マイクロソフト
周辺ツールも含めた総合的なデータプラットフォームを提供
周辺ツールの充実が強み
日本マイクロソフト
クラウド&エンタープライズ
ビジネス本部
データプラットフォーム製品
マーケティング部
シニアプロダクトマネージャー
横井羽衣子氏
マイクロソフトもクラウドにビジネスの軸足を移している。DB戦略に関しても、「オンプレミスのSQL Serverよりも、Azure SQL Databaseが起点になる」と、日本マイクロソフトのクラウド&エンタープライズビジネス本部データプラットフォーム製品マーケティング部シニアプロダクトマネージャーの横井羽衣子氏は話す。
DB管理者の手間を省力化することについては、マイクロソフトもオラクルと同じ方向性だ。DB製品にはすでに自動チューニング機能などを搭載しており、自動化のために機械学習技術も採用しているという。「技術的には他社より先行しているところがたくさんある」と横井氏は自信をみせる。
また、「DBについては、クラウドへいかに簡単にデータをもっていくかだけでなく、その際のガバナンスの確保も重要だ」と話す。それを支援するものの一つが「Azure Data Factory」。ETL(データ抽出・変換・ロード)機能を提供するもので、「CSVファイルなどにしてデータをクラウドに上げるのではなく、コーディングなしのドラッグ&ドロップの操作でデータソースとすぐに連携できる」という。
また、データガバナンスでは「Azure Active Directory」に対応している。これにより、DBのために認証の仕組みを別途構築することなく、既存のActive Directoryをそのまま活用できる。
「DB単体でみれば、基本機能は他社製DBとの間にそれほど大きな差がなくなっている。そのようななかで、マイクロソフトの強みはActive DirectoryのID統合やDBにデータを入れやすくする仕組みなど、周辺ツールが充実していることだ」と横井氏は説明する。
DB内部を賢くするだけでなく、DBの周辺で発生する手間を軽減する。「これにより、“一人情シス”のような組織でもDBを使いこなし、データ活用ができるようになる」と横井氏は強調する。
マイクロソフトでは、各種DBとその周辺ツールを総称して「データプラットフォーム」と呼んでいる。これにはSQL Serverはもちろん、非構造化、半構造化データを扱える「Azure Cosmos DB」も含まれる。ほかにもデータウェアハウス、データレイクを構築するサービス、オープンソースのMySQLやPostgreSQLもAzure上に揃っている。
「以前は“打倒オラクル”といった戦略も確かにあった。しかし今ではコンテナ技術にいち早く対応するなど、顧客のためにデータプラットフォームの選択肢を広げることに注力している。そうすることで、誰でもAzure上でデータを簡単に扱えるようになる」と横井氏は語る。
DBのエンジンにAIを搭載
Azure SQL Database、Microsoft SQL Serverそのもの進化のポイントはどこにあるのか。一つは、DBのエンジンにAI、機械学習機能を取り込んでいることだ。
「日本ではまだまだ、DBにデータを入れ帳票などを出力するところ止まり。グローバルでは、R言語を用いたアドバンスドアナリティクスや機械学習、ディープラーニングにも取り組んでいる。このギャップを埋める機能が、SQL Serverに搭載されている」と横井氏。
これらの機能を活用することで、すぐに高度なデータ活用ができる。またSQL Serverをデバイス側に設置すれば、使い慣れたSQL Serverを用いてAIを活用した自動処理をエッジコンピューティングで実現できる。
もう一つのポイントは、「Power BI」の存在だ。世界中で広く使用されているビジネスアプリケーションの「Excel」と組み合わせて、データ活用をより身近にできるのだ。マイクロソフトでは、「データ活用のために一つのDBに無理して統合するようなことはしない。それぞれのDBをソースにして、ユーザーがPower BIでデータを自由に扱えるようにする」(横井氏)。これはデータ活用の裾野を広げ、データサイエンスの民主化にもつながる。
「技術視点ではなく、ユーザーのため、人のためを考えている。そのため、AIのような技術もExcelのように皆が日常的に使いこなせるようにしていく。これが本当に実現できれば、ユーザーからはDBの存在は意識されなくなるだろう」と横井氏は展望する。
現状は、データ活用の際に必要なデータソースが何で、どうやってデータを取ってくるかを人が考慮しなければならない。しかし将来的にはExcelのようなツールをインターフェースにして、高度なデータ分析が誰でも簡単に行えるようになる。その時データは手元のExcelファイルにあるのではなく、オンプレミスかクラウドかを気にせずにさまざまなデータソースから自動で収集されるということだ。
この環境が実現される時代には、確かにどのDBを選ぶのか、そのDBの運用管理をどうするかなどをユーザーが意識する必要はない。「将来的には、むしろDBの存在はユーザーから見えなくなったほうがいいのかもしれない」と横井氏は話す。
IBM
ユーザーの現状を理解したマルチクラウド、マルチDB戦略
HTAPに注力
日本IBM
アナリティクス事業部
データ・マネジメント
テクニカルセールスアーキテクト
野間愛一郎氏
IBMが今注力しているのは、AIとクラウドだ。AIついては、データが極めて重要だと捉えている。そのため、データを扱う製品に改めて力を入れており「以前と比べてもDB製品のスピードアップ、バージョンアップ、リビジョンアップがかなり速いペースで進んでいる」と日本IBMのアナリティクス事業部データ・マネジメント テクニカルセールスアーキテクトの野間愛一郎氏。つまり、IBMのなかで「Db2」の占めるウェートがかなり大きくなっているのだ。
Db2では、「オートノミック・コンピューティング」という言葉をバージョン8の頃から用いており、ハードウェアとミドルウェアのところに自律型機能を取り込んできた。これはデータ量が増えれば、それを適切に扱うのに人手では限界があると考えたから。そこで当時から自己監視、自己管理できるようにしてきたのだ。現状のDb2バージョン11に至るまでの間に、自律型機能は熟成され実績も積んだ。このためDb2にとって「すでにあたりまえの機能で、自律型機能に改めてフォーカスはしていない」と野間氏。
一方で、今IBMがDb2で取り組んでいるのが「HTAP(Hybrid Transaction/Analytical Processing)」の実現だ。これはOLTP(オンライントランザクション処理)もデータウェアハウスの処理も、一つのDBエンジンで処理できるようにすることを指す。他社DB製品がトランザクション処理用の行指向テーブルと、分析処理用の列指向テーブルを混在させるハイブリッド型で実現しようとしているのに対し、IBMでは「BLUアクセラレーション」のインメモリ列指向テーブルで更新処理を速くすることでHTAPを実現しようとしている。
また、IBMではPowerプロセッサを開発していることもあり、ハードウェアの進化をソフトウェアに反映させることにも力を入れている。「とがった技術のPowerプロセッサで、Db2が最大限の能力を発揮できるようにしていく」と野間氏は説明する。
マルチDB戦略で優位性を出す
日本IBM
アナリティクス事業部
ソリューション営業部
Db2 Strategy Leader
四元菜つみ氏
IBMのもう一つの戦略が、マルチDBだ。企業は、適材適所で複数のDBを利用し、クラウド環境もIaaS、PaaS、SaaSと複数サービスを使う。その結果、クラウド利用でシンプル化するはずが、かなり複雑化してしまう。「この課題をデータ活用面から解決するのが、『IBM Common SQL Engine』だ」と、アナリティクス事業部ソリューション営業部Db2 Strategy Leaderの四元菜つみ氏は話す。データへのアクセスインターフェースをシンプル化し、アプリケーション開発者が使い慣れたSQLのレベルで統一化したデータ処理を可能にするという。
「今後、データはオンプレミスとクラウドを行き来するようになり、複数のデータソースを利用する。その際にCommon SQL Engineがなければ、AI技術を素早くビジネスで活用したいといったユーザーニーズに応えられない」と四元氏。
企業がDb2に全てのデータをためてくれれば、Watsonでそれを活用する環境はすぐに整う。しかしDB市場でDb2は、ライバル製品を追いかける立場。「そういった現実を見据え、全てをDb2に置き換える戦略ではなく、これまでもフェデレーション、連携、レプリケーションに力を入れてきた」と野間氏。その戦略の延長線上に生まれたのがCommon SQL Engineだ。データの量も種類も増えるなか、インターフェースを共通化し、簡単に複数データソースのデータを扱える機能は必須だと指摘する。
ところでCommon SQL Engineは、Db2が複数のデータソースのハブ機能を提供するだけのものではない。Common SQL Engineでは、接続するデータソースの能力を引き出すのだ。つまり、単にDb2のSQLを各データソースのDB用に翻訳して投げるだけではなく、各データソースへのアクセスを最適化する工夫がなされる。それがあるからこそ「DB連携戦略」ではなく「マルチDB戦略」となるのだ。
実はIBMは、クラウドでも「マルチクラウド戦略」をうたう。他のクラウドベンダーはハイブリッドクラウドに言及しても、積極的にマルチクラウドを押し出すことはない。顧客が全面的に自社サービスを採用することを優先し、SaaSなどサービス提供していないものは仕方なく連携できるようにするのが基本スタンスだ。
当然ながら、IBMとしてはIBM Cloudの採用を望んでいる。しかし、現実として他のクラウドサービスを活用しているならば、それを無理矢理載せ替えるのではなく、上手くフェデレーションするアプローチを取る。その上でWatsonなどのIBMの優位性が出しやすいところで、最大限のメリットを発揮できるようマルチクラウドで動かすのだ。
この考え方は、そのままマルチDB戦略となる。個別の製品を要望する時代ではなく、「企業は例えば、Watsonを使いビジネスの課題を解決したいというニーズがある。その時にIBMでは、ユーザーが実際にどのようにデータを扱えるようにすればいいかを考えることだ。そのために必要なものは、IBMに全て揃っている」と四元氏はいう。