多様化の時代である。次々と新しいテクノロジーが登場する一方で、根強いレガシーシステム。クラウド市場が成長を続ける一方で、盛り返すという雰囲気が出てきたオンプレミス市場。現時点の実力を考慮した活用方法がみえつつある人工知能(AI)。こうした動向を本紙はどのように伝えてきたのか。2017年上半期のITトレンドを総括する。(取材・文/畔上文昭)
<新年号恒例>編集部考案のキーワード
週刊BCNでは、新年号で注目キーワードを紹介するのが恒例となっている。取り上げたのは「ランカクウェア」「攻撃型攻撃」「Pi nTech 」「B2 M」「会計投融資」「価値喪失型システム」「スマートサーバー」「アナログトランスフォーメーション「」I TOT 「」人ロ知能」。バズワードならぬ、「流行るはずワード」という編集部の造語ゆえ、当たらずといえども遠からずのレベルだが、正解に近かったキーワードで2017年上期を振り返ってみたい。
ランカクウェア
身代金要求型のウイルス「ランサムウェア」。犯罪史上、最もROI(投資回収率)の高い手法とされ、何かとセキュリティ市場を賑わせている。そのランサムウェアの進化形が、無差別に身代金を“乱獲”する「ランカクウェア」である。
6月19日号(Vol.1682)の特集
「まさにランカクウェア」
本紙で取り上げたのは、6月19日号(Vol.1682)の特集「まさにランカクウェア」。5月に世界で猛威を振るったランサムウェア「WannaCry」は、グローバルIPアドレスを使っている(インターネットに直接接続している)PCをターゲットにして感染し、そのPCを起点に他のPCへと次々と感染を広げていく。まさにランカクウェアである。
幸いなことに、日本ではWannaCryに感染するケースが少なかった。グローバルIPアドレスは、日本ではあまり使われていないことが主な要因である。また、WannaCryにはランサムウェアとしては不完全な部分が多く、犯人は身代金を獲得できていないとされ、乱獲とはいかなかったようだ。とはいえ、亜種が登場し、猛威を振るう可能性は大いにある。セキュリティ対策とバックアップ対策は、IT業界にとって重要な商材であり続ける。
Pin Tech
金融向けの「FinTech」を皮切りに、教育向けの「EdTech」、医療向けの「MediTech」、農業向けの「AgriTech」など、xTechが各業界向けのITソリューションの総称として使われる傾向にある。そして、よりニッチな業務に特化したテクノロジー「PinTech」(ピンポイントのテクノロジー)が登場すると紹介した。
5月8日号(Vol.1676)の特集
「ブロックチェーン いま知っておくべきこと」
PinTechというワードはまだ本紙で登場していないが、FinTechの関連ワードである「ブロックチェーン」はニッチな分野での活用においても期待されている。本紙では5月8日号(Vol.1676)の特集「ブロックチェーン いま知っておくべきこと」でブロックチェーンを取り上げた。特集の軸となっているのは、経済産業省が発表した「ブロックチェーン技術を活用したシステムの評価軸ver1.0」。既存の情報システムとブロックチェーンを活用したシステムを適切に比較できる基準を見出そうというコンセプトのもと、策定したものだ。ブロックチェーンが社会に与える影響は未知数だが、まずはその技術的特性を理解する第一歩として、参考にすべき内容になっている。
人ロ知能
(じんろちのう)
人工知能(AI)ブームによって、さまざまな情報が発信されるようになったため、「人工知能」を「人口知能」と誤変換したと思われる記述が増えた。そこで、誤変換に便乗したのが「人ロ知能」である。「口(くち)」ではなく、カタカナの「ロ」。意味は、「人とロボットをつなぐ知能」とした。
2月1日号(Vol.1665)の特集
「RPAI~AIとロボットの交差点『人ロ知能』」
本紙では、2月1日号(Vol.1665)の特集「RPAI~AIとロボットの交差点『人ロ知能』」で取り上げている。特集では、AIによって注目されるようになった「RPA(Robotic Process Automation)」の動向と、将来的にはRPAにAIが組み込まれて、人ロ知能として機能するという近未来を紹介した。
ITOT
金融向けの「FinTech」を皮切りに、教育向けの「EdTech」、医療向けの「MediTech」、農業向けの「AgriTech」など、xTechが各業界向けのITソリューションの総称として使われる傾向にある。そして、よりニッチな業務に特化したテクノロジー「PinTech」(ピンポイントのテクノロジー)が登場すると紹介した。
PinTechというワードはまだ本紙で登場していないが、FinTechの関連ワードである「ブロックチェーン」はニッチな分野での活用においても期待されている。本紙では5月8日号(Vol.1676)の特集「ブロックチェーン いま知っておくべきこと」でブロックチェーンを取り上げた。特集の軸となっているのは、経済産業省が発表した「ブロックチェーン技術を活用したシステムの評価軸ver1.0」。既存の情報システムとブロックチェーンを活用したシステムを適切に比較できる基準を見出そうというコンセプトのもと、策定したものだ。ブロックチェーンが社会に与える影響は未知数だが、まずはその技術的特性を理解する第一歩として、参考にすべき内容になっている。
6月5日号(Vol.1680)の特集
「ものづくり王国 愛知の低力」
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