NTTデータ
AI/IoT、基幹クラウドの全方位に対応
NTTデータは、第四世代DCを考えるにあたり、DXを支える基盤であることを重視している。DXはデジタル技術を駆使して、より大きな売り上げや利益を生み出せるよう既存ビジネスを転換させるもの。このためには、既存ビジネスを支える基幹業務システムそのものをデジタルに対応させなければならない。
総計5600ラック相当の巨大な三鷹DCを建設するにあたり、基幹業務システムに対応可能な高規格のNTTコミュニケーションズのクラウドサービス「Enterprise Cloud」を誘致した。従来のオンプレミスの基幹業務システムから、デジタルと親和性の高いクラウド環境への移行ニーズをつかむためだ。
NTTデータの佐々木裕執行役員(右)と濱口雅史事業部長
NTTデータの佐々木執行役員ビジネスソリューション事業本部長は、「トラディショナル(基幹業務システム)とデジタルのシームレスな連携も行いやすくなる」と話す。Enterprise Cloudは世界11か国、14拠点のDCで運用しているが、NTTコム自身のDC以外で運用するのは、今回の三鷹DCが初めて。
そして、デジタルの代表格であるAI対応では、NTTデータとしては初めてラックあたり20kVAの高負荷エリアを開設。AIの演算に適しているとされるGPUサーバーの消費電力は、一般の業務アプリケーションを処理するサーバーに比べて5~10倍の電力を消費する。この大電力に対応したことで「顧客のDXに必要なAIを存分に駆動できる」(NTTデータの濱口雅史・データセンタ&クラウドサービス事業部長)と胸を張る。この上期(18年4-9月期)をめどにAIに役立つソフトウェア部品やサービスを提供する「AIスタジオ(仮)」を開設。顧客のAI構築を強力に後押ししていく。
IoTへの対応は、IoTはセンサからネットワーク経由でデータを集めるため、NTTコムのネットワーク構築技術を応用できる。NTTデータは、どの通信キャリアとの距離も同じように保つ中立的なポジションであることに変わりはない。ただ、顧客に提案しやすいよう、選択肢の一つとして限定的ではあるもののNTTコムと組むことにした。三鷹DC活用ビジネスでは、両社合わせて20年までに累計1000億円規模の売り上げを目指す。
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)
基幹クラウドで受注100社を射程内に
基幹業務システムは、客先の電算室に設置するか、堅牢なDCに預けるかのぼぼ二択だった。今は、これに「クラウド基盤へ移行させる」という選択肢がある。SIerの次世代のDCビジネスを考えたとき、ユーザー企業の基幹業務システムが、例えば他社のクラウドへ移転してしまったら、自社のDCビジネスの縮小につながりかねない。
CTCの藤岡良樹執行役員(右)、神原宏行部長代行
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)では、基幹業務システムに特化したクラウド基盤「CUVICmc2」を開発したところ、顧客の需要をうまく捉えることができた。サービス開始3年目の19年3月期にはCUVICmc2関連ビジネスの単年度黒字化。20年3月期には累損解消。累計受注社数100社を射程距離内に入れている。
Dell EMCグループのVirtustream(バーチャストリーム)のIaaS技術をベースに、デジタルと親和性が高く、基幹業務システムの運用に耐え得る信頼性あるクラウド基盤を「業界に先駆けて始めた」(CTCの藤岡執行役員クラウド・セキュリティ本部本部長)ことが効を奏した。
折しもユーザー数の多いERP(統合基幹業務システム)のSAPが、デジタルビジネスとの親和性の高い新バージョン「S/4HANA」への移行のタイミングと重なっている。直近の受注件数22件のうち、実に半分余りの12件が「SAP S/4HANA」案件が占める。S/4HANAは、デジタルにネイティブ対応した最新のERPだ。
SAPの現行バージョンのサポート期限は2025年とされており、SAPユーザーがS/4HANAへの切り替えのタイミングで、従来のオンプレミスやハウジングから、「新しいクラウド基盤の活用を検討する時期に来ている」(CTCの神原宏行・クラウドサービス企画開発部部長代行)。次世代のDCビジネスを考えたとき、CUVICmc2のような基幹対応が可能なクラウドサービスを実装できるかが重要なポイントの一つとなる。
インターネットイニシアティブ(IIJ)
電源密度に応じて建物を変える
インターネットイニシアティブ(IIJ)は、第四世代DCのあり方を独自の「コンテナ型」に見出している。11年から日本初の商用外気冷却方式のコンテナ型DCを島根県松江市で運用してきた実績を生かし、敷地面積4万平米、総受電容量5000万VAの巨大なモジュール型DCを19年春、千葉県白井市に竣工させる準備を進めている。
松江DCとの最大の違いは、1コンテナあたりの収容ラック数を9ラックから1000ラック相当へと大幅に増やす。わずか9ラック単位では、旺盛なDC需要に応えきれず、かえって手間がかかってしまう。そこで白井DCではコンテナではなく、1000ラック収容可能なモジュール型にした。ラックあたり6kVAの電源で計算すると最大6モジュール分、6000ラック相当まで拡張できる。
左からIIJの川島英明副部長、久保力部長、風間優子主任
しかし、第四世代DCに求められるAI対応となれば、「ラックあたり20kVA必要になるのか、30kVAになるのか、正確に予測できない」(IIJの久保力・データセンター技術部長)と話す。もし、平均12kVAとなったら、今の受電容量では単純計算で3000ラック相当までしか拡張できない。モジュール型にしたのは、将来の需要変化に対応しやすくするためだ。もし、ビル型のDCを建設した場合、モジュール型ほど柔軟に収容ラックを変更できないことが想定される。モジュール型の建設工数はビル型の半分。「需要に応じてすばやくつくれるのが魅力」(IIJの風間優子・データセンター技術部主任)だ。
第四世代DCは、「これまで以上に電源の制約を受けやすくなる」(IIJの川島英明・データセンター技術部副部長)とみる。20年前の初期DCはラックあたりわずか2kVAだったのが、今では20kVAも珍しくない。向こう10年で一段と高密度化が進みラックあたり200kVAにならないとも限らない。モジュール型は、従来の「建物に合った電源を用意する」のではなく、「電源密度に応じて建物を変える」発想の転換ともいえる。
白井DCでは、この電源制約の課題を解決、あるいは緩和する研究も継続する。松江DC時代から太陽光・風力発電や燃料電池の研究を行っており、白井DCで「それをさらに発展させたい」(久保技術部長)と意欲を示す。太陽光や風力などの再エネである程度の電源がまかなえれば電源コストの削減につながる可能性がある。火力発電よりも発電効率が高いとされる燃料電池を実用化できれば、電源容量そのものを増やせる可能性も出てくる。久保技術部長は、「将来構想として“エネルギーとインターネットの融合”を視野に入れる」と、早くも次の次の世代のDCに向けた研究開発に着手している。
IIJのモジュール型DCの外観イメージ
データドック
開業初年度でほぼ完売する見通し
データドックの
宇佐美浩一社長
電源を巡っては、今年1月、新潟県長岡市に開業したデータドックのDCが1ラックあたり最大30kVAに対応している。比較的新しいDCのラック電源が6kVAなのに比べて、実に5倍の電源容量となる。高密度することによる重量増に対応するため1平方メートルあたりの床耐荷重は3トンと、これも通常の2倍以上。データドックの宇佐美社長は、「仮想通貨の採掘、AIの深層学習系、HPCの引き合いが予想以上に大きい」と、高密度電源へのニーズの大きさに確かな手応えを感じている。
昨年からのプレセールスでは、SIerを経由しての引き合いと、ユーザーからの直接の問い合わせの大きく二つ。SIerの運営するDCで電源密度が高いラックを用意できず、背に腹はかえられなくなってデータドックに駆け込んでくるケース。仮想通貨系のユーザーから「○○kVAほしいんですけれど」と、必要な電源を指定してくるケースが目につく。
豪雪地帯の長岡の立地を生かして、地下に雪氷を蓄えておき、これに外気冷却方式を併用するという方式のため、機械冷房をほとんど使わない。電気代は都市型のDCに比べて4割ほど安く抑えられる。老朽化したDCからコストを抑えられる長岡DCへ移設するニーズもあるが、第一期棟は約500ラック相当と限られていることもあり、まずは高い電源密度を必要とする案件を優先している状況だ。
今の引き合いベースで進めば18年度(19年3月期)には第一期棟が売り切れとなる見込み。「早くも第二期棟の約1500ラック相当の開業に向けて準備に入らなければならない」(宇佐美社長)と、うれしい悲鳴を上げている。とはいえ、高密度電源を売りにするDCの竣工は、今後、一段と加速する見通しであり、「電源と雪氷冷却だけでは、競争力を維持しきれない可能性が高い」。集積したAIやHPC、仮想通貨系のデータをより活用しやすいようなプラットフォームを構築するなど、次世代DCに向けた研究開発も一段と力を入れていく。
次世代センターはDCだけではない
RPAで激変する業務プロセス 新BPOセンターで研究開発を推進
“第四世代”の開設は、DCだけではない。TISインテックグループでBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を担うアグレックスは、この4月に次世代BPOセンター「Biz TRUXIA(ビズトラシア)」を東京多摩地区に開設した。延べ1万2000平方メートル、地上5階の巨大なセンターだが、全国の既存のBPOセンターを今回の新BPOセンターに集約するものではないという。
次世代BPOセンター「Biz TRUXIA」の外観
狙いは、BPOサービスの研究開発の拠点とすること。BPOを巡っては業務自動化ソフトのRPAやAIの技術進展によって、自動化・効率化が急ピッチで進んでいる。もともとBPOは業務プロセスの一部を丸ごと請け負うビジネス形態。より一段と自動化・効率化が新しい技術によって可能になっている今、「業務プロセスを、再度、設計しなおす時期にきている」(アグレックスの岡山幸治・執行役員ビジネスプラクティス事業本部長)。新BPOセンターは、このための研究開発の拠点としての役割も担う。
アグレックスの岡山幸治執行役員(左)、鶴田規部長
新BPOセンターでは、「次世代のBPOサービスを開発する中核的拠点」(アグレックスの鶴田規・経営企画部長)であることを、より明確にするために、この夏をめどに「次世代BPO体験センター(仮)」を開設。ユーザー企業にAI/RPAを駆使した新しい業務プロセスを体験できる設備も整備していく。