Dell EMC
“日本らしい枠”を超えた領域にチャンス
Dell EMC
ランブックポタ・ジェイ
執行役員
エンタープライズグループ
GCCS営業本部本部長
Dell EMCのランブックポタ・ジェイ執行役員は、1987年に来日してNECに就職。その後、外資系に転職してシンガポールや日本で勤務し、2007年に旧デル(現Dell EMC)に入社している。スリランカ出身で日本の滞在は通算およそ20年。初めて日本にきたときは、まさにバブル絶頂期で、モダンなNEC本社ビル「NECスーパータワー」も竣工し、通信を中心に時代の最先端を行っていたときだ。DellやEMCの名前もほとんど知られていない時代、「交換機をはじめとするNECの通信技術は、圧倒的に進んでいて、目にするものすべてが新しかった」と話す。
それから四半世紀がたち、IT業界のプレーヤーは大きく様変わりした。米国や成長国のベンダーが次々と台頭し、日本のベンダーは相対的に目立たなくなった。ジェイ執行役員は、「日本の会社は確固とした業務プロセスができあがっており、そういう意味では組織の柔軟さに欠けるかもしれないが、個人的にはそれはそれで日本らしくていいと思う」。ただ、一方でその「“日本らしい枠”を超えた領域をもっと増やしていくことが、これからもっと大切になる」と指摘している。
具体的には、もっと海外での勤務経験を増やしたり、外資系の人材を受け入れたりと、「既存の枠を超えたところに成長のチャンスが隠れている」と話す。
エクイニクス・ジャパン
「巧遅は拙速に如かず」が欧米ITの傾向
エクイニクス・ジャパン
アリソン・イアン
グローバル
アカウントマネージャー
世界規模でデータセンター(DC)事業を手がけるエクイニクスで、複数の国や地域で同社DCを利用しているグローバル顧客を担当するアリソン・イアン・グローバルアカウントマネージャー。英国出身のイアンマネージャーは、日本の文科省などが手がける青年交流「JETプログラム」を利用して1991年に初来日。以来、日英を行き来しながら通算22年、日本に滞在している。IT業界に足を踏み入れてから17年、エクイニクスには6年前の2011年に入社した。
イアンマネージャーが日本と西洋のITビジネスの最も違うところは「巧遅は拙速に如かず」の考えだという。日本は細部にこだわり、完成度を追求する傾向が強いのに対して、西洋はスピードやダイナミズムを重視する。「そのダイナミズムの最たるものが米シリコンバレーのIT企業群だ」と話す。
ただ、イアンマネージャーは、顧客との関係よりもダイナミックさを重視するのは、「一概によいとは思わない」とも指摘している。「日本的な顧客とのロングタームリレーションシップ(長期的で良好な関係)と、西洋のダイナミックさ、スピード感のバランスが大切」であり、両方を兼ね備えた企業が、本当の意味で勝ち残ると話している。
日本はセキュリティ対策もオカシイ!?
●中小企業の当事者意識は十分ではない
エフセキュア
キース・マーティン
カントリーマネージャ
日本代表
米国の出身でエフセキュア日本法人のカントリーマネージャを務めるキース・マーティン日本代表は、「大手企業では以前からセキュリティ対策が進んでいるが、中小企業は遅れている」と語る。相次ぐ情報漏えい事故などを背景に、企業のセキュリティへの意識も全般的に高まっており、国もサイバーセキュリティ対策が推進している。しかし、中小企業の当事者意識はまだ十分ではないという。
エフセキュア
アンッティ・トゥオミ
サイバーセキュリティリサーチ
シニアセキュリティコンサルタント
フィンランド出身のサイバーセキュリティリサーチシニアセキュリティコンサルタントのアンッティ・トゥオミ氏によると、欧米の企業では「自社内にセキュリティを担うITチームをもっていることが多い」と話す。実際に、情報処理推進機構(IPA)が4月13日に明らかにした、従業員300人以上の企業を対象とする調査によると、インシデント対応を担当するCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の設置状況は、米国が90.1%、欧州が78%であるのに対し、日本は66.8%と低い値を示している。
また、自社でITチームを擁することができない場合にはマネージドサービスを利用することもあるというが、「その場合でも、欧米では自社にCISO(最高情報セキュリティ責任者)を置くのが普通」(トゥオミ氏)。これに関しても、先述したIPAの調査で、専任/兼任のCISOの任命率が米国では95.2%、欧州でも84.6%である一方、日本では62.6%と、日本の任命率の低さが目立つ。日本のIT人材、セキュリティ人材不足も影響しており、一筋縄ではいかない側面もあるが、セキュリティ意識を経営層まで浸透させ、人材育成に努めていくことが求められている。
日本で起業した外国人
●IT企業は地方に行くべき
使えるねっと
ジェイソン・フリッシュ
代表取締役社長CEO
「地方には、すばらしい環境がある。それを活用しないのはもったいない」と語るのは、長野市に本社を置く使えるねっとの創業者、ジェイソン・フリッシュ代表取締役社長CEO。オーストラリアの出身である。同社は、レンタルサーバー事業を中心にビジネスを展開している。
「IT産業は、回線さえあれば対応できる業務が多く、土地や人件費が高い首都圏にオフィスがなくてもいい。米国では各地域に主要なITベンダーの本社がある」と、フリッシュCEOは指摘する。
日本は国策として打ち出している地方創生と働き方改革の一環として、テレワークやサテライトオフィスの活用を推奨している。そのためのソリューションも多く提供されているが、ITベンダーは提供側の立ち位置だけで、自ら本社を地方に移すようなことはしない。働き方改革を謳うのであれば、自らが実践することも必要なのかもしれない。
フリッシュCEOはまた、地域のIT産業について次の問題点を指摘する。「地域の大手SIerなどは、自治体に頼りすぎている面がある。それでは新しい発想ができない」。公共事業型では、大きな発展が望めないというわけだ。
●欧米との差は縮まっている
ファイルフォース
アラム・サルキシャン
代表取締役
「ここ数年は、欧米との差は縮まっていると感じている」と語るのは、ファイルフォースのアラム・サルキシャン代表取締役。地中海とカスピ海の間に位置するアルメニアの出身である。サルキシャン代表取締役は、ファイルフォースの創業メンバーの一人。同社は、日本企業の組織に最適化したクラウドストレージサービスの提供を中心に事業を展開している。
IT産業は米国を中心に発展してきたことから、サルキシャン代表取締役は常に米国の情報収集に注力してきたという。「いまもイノベーションは、米国が中心。英語で情報を収集できないエンジニアは乗り遅れていくという状況は、変わっていない」。
とはいえ、IT活用の発想については、冒頭の通り、欧米との差が縮まっているとのことである。「米国ではITを経営資源として捉えているが、日本ではITがコストだった。また、コスト削減や効率化の手段として考えられてもきた。日本と米国の違いは、そこが一番大きかった」(サルキシャン代表取締役)。ようやく最近では、コスト削減の発想ではなく、ビジネスの競争力をどう強化するかといった発想で取り組む企業が増えたという。
ここが変だよ日本の働き方
“オフィス中心型”に驚きの声 在社時間と成果は必ずしも一致しない
日本で勤務する外国人からは、日本のIT業界の「働き方」ついて、驚きの声が多く聞かれた。SAPジャパンのワード常務執行役員は、「オフィスでの勤務時間が評価に結びつきやすい“オフィス中心型”の働き方に驚いた。欧州は“何時間オフィスにいるか”ではなく“プロジェクトの成否”の評価を重視する」と話す。日本マイクロソフトのカストロ執行役員常務も、「“オフィスで仕事をする”ことと“正しい仕事をする”ことは、必ずしも一致しない。ITをもっと活用すれば、オフィスの外にどんどん出て行くこともできる」と指摘している。
欧州のIT業界では、客先訪問や出張、育児/介護などさまざまな理由で「週何回かしかオフィスに戻らないことも珍しくなく、繁忙期には週1回くらいしかオフィスに立ち寄れなかった」とワード常務執行役員は振り返る。ただ、同時に「純粋に働き方の違いであり、どちらがどうという話ではない」とも付け加えた。
とはいえ、働き方があまりにも違いすぎると、西洋式で育った人材を獲得が難しくなり、結果的にダイバーシティ(多様化)しにくく、同質的な日本人の男性中心の組織になりがちである。ワード常務執行役員自身も日本法人としては、初めての“女性COO”であり、日本マイクロソフトのカストロ執行役員常務も「まだまだ日本は女性リーダーが少ない」印象を受ける。
カストロ執行役員常務が中南米地域を担当していたときは、二人の子どもを育てながら、「週3日くらい出張していた」というが、それでも毎晩7時にはSkypeのビデオ通話で宿題をみたり、本の読み聞かせをするなど、「1日たりとも母親としての仕事を休んだことはなかった」。ITをうまく使うことで、仕事と家庭のバランスをとることは、「以前よりも格段に容易になってきている」と話す。
西洋ではイノベーションとダイバーシティの関連性を重視する傾向が強く、同質的な組織からはイノベーションが起こりにくいとされる。人材は男女のバランスがよく、国籍や年齢も多様で、「さまざまな価値観をもった人が集まることでイノベーションを誘発しやすい環境づくり」(カストロ執行役員常務)が、日本のIT業界には一段と必要になっているといえそうだ。