Special Feature
2021年度戦略からひも解く勝機と課題 日本マイクロソフト クラウドナンバーワンプレーヤーへの道
2021/02/12 09:00
週刊BCN 2021年02月08日vol.1861掲載
オンライン会議で競合が急成長
Teamsのユーザーを伸ばせるか
その一方で、日本マイクロソフトのクラウド展開にとっては、大きな課題がある。それらを21年度にどこまで解決できるかが、同社の成長の角度を左右することになるだろう。
一つはMicrosoft Teamsの普及戦略だ。リモートワークが広がる中で、オンライン会議ツールが注目を集めている。その中でも高い成長を遂げているのが「Zoom」で、米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの日本法人ZVC Japanによると、国内におけるZoomのシェアは、19年には10%のシェアだったものが、20年には35%にまで上昇。2位は18%で、大きく引き離していることがうかがえる。
Teamsも20年10月時点での1日あたりの利用者数が、全世界で1億1500万人に到達。19年12月には2000万人であったことに比べると急増している。だが、国内においても首位のZoomとの差が開き始めているのも事実だ。
Zoomがパートナーとの連携によるベスト・オブ・ブリードの戦略を取っているのに対して、Teamsは自らが持つ基本機能の強化と、その範囲の広さを差別化ポイントにしている。
吉田社長は、「Teamsは、他のオンライン会議ツールとは異なることをもっと訴求していく必要がある。他社ツールに比べて、2歩も3歩も先の使い方ができる」と前置きした上で、「Teamsはオンライン会議を行うだけのツールではなく、コラボレーションプラットフォームとして、資料を共有したり、共有している資料のバージョン管理を行ったり、AIを活用して勤務状況や健康状況を管理したりできるほか、Power BIと連動した活用もできる」とする。そして、「Teamsの最大の強みはセキュリティ。競合製品の中には、セキュリティの問題から利用を禁止している米国の都市や企業がある。社外とつながるときにセキュリティに気をつかわず、新たに投資することなく利用できることは大きなメリット。一番の悩みごとがなくなる」と語る。Teamsが持つ多くの機能が理解され、それが普及戦略に直結するかが鍵になるといえる。
デジタルガバメントで
挽回を図れるか
もう一つが、デジタルガバメントの領域だ。ここではAmazon Web Services (AWS)が先行しているのは周知の通り。それを裏づけるように、20年10月には総務省による第二期政府共通プラットフォームがAWS上で運用を開始したことが発表されている。
吉田社長は、「先手を打たれたという認識はあるが、第二期政府共通プラットフォームは一部であり、政府・自治体におけるDXに関する案件はむしろこれからが本番となる。政府もマルチクラウドへの取り組みを前提としており、そこにもチャンスがある」とし、「仮にオセロゲームに例えるならば、まだ最初の一手を打った局面。AWSが先行したが、四隅の一つを取られたわけではない」とする。
実際、厚生労働省では、マイクロソフトのクラウドをフル活用した「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」を構築するといった成果も出ている。
吉田社長が強気な姿勢を崩さないのは、日本マイクロソフトが、IaaSだけではなく、クラウド全体に渡って強力な製品を揃えていること、人材教育を含めた支援体制を敷いていること、海外における知見やノウハウを持ち、それを生かすことができるといった強みがあるからだ。さらに、全国のパートナーとの連携によって、地方自治体との強いパイプを持つだけでなく、地域の企業との連携が重視される自治体システムでは優位な位置に立ちやすいという思惑もあるからだろう。
「政府・自治体のデジタル化だけにフォーカスするのではなく、それをきっかけにして、中小企業のデジタル化や、さまざまな産業のDXを、政府、自治体ととともに一緒に取り組んでいくことも重要な要素になる。そこに30年以上にわたって築いた公共機関との信頼関係、全国の中小企業をはじめとした多くの企業とのつながり、パートナーの強固な関係を生かすことができる」と自信を見せる。
なお、日本マイクロソフトでは政府情報システムにおけるセキュリティ評価制度(ISMAP)への登録を、21年5月までに行う計画を明らかにしている。総務省では21年3月までに、第1弾となるクラウドサービス事業者の登録リストを作成、公表する予定であり、それを踏まえると同社の動きはやや遅いようにも見えるが、同社では、Microsoft 365、Azure、Dynamics 365といったマイクロソフトの全てのクラウド製品でISMAPに対応することを優先。その結果、5月までという期間設定をしたという。日本マイクロソフトは、このタイミングで、デジタルガバメント市場におけるギアをシフトすることになりそうだ。
顧客に寄り添う姿勢を鮮明に
クラウドを核にDXへ貢献
日本マイクロソフトは、「クラウドナンバーワンプレーヤー」を目指すことを宣言している。その実現に向け、「お客様に寄り添うマイクロソフト」と「マイクロソフト=デジタルトランスフォーメーション」の二つに取り組んでいるという。
吉田社長は、「お客様の成功を支援するために必要なのは、正面に座って、向かい合って話をする姿勢ではなく、肩と肩を並べて、寄り添って、一緒に歩むこと。顧客と同じ目線で、よりよく理解し、よりよくサポートし、トランスフォーメーションを支援する姿勢を、日本マイクロソフトの企業文化として根づかせたい」とする。
また、「マイクロソフトは、本当のDXに取り組んできた経験がある。その知見を基に、迫力を持ってお客様にDXの話をすることができる。DXに関する相談をするならば日本マイクロソフトだというイメージをもっと作りたい。顧客やパートナーがDXについて考えるときに、最初にマイクロソフトを想起してもらいたい。DXといえばマイクロソフト、マイクロソフトといえばDXと思ってもらいたい。マイクロソフトと一緒にやったからDXを成功できたといってもらえる企業を目指す」と意気込む。
マイクロソフトは、従来のライセンス販売モデルから、クラウドによるサブスクリプションモデルへと、ビジネスモデルを大きく変化させてきた。それまでの売るという行為ではなく、買ってもらい、使ってもらうという行為に変わった。そのためには、顧客の課題解決に貢献することがより強く求められ、商品の機能を理解するよりも、顧客を理解し、貢献することが最優先されるようになった。このDXのために、ミッションを作り直し、顧客との接し方も変え、人事評価や営業戦略、マーケティング戦略も変えた。
すでに一部調査では、クラウドでナンバーワンの座を得ているという。今後は、あらゆる調査で、クラウドナンバーワンプレーヤーを目指す。
吉田社長は、「マイクロソフトは、IaaSからPaaS、SaaSまでをカバーし、世界63リージョンにデータセンターを展開しており、それはAWSやGoogleをあわせた数よりも多い。高速で、超大規模な分析能力や包括的なビルディングブロックを持つ唯一のクラウドソリューションベンダーである」とし、「まず目指すのは、『心に残るのがマイクロソフトである』ということ。DXによって、日本が変わり、日本が強くなり、そこに日本マイクロソフトが貢献してくれた、と言われたい。日本では、クラウド化していない企業が約7割ある。これからが本番になる」とする。
日本全体のDXを推進するのが日本マイクロソフトの目標であり、その中核となるテクノロジーがクラウドだ。日本のDXに貢献できれば、おのずとクラウドナンバーワンのポジションは達成できるだろう。21年は日本マイクロソフトにとって、クラウドナンバーワンプレーヤーに向けた地盤固めの1年となりそうだ。教育分野でChromebookが台頭
日本マイクロソフトにとってはもう一つ、大きな課題がある。教育分野におけるChromebookの台頭だ。
もともと国内の教育市場では約8割という高いシェアを持っていたWindows搭載PCだが、児童生徒1人1台のパソコン環境の整備を進める政府のGIGAスクール構想では、Chromebookを採用する自治体が増加。関係者の声をまとめると、約5割をChromebookが占めているという。1台あたりの補助金の上限が4万5000円であることから、低価格で調達できるChromebookに関心が集まっているほか、起動時間の速さや、常に最新のセキュリティ環境を実現できる点に評価が集まっているのが理由だ。
こうした声に対して吉田社長は、「Windows搭載PCの管理性は大幅に改善しており、アップデートのタイミングは制御できるようになっている。また、起動時間も短くなっている。これまでの悪いイメージが払しょくしきれていない点は、改善の余地がある」としながら、「教育現場で大切なのは、どのデバイスが安いとか、性能が高いとかではなく、あるべき教育の姿を定義し、それに向けて、最適なデバイスが選べているかという点。新たな指導法を実現できたり、データを基に教育の進むべき道を示したり、児童生徒が意欲を持って学べる環境を作れるかといったことが大切になる。マイクロソフトには、全世界の教育分野において、数多くの導入実績があり、この知見を共有することができる。米シカゴでは、Windowsデバイスを導入して、生徒の学習意欲を高め、トップグループに入る進学率になった事例もある」とする。そして、「同じ4万5000円以内ということであれば、子供たちには、Officeのフル機能が使えるWindowsの環境で学んでほしい」とも語る。
21年3月までに、全国の小中学校の導入はほぼ完了するが、21年4月以降は、高校などでの導入が本格化する。この領域は、Windowsが得意とする市場であり、Office製品の強みも生かしやすい。高校への1人1台のパソコン導入において、巻き返しが図れるかが注目点といえる。NEWS
日本マイクロソフトは2月2日、クラウドネイティブの開発と開発の内製化を支援することを目的に、新しい支援プログラム「Cloud Native Dojo」の提供を開始したと発表した。顧客の開発にパートナーとマイクロソフトが並走する点が特徴だ。
坂田州・Azureビジネス本部クラウドネイティブ&デベロッパーマーケティング部部長は、Cloud Native Dojoについて、顧客の内製開発チームが、マイクロソフトや同社のパートナーと協働スクラムチームを作り、並走しながら開発できる点が特徴だと紹介し、「短期的に人材育成やプロセスの整備を進められることが魅力だ」と述べた。
このほか、パートナーとの超短期実装ハッカソンを通じて開発のノウハウなどが学べる「Azure Light-up」も支援プログラムとして提供していると説明し、「特定の技術課題を解決するという目的としては非常に効果的なプログラムになっている」と語った。
上原正太郎 本部長
同社の上原正太郎・業務執行役員Azureビジネス本部本部長は、クラウドネイティブの開発と開発の内製化を支援する狙いについて「顧客の声として課題化しているIT人材・スキル不足、委託先任せによるナレッジ蓄積の欠如、DevOpsの非実践、クラウド活用におけるルールやガバナンスという危機感に対する答えの一つが内製化支援だ」と話した。
Teamsのユーザーを伸ばせるか
その一方で、日本マイクロソフトのクラウド展開にとっては、大きな課題がある。それらを21年度にどこまで解決できるかが、同社の成長の角度を左右することになるだろう。
一つはMicrosoft Teamsの普及戦略だ。リモートワークが広がる中で、オンライン会議ツールが注目を集めている。その中でも高い成長を遂げているのが「Zoom」で、米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの日本法人ZVC Japanによると、国内におけるZoomのシェアは、19年には10%のシェアだったものが、20年には35%にまで上昇。2位は18%で、大きく引き離していることがうかがえる。
Teamsも20年10月時点での1日あたりの利用者数が、全世界で1億1500万人に到達。19年12月には2000万人であったことに比べると急増している。だが、国内においても首位のZoomとの差が開き始めているのも事実だ。
Zoomがパートナーとの連携によるベスト・オブ・ブリードの戦略を取っているのに対して、Teamsは自らが持つ基本機能の強化と、その範囲の広さを差別化ポイントにしている。
吉田社長は、「Teamsは、他のオンライン会議ツールとは異なることをもっと訴求していく必要がある。他社ツールに比べて、2歩も3歩も先の使い方ができる」と前置きした上で、「Teamsはオンライン会議を行うだけのツールではなく、コラボレーションプラットフォームとして、資料を共有したり、共有している資料のバージョン管理を行ったり、AIを活用して勤務状況や健康状況を管理したりできるほか、Power BIと連動した活用もできる」とする。そして、「Teamsの最大の強みはセキュリティ。競合製品の中には、セキュリティの問題から利用を禁止している米国の都市や企業がある。社外とつながるときにセキュリティに気をつかわず、新たに投資することなく利用できることは大きなメリット。一番の悩みごとがなくなる」と語る。Teamsが持つ多くの機能が理解され、それが普及戦略に直結するかが鍵になるといえる。
デジタルガバメントで
挽回を図れるか
もう一つが、デジタルガバメントの領域だ。ここではAmazon Web Services (AWS)が先行しているのは周知の通り。それを裏づけるように、20年10月には総務省による第二期政府共通プラットフォームがAWS上で運用を開始したことが発表されている。
吉田社長は、「先手を打たれたという認識はあるが、第二期政府共通プラットフォームは一部であり、政府・自治体におけるDXに関する案件はむしろこれからが本番となる。政府もマルチクラウドへの取り組みを前提としており、そこにもチャンスがある」とし、「仮にオセロゲームに例えるならば、まだ最初の一手を打った局面。AWSが先行したが、四隅の一つを取られたわけではない」とする。
実際、厚生労働省では、マイクロソフトのクラウドをフル活用した「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」を構築するといった成果も出ている。
吉田社長が強気な姿勢を崩さないのは、日本マイクロソフトが、IaaSだけではなく、クラウド全体に渡って強力な製品を揃えていること、人材教育を含めた支援体制を敷いていること、海外における知見やノウハウを持ち、それを生かすことができるといった強みがあるからだ。さらに、全国のパートナーとの連携によって、地方自治体との強いパイプを持つだけでなく、地域の企業との連携が重視される自治体システムでは優位な位置に立ちやすいという思惑もあるからだろう。
「政府・自治体のデジタル化だけにフォーカスするのではなく、それをきっかけにして、中小企業のデジタル化や、さまざまな産業のDXを、政府、自治体ととともに一緒に取り組んでいくことも重要な要素になる。そこに30年以上にわたって築いた公共機関との信頼関係、全国の中小企業をはじめとした多くの企業とのつながり、パートナーの強固な関係を生かすことができる」と自信を見せる。
なお、日本マイクロソフトでは政府情報システムにおけるセキュリティ評価制度(ISMAP)への登録を、21年5月までに行う計画を明らかにしている。総務省では21年3月までに、第1弾となるクラウドサービス事業者の登録リストを作成、公表する予定であり、それを踏まえると同社の動きはやや遅いようにも見えるが、同社では、Microsoft 365、Azure、Dynamics 365といったマイクロソフトの全てのクラウド製品でISMAPに対応することを優先。その結果、5月までという期間設定をしたという。日本マイクロソフトは、このタイミングで、デジタルガバメント市場におけるギアをシフトすることになりそうだ。
顧客に寄り添う姿勢を鮮明に
クラウドを核にDXへ貢献
日本マイクロソフトは、「クラウドナンバーワンプレーヤー」を目指すことを宣言している。その実現に向け、「お客様に寄り添うマイクロソフト」と「マイクロソフト=デジタルトランスフォーメーション」の二つに取り組んでいるという。
吉田社長は、「お客様の成功を支援するために必要なのは、正面に座って、向かい合って話をする姿勢ではなく、肩と肩を並べて、寄り添って、一緒に歩むこと。顧客と同じ目線で、よりよく理解し、よりよくサポートし、トランスフォーメーションを支援する姿勢を、日本マイクロソフトの企業文化として根づかせたい」とする。
また、「マイクロソフトは、本当のDXに取り組んできた経験がある。その知見を基に、迫力を持ってお客様にDXの話をすることができる。DXに関する相談をするならば日本マイクロソフトだというイメージをもっと作りたい。顧客やパートナーがDXについて考えるときに、最初にマイクロソフトを想起してもらいたい。DXといえばマイクロソフト、マイクロソフトといえばDXと思ってもらいたい。マイクロソフトと一緒にやったからDXを成功できたといってもらえる企業を目指す」と意気込む。
マイクロソフトは、従来のライセンス販売モデルから、クラウドによるサブスクリプションモデルへと、ビジネスモデルを大きく変化させてきた。それまでの売るという行為ではなく、買ってもらい、使ってもらうという行為に変わった。そのためには、顧客の課題解決に貢献することがより強く求められ、商品の機能を理解するよりも、顧客を理解し、貢献することが最優先されるようになった。このDXのために、ミッションを作り直し、顧客との接し方も変え、人事評価や営業戦略、マーケティング戦略も変えた。
すでに一部調査では、クラウドでナンバーワンの座を得ているという。今後は、あらゆる調査で、クラウドナンバーワンプレーヤーを目指す。
吉田社長は、「マイクロソフトは、IaaSからPaaS、SaaSまでをカバーし、世界63リージョンにデータセンターを展開しており、それはAWSやGoogleをあわせた数よりも多い。高速で、超大規模な分析能力や包括的なビルディングブロックを持つ唯一のクラウドソリューションベンダーである」とし、「まず目指すのは、『心に残るのがマイクロソフトである』ということ。DXによって、日本が変わり、日本が強くなり、そこに日本マイクロソフトが貢献してくれた、と言われたい。日本では、クラウド化していない企業が約7割ある。これからが本番になる」とする。
日本全体のDXを推進するのが日本マイクロソフトの目標であり、その中核となるテクノロジーがクラウドだ。日本のDXに貢献できれば、おのずとクラウドナンバーワンのポジションは達成できるだろう。21年は日本マイクロソフトにとって、クラウドナンバーワンプレーヤーに向けた地盤固めの1年となりそうだ。
教育分野でChromebookが台頭
Windows搭載PCは巻き返せるか
日本マイクロソフトにとってはもう一つ、大きな課題がある。教育分野におけるChromebookの台頭だ。もともと国内の教育市場では約8割という高いシェアを持っていたWindows搭載PCだが、児童生徒1人1台のパソコン環境の整備を進める政府のGIGAスクール構想では、Chromebookを採用する自治体が増加。関係者の声をまとめると、約5割をChromebookが占めているという。1台あたりの補助金の上限が4万5000円であることから、低価格で調達できるChromebookに関心が集まっているほか、起動時間の速さや、常に最新のセキュリティ環境を実現できる点に評価が集まっているのが理由だ。
こうした声に対して吉田社長は、「Windows搭載PCの管理性は大幅に改善しており、アップデートのタイミングは制御できるようになっている。また、起動時間も短くなっている。これまでの悪いイメージが払しょくしきれていない点は、改善の余地がある」としながら、「教育現場で大切なのは、どのデバイスが安いとか、性能が高いとかではなく、あるべき教育の姿を定義し、それに向けて、最適なデバイスが選べているかという点。新たな指導法を実現できたり、データを基に教育の進むべき道を示したり、児童生徒が意欲を持って学べる環境を作れるかといったことが大切になる。マイクロソフトには、全世界の教育分野において、数多くの導入実績があり、この知見を共有することができる。米シカゴでは、Windowsデバイスを導入して、生徒の学習意欲を高め、トップグループに入る進学率になった事例もある」とする。そして、「同じ4万5000円以内ということであれば、子供たちには、Officeのフル機能が使えるWindowsの環境で学んでほしい」とも語る。
21年3月までに、全国の小中学校の導入はほぼ完了するが、21年4月以降は、高校などでの導入が本格化する。この領域は、Windowsが得意とする市場であり、Office製品の強みも生かしやすい。高校への1人1台のパソコン導入において、巻き返しが図れるかが注目点といえる。
NEWS
クライドネイティブ開発を支援 協働スクラムチームで並走
日本マイクロソフトは2月2日、クラウドネイティブの開発と開発の内製化を支援することを目的に、新しい支援プログラム「Cloud Native Dojo」の提供を開始したと発表した。顧客の開発にパートナーとマイクロソフトが並走する点が特徴だ。坂田州・Azureビジネス本部クラウドネイティブ&デベロッパーマーケティング部部長は、Cloud Native Dojoについて、顧客の内製開発チームが、マイクロソフトや同社のパートナーと協働スクラムチームを作り、並走しながら開発できる点が特徴だと紹介し、「短期的に人材育成やプロセスの整備を進められることが魅力だ」と述べた。
このほか、パートナーとの超短期実装ハッカソンを通じて開発のノウハウなどが学べる「Azure Light-up」も支援プログラムとして提供していると説明し、「特定の技術課題を解決するという目的としては非常に効果的なプログラムになっている」と語った。
同社の上原正太郎・業務執行役員Azureビジネス本部本部長は、クラウドネイティブの開発と開発の内製化を支援する狙いについて「顧客の声として課題化しているIT人材・スキル不足、委託先任せによるナレッジ蓄積の欠如、DevOpsの非実践、クラウド活用におけるルールやガバナンスという危機感に対する答えの一つが内製化支援だ」と話した。

日本マイクロソフトが、クラウドナンバーワンプレーヤーの実現に向けた歩みを着実に進めている。新型コロナウイルスの感染拡大による社会環境の変化に伴い、働き方改革やデジタルトランスフォーメション(DX)に取り組む企業が増加。政府や自治体においてもその動きが加速している。働き方改革やDXを支える主要テクノロジーの一つがクラウドであり、そこに日本マイクロソフトは多くの投資を進めている一方で、コロナ禍によって同社の抱える課題も浮き彫りに。2021年、日本マイクロソフトの次の一手はどうなるのか、同社のビジネス戦略から探る。
(取材・文/大河原克行 編集/前田幸慧)
日本マイクロソフトの業績は、順調に拡大している。米国本社の決算発表では日本の業績が発表されることはないが、2020年11月に官報に掲載された決算公告によると、20年6月期(19年7月~20年6月)の売上高は7429億円、営業利益は392億円、経常利益は372億円、当期純利益は261億円となった。前期実績と比べると、売上高は23%増、営業利益は46%増という高い成長を実現している。
成長のけん引役は、Microsoft Azureを中心としたクラウドビジネスだが、20年1月のWindows 7のサポート終了や、19年10月の消費増税前のPCの買い替え需要なども売上増に貢献。いわゆるオンプレミスの領域が想定以上に伸びたのが、大きな成長につながっている。
好調ぶりは、20年7月から始まった21年度(2020年7月~2021年6月)も続いているようだ。オンプレミス関連ではWindows 7関連のPC特需が終わったものの、教育分野における「GIGAスクール構想」や、コロナ禍による在宅勤務の広がりなどを受けてPCへの需要が高まったことで、引き続き堅調に推移。その一方で、コロナ禍における働き方改革の推進の動きやDXの取り組みが、企業だけでなく政府や自治体にも広がり、クラウドやAIの活用が加速していることも業績にはプラスとなっている。
コロナ支援を最優先に
業種別に対応を深掘り
日本マイクロソフトは、21年度の経営方針として「市場・顧客のデジタルトランスフォーメーション」と「政府・自治体のデジタルトランスフォーメーション」の2点に力を注ぐ姿勢を示しているが、ここで注目しておきたい点が二つある
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料) ログイン会員特典
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。 - 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…
