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働き方改革時代のビジネスPC 2018年、PC市場はプラスに転じる
2018/03/28 09:00
週刊BCN 2018年03月19日vol.1719掲載
働き方改革を支援する
PCベンダーのソリューション
総合力のNECセキュリティから働き方の可視化まで
NECはモバイルワーク、在宅ワーク、サテライトワークなど、それぞれのロケーションで安心して使えるサービスを多数用意し、モバイルノートとセットで提案する。具体的には、データを守るセキュリティ、ビデオ会議などのコラボレーション、勤務状況の見える化などだ。これらのソリューションをグループ会社と共同で開発し、総合的に提案できるのがNECの強みだ。

(左から)NECの本多光太郎パートナーズプラットフォーム事業部マネージャー、佐々木紀安パートナーズプラットフォーム事業部主任、浦田章一パートナーズプラットフォーム事業部マネージャー、
NECフィールディングの境 健成ソリューション事業部マーケティング戦略部マネージャー
セキュリティ面では、遠隔操作ソリューションの「RemoteView」がある。外出先のモバイル端末からオフィスのPCにアクセスし、遠隔操作ができるリモートサービスだ。モバイル端末はネット環境があればPCだけではなくスマートフォン、タブレット端末でも利用できる。オフィスのPCに保存してあるデータにアクセスできるだけでなく、PCのリソースを使うことができるので、例えば、「タブレット端末からオフィスのPCを操作し、CADソフトを立ち上げ、負荷のかかる編集作業をすることができる」と本多光太郎・パートナーズプラットフォーム事業部マネージャーは導入事例を紹介する。
コミュニケーションツールとしては、ビデオ会議ソリューション「共創ワークソリューション Zoom」を提供。Office 365やクラウドストレージの「box」などの主要なパブリッククラウドと連携し、ファイルを画面上で共有できる。特徴は、会議の主催者がライセンスを保有していれば、顧客やパートナーなどのライセンスをもたない人もゲストとして参加できる点。そのため、ライセンス保有のコストを抑えながら、不特定多数の相手と会議が行える。
働き方改革ソリューションのなかで競合が多いのが働き方の可視化サービスだ。NECが提供する「働き方見える化サービス」について浦田章一・パートナーズプラットフォーム事業部マネージャーは、「テレワークの勤務を証明するサービス」と説明する。テレワークの導入がなかなか進まない理由の一つに、上司がテレワーク勤務者の状況を把握できないという課題があるが、これを解消する。
テレワーク勤務者のキーボードやマウスの操作、アプリケーション利用状況のログを取得し、クラウド上に保存する。本人と管理者も確認できるので、勤務状況報告として活用できる。
可視化できるログは、PC操作ログ、アプリ操作ログだけではなく、使用ファイルのログも取ることができる。例えばWordアプリの使用時間だけでなく、一つの書類の作成にどのぐらい時間がかかったか把握することができる。浦田マネージャーは、「業務の棚卸のためには働き方をブレイクダウンする必要がある。客観的に定量的にログを取ることができる」と説明する。
NECが提供するこれらのサービスはSaaSとして提供している。浦田マネージャーは、「試験的に一部のチームで導入したり、もしくは途中でやめたりと手軽さがある。この手軽さが導入を後押ししている」と話す。
強固な守りの富士通
ハードウェアとソフトウェアの両方で
情報漏えい対策として、ノートPCの社外持ち出しを全面的に禁止している企業は少なくない。働き方改革のため、テレワーク制度を導入する際、解決しなければならない課題がセキュリティだ。
通常、PCは第三者による不正アクセスを防止するため、ログインパスワードなどを設定している。さらにセキュリティを強固にするため、指紋認証などの生体認証を備えていることが多く、富士通の「LIFEBOOK U938/S」も標準で指紋認証を、オプションで静脈認証を選ぶことができる。
さらに重要な機密情報や個人情報を守るため、富士通はハードウェア側の対策として、暗号化機能付フラッシュメモリディスク(SSD)を用意した。OSやプログラムを含む全データの書き込み時にSSDで自動的に暗号化し、読み出し時は自動的に復号されるので、暗号化を意識せずにセキュリティを確保できる。ディスクを直接解析されてもデータの読み出しが困難なため、不正な使用を防止できる。
富士通
丸子正道
ユビキタスビジネス事業本部
プロモーション統括部
シニアマネージャー
AttachecaseはPCで作成したデータや保存したデータを自動的に意味のないデータに変換し、分散してPCと社内サーバーに保存する。このサーバー側のデータがカギのような役割を果たし、PC側のデータとサーバー側のデータの二つが揃って初めてデータの閲覧、編集ができる。サーバーにアクセスできない外出時は通常はサーバーに置くデータをスマートフォンやUSBメモリに保存し、PCに接続させることで分散していたデータが復元する。これにより、PCを紛失してもカギのような役割を果たすデータがなければデータを閲覧することはできない。「暗号キー、パスワードを使わないので、定期更新が必要ない。また分散、復号は自動的に行われるので、ユーザーの利便性を損なうこともない」と丸子シニアマネージャーは説明する。
「お客様によってはデータをデバイスではなく、クラウドに置くケースもある。端末の不正使用を防ぎ、データを守るため、データをどこに置くかお客様自身が選択できるようあらゆるソリューションを用意しておく。お客様の使い方に応じて提案できることが富士通の強み」と丸子シニアマネージャーは力説する。
パナソニックは生産性に着目
PC作業の可視化で気づきを与える
タフなモバイルPCの代名詞ともいえるパナソニックの「レッツノート」シリーズ。2017年度は好調のまま終わりそうだ。1月の記者会見でパナソニック コネクティッドソリューションズの坂元寛明・常務モバイルソリューションズ事業部業部長は、「16年度の出荷台数が約32万台だったが、17年度は40万台を超える見通し。レッツノート誕生21年目にして最高の記録になりそうだ」と好調ぶりをアピールした。
そのレッツノート事業で、働き方改革の取り組みを強化する。これまでは、モビリティ、高速化といった要素でデバイスを磨き上げ、セキュリティ面ではBIOSレベルのデータ消去、遠隔データ消去などに取り組んできたが、今年から新たに可視化ソリューションを加え、より顧客の働き方改革を支援する。
パナソニック
コネクティッドソリューションズ
西谷裕之
モバイルソリューションズ事業部
東アジア営業統括部
営業企画部
部長
同サービスは、社員の労働時間を可視化し、生産性を高めることを目的とし、PCの使用時間、アプリの使用時間、キーボードやマウスを操作した時間などを記録する。西谷裕之・モバイルソリューションズ事業部東アジア営業統括部営業企画部部長は、「働き方を改革するためには主観的ではなく、客観的に可視化し、ふだんの労働を意識して変えていく必要がある」と説明。こうして可視化した働き方をもとに部署の上司と本人で、改善策を探ってほしいという。
可視化ソリューションを提供するベンダーは増えている。しかし今回、自社開発にこだわった理由について西谷部長は、「ハードウェアを制御するBIOSから自社で手がけている。今回のサービスは、キーボードやマウスなどのハードウェアの操作ログを拾い上げているが、これはデバイスの制御技術をベースにしたもの。デバイスのことを知り抜いている当社の強みを生かした」と説明した。今後も、「デバイスに付随するサービスは自社で開発していくことも検討している」という。
現場に参入する東芝
差異化を図り新規市場を開拓する
東芝も富士通と同じく、HDD/SSDの暗号化ツールでセキュリティソリューションに取り組んでいる。
オフィスの働き方改革に加え、今年の新たな柱として打ち立てたのが「現場」の働き方改革だ。物流倉庫や保守現場、工場生産ラインなどの生産性を高めるために開発したのが、小型エッジコンピューティングデバイス「dynaEdge DE100」と、インテリジェントビューア「AR100」を組み合わせたソリューションだ。
dynaEdgeはポケットに入る手のひらサイズのデバイスで重さは約310gと軽い。エッジデバイスにはAndroid OSが採用されていることが多いが、dynaEdgeは既存のソリューションと連携できるようにWindows 10 Proを採用。また、Windows 10 IoT Enterprise(2016 LTSB)も選択できる。一方、AR100は高画質カメラ、ディスプレイ、スピーカーなどを搭載したARスマートグラス。dynaEdgeとAR100を組み合わせることで、ハンズフリーで資料や画像・映像の閲覧ができる。
例えば、倉庫ソリューションと連携することで、物流倉庫で目的の商品が置かれている棚までARで誘導。対象物を探す時間を削減し、作業効率を高めることができる。
また、ネットワーク機能を生かし、現場作業を遠隔から支援することも可能だ。同社の遠隔支援アプリケーション「Vision DE Suite」を使い、現場作業者が見ている風景をAR100に搭載されたカメラで遠隔地にいる支援者に送信する。支援者は映像を見ながら的確に指示をすることができる。
東芝
クライアントソリューション
小杉稔
執行役員
国内マーケティング本部長
遠隔支援アプリケーションは自社で開発したが、今後はパートナーとの連携を強めていく計画で、小杉執行役員は、「リリースした直後から多くのお引き合いをいただいている。いろんなお客様やパートナー様がいろいろいろ用途を検討してくれている。こうした話を進めながらdynaEdge、AR100を使った新しいソリューションを開発していく」と意気込む。
各社、PCのDevice as a Service化に前向き
デバイスをクラウドのようにサブスクリプションモデルでサービスとして提供するDevice as a Serviceが注目を集めている。すでに日本HP/ヒューレット・パッカード、DellEMCがサーバーやストレージ、PCなどのサービス化を進めている。今回取材をしたベンダーもPCのDevice as a Serviceに非常に前向きだった。すでにNECは販売店とともに、一部の顧客に対し、標準構成を定めたPCのサービス提供を行っているという。富士通は以前、モバイルデバイスのサービス提供を行った実績があり、顧客ニーズが高まれば対応していくという。
パナソニックの西谷部長は、「お客様のニーズは、IT管理者の負担を軽減すること。PCやサービスなど問い合わせ先が異なると、煩雑になるので、ワンストップで提供してほしい、という声もある。PCとソリューションのセット化は今後検討していきたい」と話した。
デバイスも、クラウドと同じようにサービス化することで、初期費用を抑えることができ、導入のハードルをぐっと下げることになるのではないだろうか。
ソリューション連携がカギ
働き方改革の一環として、テレワークを推進し、モバイルPCを導入する企業が増えている。PCベンダー各社は、デバイスをさらに磨き上げるとともに、生産性向上のためにPCと働き方改革ソリューションの連携を強化している。政府が推進する働き方改革を支援する国産PCベンダーの取り組みとソリューションを紹介し、働き方改革実現へのヒントを探る。
働き方改革の一環として、テレワークを推進し、モバイルPCを導入する企業が増えている。PCベンダー各社は、デバイスをさらに磨き上げるとともに、生産性向上のためにPCと働き方改革ソリューションの連携を強化している。政府が推進する働き方改革を支援する国産PCベンダーの取り組みとソリューションを紹介し、働き方改革実現へのヒントを探る。
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