Special Feature
アシストに聞く ソフトウェア市場のトレンド
2018/12/31 11:00
週刊BCN 2018年12月24日vol.1757掲載
46年前の設立以来、パッケージソフトおよびそれらの技術サポートを2万社以上の企業に提供してきたアシスト。同社が今提案にフォーカスしている商材を見れば、ソフトウェア市場のトレンドがわかる。2018年のアシストが販売に力を注ぎ、来年も需要が期待できる注目の4テーマについて動向を尋ねた。
しかし、厳格なID管理の難度は年々高まっている。最大の理由は、企業が保有するIT資産の肥大化・複雑化だ。ビジネスニーズに応じていくらでもインスタンスを増やせる仮想環境やクラウドの活用が進んだことで、特権IDの数は膨大な数になっている。また、働き方改革で自宅や外出先からの業務が一般的になると、企業の統制下にない外部ネットワークや、私用端末からのアクセスも一定範囲で受け入れざるを得ない。人手による特権ID管理は現実的ではなくなりつつある。
そこでアシストは、CAテクノロジーズが開発したアクセス管理ツール「Privileged Access Manager(PAM)」を活用した、特権ID管理ソリューションをこの夏から提供開始している。
PAMは、どのユーザーがどのシステムに対してアクセス権限を持っているかを、一元的に管理する。ユーザーが保護対象のシステムを利用する場合、まずPAMにログインすると、アクセス権限のあるシステムが一覧表示される。利用するシステムを選択すると、PAMがワンタイムパスワードを利用してログインが実行される。パスワードは自動的に変更されるので、仮に通信経路途中でパスワードを盗まれても、それを利用した不正アクセスはできないという仕組みだ。上長の承認が得られた場合のみ対象システムへのアクセスを許可したり、曜日や時間帯によって権限を変更したりすることも可能となっている。
また、PAMを経由してシステムにログインすると、同時に画面ログ機能が動作を開始し、システム上でユーザーが行った操作が動画として記録される。特権IDを利用して、だれが、いつ、何を実施したかをすべて録画するので、内部不正防止にも有効だ。
東日本技術本部 システム基盤技術統括部 技術3部の大野秀男課長は、「PAMを導入することで、ユーザーが複数のパスワードを覚える必要がなくなるので、利便性の向上や運用負荷の低減といった効果も期待できる」と説明。一般に、セキュリティーを厳しくするとユーザーは不便を強いられることが多いが、PAMはセキュリティーと利便性を同時に向上できる優れたソリューションであることを強調した。(日高 彰)
染谷尚秀氏
東日本技術本部 情報基盤技術統括部 技術2部の染谷尚秀氏は「近年、さまざまなクラウドサービスの利用が増えているほか、社外からデータを購入して活用する場面が出てきている。データの量と種類は増加しており、特に種類に関しては非常に多様化している」と述べ、一方で課題について「こういったデータを活用するとき、加工に手間を要することが多いが、その段階に時間がかかると、迅速なデータ活用サイクルを回すことはできない」と指摘する。
データ結合の操作画面。ITに詳しくない部門でも親しみやすいよう、
エクセルライクなUIを採用している
Paxataは、Excelに似たユーザーインタフェースを採用し、ビジネス部門のユーザーもなじみやすい操作性を実現しているほか、機械学習を用いたアルゴリズムにより、提示された項目を選ぶだけで、表記揺れの統一や、異なる複数のソースから生成されたデータの結合などが可能。大量のデータを扱う際も、操作に対するレスポンスが高速なため、リアルタイムに加工結果を確認しながらデータの整理作業を進められる。
染谷氏は「近年では多くのBIツールもデータ・プレパレーション機能を強化しているが、操作性の良さと大量データへの対応では、Paxataに専用ツールならではの強みがある。また、部門ごとに異なるツールでデータを加工すると将来の再利用が難しくなるが、Paxataは社内共通のデータ共有ツールとしても活用できる」と説明する。
加えてアシストは、機械学習自動化プラットフォームを手がけるDataRobot Japanとパートナーシップを結び、Paxataを利用した教師データ作成ソリューションを11月から提供開始した。今後、機械学習やAIを活用したシステムの需要が高まるにつれ、Paxataの販売にも一層の弾みがつくことが期待される。(銭 君毅)
矢野英也主任(左)と岡村卓也主任
同社は、ITの運用管理業務をワークフローとして定義し、システム運用部門の負担を軽減できる運用自動化ツール「Operations Orchestration(OO)」(マイクロフォーカス製。旧HP製品)の取り扱いで約20年の実績があるが、これと、同じく以前から扱うGUIテストツールの「Unified Functional Testing(UFT)」を組み合わせることで、業務の自動化を実現する。UFTは、アプリケーションの動作を画面キャプチャし、リプレイすることで機能テストを効率化するものだが、これを応用することで、GUIにおける定型業務の自動化が可能になる。
OOとUFTの組み合わせでは、一般的なRPAソフトでは難しいとされる、クライアント/サーバー型アプリケーションや、エミュレーターソフトの操作の自動化が可能になる。東日本技術本部 システム基盤技術統括部 技術1部の矢野英也主任は、「OO+UFTはオブジェクト認識で業務を自動化しているため、環境の変化に非常に強い。REST APIにも対応しているため、システム間連携の幅も広い」と自信を見せる。
業務自動化の市場について、同部の岡村卓也主任は「いったん熱が一段落し、立ち止まる時期に入っている。RPAを使ってみて、想定通りに動かなかったユーザーも現れているが、対応力の高いプロダクトでニーズを拾っていきたい」と意気込む。提供価格は300万~500万の間を見込む。現在、ERPシステムの運用業務やメールシステムとの連携といったユースケースが増えているという。
今後はRPAとの差別化をさらに進め、RPAでは業務に対応できなかったユーザーに対して提案を進めていく狙いだ。(銭 君毅)
坂田真也課長(左)と伊東昇太郎氏
アシストでは、JP1に蓄積されたジョブ稼働ログやイベント履歴を取り込み、システムの状況を可視化するサービス「千里眼SaaS」を提供している。千里眼SaaSを用いることで、生データのままでは活用しにくいJP1のログを、わかりやすい分析レポート形式で確認できるようになる。東日本技術本部 システム基盤技術統括部 技術2部の坂田真也課長は「夜間バッチ処理の遅延といったトラブルでは、障害が実際に起きてから、運用担当者が原因究明や開発部門への連絡・調整に追われるといった場面がしばしば発生している」と述べ、日頃のシステム運用の状況を開発・運用の両部門が共有し、トラブルの兆候を事前にキャッチする体制が必要になっていると指摘する。
また、デジタルトランスフォーメーションの機運によって、日本企業でも経営層のITへの意識が高まっており、システムのパフォーマンスが業績に影響を与えるという認識も広がっている。千里眼SaaSのような可視化ツールを導入することで、IT部門が経営層からシステム状況に関する報告を求められた場合も、即座に分析レポートを提供できるようになるほか、顧客や事業部門からの要求にIT担当者がどれだけ対応できているかといった、貢献度を客観的に示す指標を用意できる。坂田課長は「運用に苦労しているIT部門が業務を進めるにあたり、ITサービスの可視化ソリューションは強力な武器になる」とアピールする。
特に大企業では、システムを構成する要素が複雑化するにつれて、運用業務をいかに改善するかが切実な課題となっているといい、同部の伊東昇太郎氏は「ここ1~2年で(可視化ソリューションに)熱烈な期待をいただくようになった」と話す。伊東氏は「ビジネスのデジタル変革に取り組むためにも、まずはシステムに関する情報を一元的に把握する仕組みが求められる」と述べ、将来のIT投資をスムーズに行うための基盤としても、可視化ソリューションの提案を強化する考えを示した。(日高 彰)
特権IDのセキュリティーと利便性を両立
企業が実施すべきセキュリティー対策の中でも、特に重要とされるのが「特権ID」の管理だ。「Administrator」や「root」といった特権IDのアカウントが攻撃者の手に渡った場合、情報システムの広範囲に無制限のアクセスを許すことになり、機密情報の漏えいやシステムの破壊といった致命的な被害につながる可能性が高い。また、システム管理の都合上、特権IDを複数のユーザーで共有しているケースも少なくない。このような環境では、社内ユーザーによる不正行為が発生しても、それがだれの手によって行われたのかを突き止めるのが難しくなる。しかし、厳格なID管理の難度は年々高まっている。最大の理由は、企業が保有するIT資産の肥大化・複雑化だ。ビジネスニーズに応じていくらでもインスタンスを増やせる仮想環境やクラウドの活用が進んだことで、特権IDの数は膨大な数になっている。また、働き方改革で自宅や外出先からの業務が一般的になると、企業の統制下にない外部ネットワークや、私用端末からのアクセスも一定範囲で受け入れざるを得ない。人手による特権ID管理は現実的ではなくなりつつある。
そこでアシストは、CAテクノロジーズが開発したアクセス管理ツール「Privileged Access Manager(PAM)」を活用した、特権ID管理ソリューションをこの夏から提供開始している。
PAMは、どのユーザーがどのシステムに対してアクセス権限を持っているかを、一元的に管理する。ユーザーが保護対象のシステムを利用する場合、まずPAMにログインすると、アクセス権限のあるシステムが一覧表示される。利用するシステムを選択すると、PAMがワンタイムパスワードを利用してログインが実行される。パスワードは自動的に変更されるので、仮に通信経路途中でパスワードを盗まれても、それを利用した不正アクセスはできないという仕組みだ。上長の承認が得られた場合のみ対象システムへのアクセスを許可したり、曜日や時間帯によって権限を変更したりすることも可能となっている。
また、PAMを経由してシステムにログインすると、同時に画面ログ機能が動作を開始し、システム上でユーザーが行った操作が動画として記録される。特権IDを利用して、だれが、いつ、何を実施したかをすべて録画するので、内部不正防止にも有効だ。
東日本技術本部 システム基盤技術統括部 技術3部の大野秀男課長は、「PAMを導入することで、ユーザーが複数のパスワードを覚える必要がなくなるので、利便性の向上や運用負荷の低減といった効果も期待できる」と説明。一般に、セキュリティーを厳しくするとユーザーは不便を強いられることが多いが、PAMはセキュリティーと利便性を同時に向上できる優れたソリューションであることを強調した。(日高 彰)
分析・機械学習に備える「データ準備」のソリューション
データの活用が叫ばれるようになって久しいが、大量のデータを社内に保有しながらも、それらがビジネスの現場で活用できる形式になっていない企業は多い。この場合、ビジネス部門からの要求に応じてIT部門がその都度データの加工・整理を行うといった手間やコストが発生する。この問題に対し、収集したデータの加工を効率化する「データ・プレパレーション(データの準備)」ツールが提案されている。アシストが取り扱う「Paxata(パクサタ)」は、このデータ・プレパレーションをSaaS形態で提供するものだ。
東日本技術本部 情報基盤技術統括部 技術2部の染谷尚秀氏は「近年、さまざまなクラウドサービスの利用が増えているほか、社外からデータを購入して活用する場面が出てきている。データの量と種類は増加しており、特に種類に関しては非常に多様化している」と述べ、一方で課題について「こういったデータを活用するとき、加工に手間を要することが多いが、その段階に時間がかかると、迅速なデータ活用サイクルを回すことはできない」と指摘する。
エクセルライクなUIを採用している
Paxataは、Excelに似たユーザーインタフェースを採用し、ビジネス部門のユーザーもなじみやすい操作性を実現しているほか、機械学習を用いたアルゴリズムにより、提示された項目を選ぶだけで、表記揺れの統一や、異なる複数のソースから生成されたデータの結合などが可能。大量のデータを扱う際も、操作に対するレスポンスが高速なため、リアルタイムに加工結果を確認しながらデータの整理作業を進められる。
染谷氏は「近年では多くのBIツールもデータ・プレパレーション機能を強化しているが、操作性の良さと大量データへの対応では、Paxataに専用ツールならではの強みがある。また、部門ごとに異なるツールでデータを加工すると将来の再利用が難しくなるが、Paxataは社内共通のデータ共有ツールとしても活用できる」と説明する。
加えてアシストは、機械学習自動化プラットフォームを手がけるDataRobot Japanとパートナーシップを結び、Paxataを利用した教師データ作成ソリューションを11月から提供開始した。今後、機械学習やAIを活用したシステムの需要が高まるにつれ、Paxataの販売にも一層の弾みがつくことが期待される。(銭 君毅)
運用自動化+テストツールの連携でRPA以上の対応力を実現
人材不足が業界を問わず深刻な課題となっており、これに対して近年RPA(ロボティクスプロセスオートメーション)による業務の自動化が盛んに提案されているが、アシストでは、RPAとは異なるアプローチで業務自動化ソリューションを構築している。
同社は、ITの運用管理業務をワークフローとして定義し、システム運用部門の負担を軽減できる運用自動化ツール「Operations Orchestration(OO)」(マイクロフォーカス製。旧HP製品)の取り扱いで約20年の実績があるが、これと、同じく以前から扱うGUIテストツールの「Unified Functional Testing(UFT)」を組み合わせることで、業務の自動化を実現する。UFTは、アプリケーションの動作を画面キャプチャし、リプレイすることで機能テストを効率化するものだが、これを応用することで、GUIにおける定型業務の自動化が可能になる。
OOとUFTの組み合わせでは、一般的なRPAソフトでは難しいとされる、クライアント/サーバー型アプリケーションや、エミュレーターソフトの操作の自動化が可能になる。東日本技術本部 システム基盤技術統括部 技術1部の矢野英也主任は、「OO+UFTはオブジェクト認識で業務を自動化しているため、環境の変化に非常に強い。REST APIにも対応しているため、システム間連携の幅も広い」と自信を見せる。
業務自動化の市場について、同部の岡村卓也主任は「いったん熱が一段落し、立ち止まる時期に入っている。RPAを使ってみて、想定通りに動かなかったユーザーも現れているが、対応力の高いプロダクトでニーズを拾っていきたい」と意気込む。提供価格は300万~500万の間を見込む。現在、ERPシステムの運用業務やメールシステムとの連携といったユースケースが増えているという。
今後はRPAとの差別化をさらに進め、RPAでは業務に対応できなかったユーザーに対して提案を進めていく狙いだ。(銭 君毅)
IT部門と経営層の対話を可視化で加速する
日本市場で最もメジャーな運用管理ツールのひとつが日立製作所の「JP1」だが、アシストは同製品の販売代理店としてトップの販売実績を誇っている。従来は、複雑な運用業務を確実かつ効率よく行うためのツールとして販売を行っていたが、最近では単にジョブの実行だけでなく、運用業務の進捗やアプリケーション性能の可視化・分析にフォーカスした提案を強化している。
アシストでは、JP1に蓄積されたジョブ稼働ログやイベント履歴を取り込み、システムの状況を可視化するサービス「千里眼SaaS」を提供している。千里眼SaaSを用いることで、生データのままでは活用しにくいJP1のログを、わかりやすい分析レポート形式で確認できるようになる。東日本技術本部 システム基盤技術統括部 技術2部の坂田真也課長は「夜間バッチ処理の遅延といったトラブルでは、障害が実際に起きてから、運用担当者が原因究明や開発部門への連絡・調整に追われるといった場面がしばしば発生している」と述べ、日頃のシステム運用の状況を開発・運用の両部門が共有し、トラブルの兆候を事前にキャッチする体制が必要になっていると指摘する。
また、デジタルトランスフォーメーションの機運によって、日本企業でも経営層のITへの意識が高まっており、システムのパフォーマンスが業績に影響を与えるという認識も広がっている。千里眼SaaSのような可視化ツールを導入することで、IT部門が経営層からシステム状況に関する報告を求められた場合も、即座に分析レポートを提供できるようになるほか、顧客や事業部門からの要求にIT担当者がどれだけ対応できているかといった、貢献度を客観的に示す指標を用意できる。坂田課長は「運用に苦労しているIT部門が業務を進めるにあたり、ITサービスの可視化ソリューションは強力な武器になる」とアピールする。
特に大企業では、システムを構成する要素が複雑化するにつれて、運用業務をいかに改善するかが切実な課題となっているといい、同部の伊東昇太郎氏は「ここ1~2年で(可視化ソリューションに)熱烈な期待をいただくようになった」と話す。伊東氏は「ビジネスのデジタル変革に取り組むためにも、まずはシステムに関する情報を一元的に把握する仕組みが求められる」と述べ、将来のIT投資をスムーズに行うための基盤としても、可視化ソリューションの提案を強化する考えを示した。(日高 彰)
46年前の設立以来、パッケージソフトおよびそれらの技術サポートを2万社以上の企業に提供してきたアシスト。同社が今提案にフォーカスしている商材を見れば、ソフトウェア市場のトレンドがわかる。2018年のアシストが販売に力を注ぎ、来年も需要が期待できる注目の4テーマについて動向を尋ねた。
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