、バリューチェーンなど、さまざまな場面でデジタルを適用するデジタライゼーションが重要になってくる。そのため、ITを活用して事業部門の収益性を高めていく。IT適用にあたって、事業部門とのギャップがあれば埋めていくような動きも展開していく。
●医療特化
医療機関のIT化が遅れているため、一般企業の健康経営に貢献するサービスとして遠隔健康支援サービスを提供していくことが重要。加えて、医療機関や在宅の情報連携モデルを展開して地域包括ケアを支援する地域医療連携サービスを推進していく。
●IoE
「モノ」であったり「ヒト」であったり、さまざまなものがつながる世界が到来しつつあることから、そのような時代に対応していかなければならない。「IoE(Internet of Everything)」を意識してビジネスを手がけていくことが重要となる。
●クライアント端末
PCのコモディティ化が叫ばれて久しいことを踏まえ、今後はモバイルやクラウドを切り口としたデバイスの販売に注力する。複数のデバイスが連携することを求める需要を見極めながら、パートナー企業とともに新しいビジネスを模索して切り開いていくことが必要となる。
●VC出資
最先端技術を活用したソリューションを提供していくためには、スタートアップに出資することが近道になるといえる。国内外のAI/ロボティクス関連の製品・サービスを開発する企業に出資・業務提携を進めている。
記者の眼
『週刊BCN』では、毎年、ITベンダー各社のトップに取材している。新年の抱負と各社にとってのキーワードを聞き、恒例企画の「年頭所感」を掲載している。本特集は、その取材でインタビューしたことやアンケートをもとにしたものである。毎年、実施している企画であることから、IT市場の動向が1年ごとに定点で把握できるものとなっている。
2016年は、自治体情報システム強靭性向上モデルをはじめ、インバウンドに対応するためのユーザー企業のシステムリプレースやクラウドへの移行、サイバー攻撃を中心にランサムウェア対策や内部情報漏えい対策などセキュリティにニーズがあった。「IoT」の広がりによる新システムの導入増やクライアント端末の需要増などもあったといえる。「AI」や「ビッグデータ」も、徐々にではあるが、実ビジネスになりつつある状況にある。
17年は、収益増に向けて各ITベンダーがどのような策を講じるのか。新ビジネスの創造が叫ばれる時代だけに、展開に期待がかかる。