新型コロナ禍で大きな打撃を受けた産業の一つが外食産業だ。消費者を特定の場所に集め、食事を提供するビジネスモデルを、何の対策もなしに続けることは難しくなった。ニュースタンダードのライフスタイルに対応するためには、その提供価値の設計を根本から見直さざるを得ないケースも少なくないだろう。こうした取り組みは、もはやテクノロジー抜きには語れない。IT活用を前提にビジネスモデルのみならず企業風土・文化までを変革する、デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が増している。
(取材・文/本多和幸)

「丸亀製麺」を擁するトリドールHD
DXシナリオと現在地

 丸亀製麺などの外食チェーン店を中心に事業展開するトリドールグループ。2025年度(26年3月期)に、世界6000店舗、連結売上高3500億円、非連結を含む全店舗では合計売上高5000億円を達成するという目標を掲げている。近年、これを実現するための変革、まさにDXの取り組みを本格化させている。

序章
「世界の外食トップブランド」を目指す旅

構造改革により
1年で成長基調に戻す


 トリドールグループの歴史は、創業者であり現在は持ち株会社であるトリドールホールディングスの社長兼CEOを務める粟田貴也氏が、1985年に兵庫県加古川市に出店した焼き鳥居酒屋から始まる。セルフサービス型のうどん店として丸亀製麺を立ち上げたのは2000年。11年には全都道府県への出店を達成し、店舗数は500店舗を超えた。20年3月末現在、845店舗まで拡大し、この丸亀製麺を含めた全ブランド合計では国内1153店舗、海外でも628店舗を展開している。

 「手づくり・できたて」の料理を提供すべく、セントラルキッチンを排し、オープンキッチン方式でエンターテイメント性も追求したスタイルを前面に押し出し、事業拡大を年々加速させている。19年度(20年3月期)だけでも、国内外で199店舗を新たに出店した(畳んだ店舗もあるため純増は103)。現在、外食産業は新型コロナ禍で強烈な向かい風に晒されているが、21年度の第1四半期は、海外こそ純減19店舗となったものの、国内は出店が閉店を上回り、リカバーへの布石を着々と打っている。

 同社グループは経営ビジョンの中で「世界の外食トップブランドを目指す」としており、定量的な目標としては、25年度中に「世界6000店舗、連結売上高3500億円、非連結の同社ブランド売上高を含む全店舗の合計売上高5000億円の達成」を掲げている。19年度通期の実績は、グローバルで1781店舗、連結売上高は1564億円であり、かなり意欲的な数字と言えよう。

 今年度スタートした最新の中期3カ年計画を見ると、今年度は新型コロナウイルスの影響によりいったん減収減益になる見込みだが、来年度にV字回復を果たし、22年度には純利益100億円を目指している。さらにこの中計期間を、前述の25年度までの定量的な目標を達成するための構造改革のための期間とも位置づける。トリドールホールディングスの磯村康典・執行役員CIO(IT本部本部長)は、「今期は事業基盤の見直しと強化を行い、2年目で成長に向けた基盤を構築し、3年目の23年3月期からは成長拡大フェーズに戻す」と話す。

中食ニーズの取り込みに
活路


 構造改革には三つの柱がある。一つは事業ポートフォリオの最適化だ。「これまではPL(損益計算書)を重視してきたが、今後は投資収益性と成長性の2軸で事業や店舗運営の判断をしていく」(磯村CIO)としている。財務の健全性とバランスを取りながら、成長可能性が高い事業への積極的な投資により、持続的な成長を図る。